ポルノグラフィにおける性的モノ化の哲学的考察――現象学的倫理学からのアプローチ
Project/Area Number |
20K00040
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 01010:Philosophy and ethics-related
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Research Institution | Konan University (2023) University of Kochi (2020-2022) |
Principal Investigator |
吉川 孝 甲南大学, 文学部, 教授 (20453219)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2021: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2020: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
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Keywords | ポルノグラフィ / 倫理学 / 性的モノ化 / 映画 / 現象学 / 身体 / 感情 / アーカイブ / 表現 / 実存 / 芸術 / わいせつ / 性差別 |
Outline of Research at the Start |
ポルノグラフィの表現を規制する一つの根拠とされる「性的モノ化(性的客体化)」は多義的に用いられ、議論の混乱や不必要な対立を招いている。性的にモノ化されるとはどのようなことか、それはどのような意味において悪いのか(場合によっては許されるのか)が明確にされるべきである。本研究は、①「ポルノグラフィにおける「性的モノ化」の意味を明確化し、②鑑賞者の認識・欲望・趣味の機能などの経験やその変化を明らかにし、③悪しき鑑賞と望ましい鑑賞との様式を示唆する。概念を分析する哲学研究のなかで、経験に目を向ける現象学的アプローチを展開し、最終的にはポルノの鑑賞をめぐる規範を示すことになる。
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Outline of Annual Research Achievements |
研究期間を延長して実施した本年度の研究は、これまでの研究をまとめるかたちで、著作『ブルーフィルムの哲学 「見てはいけない映画」を見る』(NHK出版)を公刊した。そこでは、1980年代にアダルトビデオが普及する以前の日本におけるハードコアポルノである「ブルーフィルム」を題材にして、性的モノ化などの倫理をめぐる問題を扱うことになった。『風立ちぬ』や『柚子娘』などの作品について、鑑賞者の証言や作品の内容を分析することで、女性を中心とする登場人物がどのようなモノ化されているのかが検討された。 マッキノンやドウォーキンなどのラディカルフェミニズムの議論やそれに影響を受けたポルノの哲学の議論における「性的モノ化」の論点は、検討を導く「見方(ヴィジョン」)としては有効であり、そのような観点から性表現を分析する意義は明らかである。しかし、「ポルノグラフィはモノ化しているゆえに悪い」などの一般的な主張を展開することは困難であり、ヌスバウムが性表現におけるモノ化は文脈において「素晴らしい」ものでもありうることを示したように、個々の表現や鑑賞の状況を考慮しなければならない。むしろ表現の内容におけるモノ化の有無や是非よりも、制作現場での人権侵害の論点の方が重要であることが明らかにもなった(この論点もまた個々の状況を精査することが求められ、一般的に制作現場の善悪を論じることは難しい)。 最終的に課題として浮かび上がったのが、ポルノグラフィやその制作の状況を記録した資料が残されにくいことである。あらかじめジャンルの全体を違法なものや犯罪と結びつきやすいものなどと見なすことは、作品や制作状況を検討するための資料(出演者の証言などを含む)を残すことを困難にしてしまう。そうしたことから、ポルノグラフィや関連資料のアーカイブをめぐる課題があることも明らかになり、新たな研究プロジェクトの実施につながった。
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Report
(4 results)
Research Products
(15 results)
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[Book] あらわれを哲学する2023
Author(s)
荒畑 靖宏、吉川 孝ほか
Total Pages
304
Publisher
晃洋書房
ISBN
9784771037076
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