Project/Area Number |
20K00094
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 01040:History of thought-related
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
榑沼 範久 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 教授 (20313166)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
Fiscal Year 2024: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2023: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2022: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2021: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2020: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | 下村寅太郎 / 京都学派 / 日本近代哲学 / ヨーロッパ / 西洋と東洋 / 世界史 / 哲学 / 思想史 |
Outline of Research at the Start |
京都学派の著名な哲学者である下村寅太郎(1902-1995)は、1973年の定年退職後も著述活動とは別に、自身の研究談話会「プリムツァール会」で広大な思索をテープに残していた。「真の著作遍歴は著作以外にあるとすらいえる」、「テープの存するかぎり潜在的著作と称してもよいであろう」とは下村自身の言である。だが、『下村寅太郎著作集』(1988-1999)の完結から20年以上が過ぎた現在でも、この「潜在的著作」は公刊されていない。入手可能で可聴状態にあるテープを文字化し、選択・編集・校閲を経て刊行を目指す本研究は、下村の未知の側面の発見にとどまらず、思想史研究にとって重要な学術資料の集成になるだろう。
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Outline of Annual Research Achievements |
下村寅太郎が自身の研究談話会「プリムツァール会」の録音テープに残した「潜在的著作」のうち、今年度は「ルネッサンスにおける種々なる革命について」、「西洋文化史における『商人』の役割―ルネッサンス再解釈の試み」、「ルネサンス『芸術家』新考」の3本の録音テープを入手し、デジタル(MP3)化するとともに文字起こしをすることができた。これらの録音テープはプリムツァール会の常連だった小宮山恵三郎氏が所蔵していたものである。「西洋文化史における『商人』の役割」以外は昨年度に作業をした内容と重複するものの、録音状態が良好なため聴取不能だった部分を補足する役割を果たした。そして下村家から京都大学文学研究科・文学部の日本哲学史専修に寄託され、上原麻有子教授のご協力のもと、昨年度に研究代表者が作業をした録音テープ(「歴史的社会的存在としての知識人」「世界史に於ける戦争について」「科学史に於ける医学の地位について」「世界史に於ける農学について」「ライプニッツと支那哲学」「ヨーロッパにおける『都市』の成立の精神史」「哲学者の理想国論」「『場所』の哲学と科学―西田哲学と近代科学」「哲学 哲学者 哲学史 再考」など)と合わせて、研究最終年度に小宮山氏とともに京都大学の日本哲学史フォーラムで行う予定の発表に向けた編集作業を行なっているところである。また、「潜在的著作」でも下村が究明を続けている西欧とは何かという問い、そして西洋/東洋の問いを研究代表者自身も下村を追って深めるため、今年度は下村の重要著作『ヨーロッパ遍歴 聖堂・画廊・広場』の最初の要所でもあるイスタンブルとアテネを視察した。特に「戦争」「都市」「国家」「哲学」「芸術」の主題を地理のある歴史として把握できたことは、下村哲学を具体性をもって描き出す上で大いに役立つ。発掘できた「潜在的著作」の読解と往復させながら発表に反映させていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プリムツァール会の常連だった小宮山恵三郎氏の多大なご協力も支えに手を尽くしたが、未発見の録音テープ/「潜在的著作」はまだ数多い。発掘の手がかりは探し続けていくが、残念ながらこれ以上、下村寅太郎の談話を収録した録音テープは現存しないのかもしれない。しかしながら、京都大学文学部の日本哲学史専修に下村家から寄託された録音テープ(「歴史的社会的存在としての知識人」「世界史に於ける戦争について」「科学史に於ける医学の地位について」「世界史に於ける農学について」「ライプニッツと支那哲学」「ヨーロッパにおける『都市』の成立の精神史」「哲学者の理想国論」「『場所』の哲学と科学―西田哲学と近代科学」「哲学 哲学者 哲学史 再考」など)に加えて、今年度は小宮山氏が所蔵していたテープ(「ルネッサンスにおける種々なる革命について」、「西洋文化史における『商人』の役割―ルネッサンス再解釈の試み」、「ルネサンス『芸術家』新考」)を氏に発掘していただき、研究最終年度に予定されている京都大学の日本哲学史フォーラムで報告することのできる資料を積み上げることができた。また、下村の重要著作『ヨーロッパ遍歴 聖堂・画廊・広場』の最初の要所でもあるイスタンブルとアテネの視察も今年度は実現することができた。特に「戦争」「都市」「国家」「哲学」「芸術」の主題を地理のある歴史として把握できたことは、下村哲学を具体性をもって描き出す今後の発表にとって前進となった。
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Strategy for Future Research Activity |
「潜在的著作」について、「文章にすれば数十篇の講演集になり、手を加えれば数十冊の本になる可能性がある」と下村寅太郎(1902-1995)が記したのは、まだ1980年代の前半時点のことである。「プリムツァール会」は下村が没する直前まで継続されたため、すべてを文字化するならば膨大な分量になることが予想される。そのためここで諦めることなく、引き続き上原麻有子教授や小宮山恵三郎氏と連携しながら、下村寅太郎の未発見の録音テープ(「潜在的著作」)の発掘の努力は続けていきたい。しかし発掘に関しては自身の手を尽くした感はあり、新資料の発掘の方向で研究最終年度に大きな推進を計ることは難しいかもしれない。そこで今後はむしろ、すでに文字起こしをした資料を可読可能な文章に編集していく作業により重心を置いて、このプロジェクトを推進していくのが賢明だろう。上原教授のご尽力により、研究最終年度には下村寅太郎の「潜在的著作」の現在について、小宮山氏とともに京都大学の日本哲学史フォーラムで発表する予定になっている。また、この日本哲学史フォーラムでの発表内容は後日、『日本哲学史研究』(京都大学文学研究科・文学部日本哲学史専修紀要)に収録の計画でもある。「真の著作遍歴は著作以外にあるとすらいえる」、「テープの存するかぎり潜在的著作と称してもよいであろう」と下村は述べた。現在までに発掘できた録音テープはその「潜在的著作」の膨大さに比して余りに数少ないが、その限られた新資料を最大限に活用し、『下村寅太郎著作集』をはじめとする既出の著作とも交差させながら、日本哲学史フォーラム及び『日本哲学史研究』での発表の準備のために、可読化することのできた「潜在的著作」の読解を進めていく。
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