Project/Area Number |
20J12116
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 09010:Education-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
若林 陽子 東京大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2021)
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Budget Amount *help |
¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2021: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
Fiscal Year 2020: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
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Keywords | 読書科学 / 絵本 / 心理学史 / 日本読書学会 / メディア研究 / 漫画 / 児童雑誌 / 読書 / 歴史 / メディア |
Outline of Research at the Start |
本研究は、戦後日本において絵本および絵本を読み聞かせる実践の価値が、絵本に関わる理論と実践双方においてどのように見出され、理論と実践がどのような関係を結びながら絵本をめぐる価値を構築してきたかを明らかにする。絵本に関する歴史研究はこれまで主に絵本の表象や出版の歴史に焦点を当ててきたが、その際に人々が絵本や絵本を用いた実践に与えてきた価値の成り立ちを問うてこなかった。それに対し本研究では、絵本をめぐる価値を児童文学・保育・読書指導・心理学など複数の言説により構築されたものととらえることで、社会における絵本というメディアと人間の関係の動的な形成過程を明らかにし、新たな絵本の戦後史像を描出する。
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Outline of Annual Research Achievements |
研究助成期間の最後に当たる2022年度上半期は、2021年度下半期から調査を開始していた、日本の1970年代の心理学を中心とした科学的探究における絵本の評価の様相について、引き続き検討した。具体的には、言語心理学者・阪本一郎(1904-1987)が晩年の1970年代に展開した、量的な手法を導入した物語絵本の評価研究についての史料を調査し、2022年度上半期にはその成果を論文にまとめた。この論文は、以下の事柄を明らかにした。阪本の絵本をめぐる探究は、芸術的な観点からの絵本評論の隆盛が先行研究でこれまで指摘されてきた1970年代に行われたものでありながら、芸術というよりもむしろ、漫画などの大衆的なメディアの現状を阪本が1950年代から把握してきたのと同様に、絵本の現実をとらえていた。これは、話根分析という絵本と漫画両方に適用された量的な研究法や、漫画や児童雑誌と同様に絵本についても行われた子どものメディア利用の実態調査や雑誌の評定調査の存在から、明らかになった。ただし、阪本は、使い捨ての低劣なものという意味において大衆的なメディアとしての絵本をとらえたのではなく、日本で新しく豊かに広がりつつある幼児のための物語の文化として絵本を意味づけてもいた。このように阪本が行った研究に着目することで、絵本を、現実の子どもを取り巻いて生成を続ける多様で膨大な商業的メディアの一部としてとらえる枠組みが、歴史研究によって示唆された。 阪本を中心としたこのような読書の科学の領域以外にも今後は、乳幼児の言語や感情に関する発達心理学の動向などをあわせて検討する必要がある。これにより、1960年代に園や家庭での実践が広がり始めた、一冊でひとつの展開が完結する形式の絵本に対して、1970年代からを中心に科学的な関心が注がれ始めるようになった様相が、俯瞰できるようになると予想される。
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Research Progress Status |
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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