エラノス会議における聖概念と心理学的治癒の連結に関する宗教学的研究
Project/Area Number |
20K00074
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 01030:Religious studies-related
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Research Institution | Hokkaido University of Science |
Principal Investigator |
奥山 史亮 北海道科学大学, 全学共通教育部, 准教授 (10632218)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江川 純一 明治学院大学, 国際学部, 研究員 (40636693)
藁科 智恵 日本大学, 国際関係学部, 助教 (60868016)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2023: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | 聖なるもの / 宗教現象学 / ナショナリズム / 分析心理学 / 宗教史学 / ファシズム / 精神分析 / 近代ユダヤ思想 / エラノス会議 / 精神療法 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、エラノス会議において、各言語圏の宗教学者が聖性の治癒的効果に関して交わした議論内容をたどることにより、聖概念の普及拡大を目指した「宗教運動」が本会議において生じるに至った歴史的過程を解明することを目指す。すなわち、本会議が人間精神と聖性の関係をどのように捉えていたのか、本会議の参加者が宗教学的研究と「宗教運動」をどのように区別し、あるいは同一視したのか、「宗教運動」を展開することで大学をはじめとする制度的学知と異なる知の潮流をどのように形成しようとしたのかいう学術的「問い」が本研究課題の核心をなしている。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度において得られた研究成果は、以下のとおりである。 エラノス会議と宗教学の交差:エラノス会議にはオットーやハイラー、レーウ、ペッタッツォーニ、エリアーデ等、「宗教現象学者」「宗教史学者」として知られる研究者たちがかかわってきたが、彼らがエラノス会議に参加するに至った歴史的コンテクスト、ユング派心理学と宗教現象学および宗教史学の協働可能性に関する彼らの見解などは未整理となっていた。本年度は、エリアーデ、オットー、ペッタッツォーニらがつくりあげようとしていた学問の特質を整理しながら、それらとエラノス会議の共通性および相違点を明らかにすることを試みた。エリアーデは、大戦間期のルーマニアにおいて、ナショナリズムを主導していたコルネリュー・ゼーリャ・コドリャーヌやナエ・イオネスク、イタリアのファシズムを主導したユリウス・エヴォラらと協働し、「民族の伝統」となりうる宗教を歴史的過去および深層心理に見出すための研究を実施する学問を形成しようとした。戦後、フランスに亡命したエリアーデは、戦中のナショナリズムを強く帯びた宗教論をトランス・ナショナルなものに転換する必要性に迫られると同時に、ルーマニア人亡命者組織のイデオローグとしてルーマニア共産党と対峙するためにはナショナリズム的言論を完全に手放すこともできないというジレンマに陥った。一方、エラノス会議の中心人物であったユングも、ナチズム下の群集心理の意識化を説いた言論がナチズムを支持したものと批判され、自身の戦前の学問をトランス・ナショナルなものに組み替える必要性に迫られていた。エリアーデとユングは、戦後世界に適応するため、上記の課題に取り組む場所としてエラノスを必要とした可能性が想定される。 上記に加え、オットーが構築しようとした「宗教史」、19世紀英国とイタリアの宗教研究が如何にエラノスと交差したのか、分析を継続している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの成果は本研究の目的に対し、以下の理由から当初の計画を大きく変更することなく実施出来ているものと判断する。 エラノス会議と宗教学の交差に関して、関係資料はすでに収集済みのものが多くあり、その読解と分析に力点を置いて研究を実施することができた。とりわけ重要な資料となるエリアーデとペッタッツォーニの往復書簡については翻訳をすすめており、その分析結果を踏まえた成果を発表できる状況にある。オットーの宗教史に関する資料も概ね整理分析を予定通り進められており、次年度にその分析結果を踏まえた成果を発表できる状況にある。 上記のとおり研究結果の進捗として「遅滞」には該当せず、「順調な進展」と判断した。ただし今後の資料収集は、海外における実施が必要となることが予想され、新型コロナウイルス感染の再拡大などによっては、研究計画の一部を変更せざるを得ない場合が想定される。
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Strategy for Future Research Activity |
本課題について、今後は以下の2点を中心に研究を推進する計画である。 (1)昨年度の研究成果を引継ぎ、さらに本年度の研究計画に基づきながら、エラノス会議に参加した論者たちが構想した「民族」「人種」「宗教」「聖なるもの」等諸概念の特質を把握し、ナショナリズム、ファシズム、ユートピア思想、生活改革運動との関連性を中心に考察する。とりわけ、宗教運動と宗教研究、ナショナリズムが交差する局面は、現在の政治状況においても議論される機会が多い。本課題は歴史的コンテクストの整理分析を中心とする研究であるが、今日的な議論も参照しながら、その成果発表をかたちにしていく予定である。 (2)エラノス会議は諸領域の研究者たちが研究成果の発表を目的に集った学術的場であったが、各地で展開していた教会改革運動、宗教刷新運動、ナショナリズムに関連する議論を持ち寄り、それらを分析心理学の理論と混交し、つくりなおした場所でもあった。そのようなエラノス会議と、宗教研究、宗教運動が交差した実態とその歴史的コンテクストを分析し、宗教史学の再叙述を目的とする。
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Report
(3 results)
Research Products
(26 results)