Project/Area Number |
20K00026
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 01010:Philosophy and ethics-related
|
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
清塚 邦彦 山形大学, 人文社会科学部, 教授 (40292396)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥3,250,000 (Direct Cost: ¥2,500,000、Indirect Cost: ¥750,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
|
Keywords | 分析美学 / 描写 / イリュージョン / 類似性 / 記号システム / ごっこ遊び / 絵画 / 画像 / 表象 / 哲学 / 絵 / 美学 / 記号論 / 分析哲学 |
Outline of Research at the Start |
分析美学の分野では、美術史家ゴンブリッチによる『芸術と幻影』(1960年)の出版以後、画像表象の本性をめぐって理論的な検討が進められてきた(描写depictionの理論)。本研究は、これら一連の先行研究に関する理論的な総括を目指すものだが、その際、新規性として堅持したいのは、一種の宥和主義的な見地である。上記の一連の立場は、分析美学における従来の論議では、互いに相容れない見解として対立的に捉えられるのが通例である。本研究ではしかし、それらを、似姿を作り出すとはどういうことかという問いに対するそれぞれ異なる観点からの理論的貢献として可能な限り肯定的に受け止めたいと考えている。
|
Outline of Annual Research Achievements |
美術史家・芸術理論家のE・H・ゴンブリッチは、視覚イメージを論じた論文の冒頭で、「現代は視覚の時代だ」と述べ、各種の画像が大量かつ安価に流通する点に現代の文化環境の重要な特色を求めている。こうした時代認識は広く共有されてきたが、そこで問題とされている画像(picture)とはいかなる存在なのかについて、哲学的な基礎理論のレベルにまで掘り下げた研究は決して多くはない。本研究では、それを具体化するための枠組みとして、英語圏の分析美学における先行研究(それらは「画像表象」あるいは「描写」の理論として括られる)に注目しつつ、画像とは何かに関する理論的見通しの明確化を図る。 描写に関する素朴な理解を支配して来たのは類似性の概念である。絵とは何ものかの似姿を提示する物体のことであり、類似の度合が高ければ高いほど、その絵は良い絵だというふうに。とはいえ、こうした素朴な理解は、分析美学の伝統の中ではむしろ批判の的となることが多かった。その際に準拠されてきたのは、次のような論点である。 第一は、絵が何かの描写であるという事態の本性を理解するためには、その絵のもとに当の「何か」の姿を見るという知覚経験の本性を明らかにする必要がある、という論点。第二は、ゴンブリッチが力説して大きな余波を呼んだ論点であり、絵のもとに様々な事物の姿を見るという経験には、そこに不在のものを見る一種の幻影の経験が織り込まれているという論点。第三に、絵が何かの描写であるという事態は、個別の画像の問題にとどまらず、それを含む記号体系の理解と連動しており、社会的な慣習に支えられている、という論点。 こうした一連の論点は対立的に捉えられがちだが、本研究ではむしろ、宥和主義的な見地を堅持したいであり、それらを、似姿を作り出すとはどういうことかという問いに対する多様な観点からの貢献として肯定的に受け止め、全体状況の総括を目指す。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
R5年度の研究においては、本研究のこれまで成果全体を集成した著書『絵画の哲学』の執筆と取り組み、年度内の出版に漕ぎつけることができた。 同書では、分析哲学における美学研究の中で展開されてきた一連の代表的な絵画的描写理論について取り上げ、その基本的な内実の確認と検討を通じて、現状と今後に向けての見通しについて確認を行った。 取り上げた理論は、類似説、ゴンブリッチの幻影説、グッドマンの記号説、ウォルハイムの「中に見ること」の理論、シアーの認知説、ウォルトンのごっこ遊び説である。拙著では、これら一連の理論が織りなす問題状況についての見通しとして、ゴンブリッチ、ウォルハイム、シアー、ウォルトンの理論をいずれも大枠では類似説が直面した行き詰まりを打開する試みとして位置付け、またそれら相互の関係について分析した。また、それと並行して、グッドマンの類似説批判や記号説の展開の持つ意味についても、基本事項の確認を行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は期間再延長後の本研究の最終年度に当たる。本研究の主だった成果についてはすでにR5年度に執筆・刊行した拙著『絵画の哲学』に盛り込まれているが、同書の論述は、成果の集成であると同時に、多くの残された検討課題を明らかにするものともなっている。本年度の研究においては、それらの残された課題の中から特に今後に向けて重要と思われる下記三点について問題整理を行うことを計画している。 (1)絵は記号であるか――記号論的な絵画論の意義と限界について。 (2)絵の内容とは何か――言葉の意味内容の場合との類比がどこまで成り立ち、どこで破綻するかについて。 (3)絵以外の媒体を用いた「描写」をも含めた一般的な「描写」論をどのような形で構想すべきかについて。
|