Anti-naturalism of value philosophy in the early twentieth century-For reconsideration of contemporary value theory
Project/Area Number |
20K00119
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 01040:History of thought-related
|
Research Institution | Okayama Shoka University |
Principal Investigator |
九鬼 一人 岡山商科大学, 法学部, 教授 (30299169)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
|
Budget Amount *help |
¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥130,000 (Direct Cost: ¥100,000、Indirect Cost: ¥30,000)
Fiscal Year 2021: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2020: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
|
Keywords | リッカート / 現代価値論 / 二重作用説 / 説明と理解 / 新カント学派 / 自己評価中立性 / カント価値哲学 / 遠近法主義 / 認知主義 / 情動 / 帰結主義/非帰結主義 / 反省的判断力 / 生の哲学 / 反自然主義 / カント哲学 / 解釈 / ヌスバウム |
Outline of Research at the Start |
現代価値論は物理主義に依拠して身体的反応に価値の由来を遡及する自然主義に傾きがちであるが、そうした自然主義は、反自然主義的でもありうる人間観を脅かしかねない。本研究では現代価値論の、自然主義的な見方に抗して、新カント学派・生の哲学・現象学の20世紀初頭の哲学に、総体的な人間観を具えた価値哲学の可能性を探る。情動の哲学・厚生経済学の、価値にかかわる今日的な現象分析(再較正・探索・機会集合等)を活かしながら、実践性・反省性・多元性によってかたどられるリッカートの「しなやかな合理性」の哲学を中心に、ラスク・ディルタイ・フッサールで補完して、当該時期の反自然主義的価値哲学を考究する思想史的研究である。
|
Outline of Annual Research Achievements |
2022年4月10日、「20世紀初頭価値論が残したもの・その歴史的な限界と射程」と題して、フッサール研究者の植村玄輝氏、ディルタイ研究者の上島洋一郎氏らとzoomにてシンポジウムを行った。前者からはアプリオリズムに対する態度、後者からは感情の価値判断における働き等、示唆を受けた。九鬼はリッカートの二重作用説を、役割理論と結びつけ、道徳的ジレンマの不可避性を論じた。フロアから特にFAアプローチを念頭に、価値判断の普遍性を斥けるべきではない、という叱正を賜った。それを承けつつ、ジレンマに遭遇することは何ら非合理性を意味せず、ジレンマの逡巡のなかに合理性を見出す方途を模索している。 2022年5月、『東洋学術研究』Vol,61No.1に「リッカート哲学の臨界」と題する、価値哲学の歴史的位置について考察する論攷が掲載された。カント哲学が19世紀において、現象主義的に論じられたため、価値対象の認知説という考えが流布したところから説き起こした。ドイツ観念論のヘーゲルへの移り行きが示すように、認知説は構成主義的態度説に蝉脱してゆく。これら両者のアポリアを回避する形で、客観的物自体に外在し、共同体的に構成される意識に対しては内在する、超越論的当為をフィヒテ的に了解すべきであることを論じた。これは次の二重作用説に対する哲学史的な露払いとなった。 2022年12月、『岡山商大論叢』第58巻、第二号に「二重作用としての価値判断」が掲載された。価値を知覚アナロジーで論じる①身体反応説、②現象学理論は、思考アナロジーの価値判断論によって乗り越えられるとして、価値判断論を称揚した。そのタイプには大きく分けて、認知タイプと態度タイプがあるが、価値判断内容と判断主体の役割相関性に鑑みて、両者の中間形態である二重作用説に注目すべきである。その存在論的バックボーンとして、カウルバッハ的な遠近法主義に言及した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初、ドイツの文献調査によって、リッカート遺稿を入手する予定であった。しかるに、新型コロナウイルスの蔓延によって、幾度となくドイツ渡航が妨げられた。また2022年2月にはロシアのウクライナ侵攻が勃発し、大量破壊兵器の使用も懸念されて、なかなか渡航の踏ん切りがつかなかった。結局、ドイツ文献調査は2022年8月初め、約一週間の期間で実現した。渡航したハイデルベルク図書館にて、リッカート遺稿のコピーを注文し、帰国後インターネット経由でzipファイルで入手することができた。内容は、リッカート近世哲学史・スピノザの部分の講義準備ノート、ベンノケリーの自然哲学講義、ツィーグラーの宗教哲学講義等である。 先に入手していた、ヴィンデルバントのスピノザ講義の、リッカートによる口述筆記録(2023年になるまで、リッカート自身によるゼミレポートと誤解していた。改めて公に訂正することにし、各方面にご迷惑をかけたことを恥じ入る次第である)に対応した、リッカート遺稿・特に近世哲学史講義のスピノザ部分の解読に、ここ半年間取り組んできた。この近世哲学史はまだしも、ベンノケリーの自然哲学講義、ツィーグラーの宗教哲学講義、これらのリッカートによる筆記録は極めて判読がしずらい。また比較的簡単な、近世哲学史にしてみても、文法的な逸脱があり、研究に難儀をしている。とはいうものの、リッカートとデュ・ボア=レーモンの思想史的関連性(特に自然科学の限界で彼の思想を念頭に置いていること)また、西南ドイツ学派とトレンデレンブルクのかかわり(「無視された選択肢論争」等)やオットーリープマンの先導的役割(ヴィンデルバントの学問分類論は彼に負うところが大であること)が分かってきた。 なお二重作用説の発展として、道徳的ジレンマに逡巡することの合理性を論じる予定であったが、時間的に難しいので代替策を検討中。(尊厳論として執筆する予定)
|
Strategy for Future Research Activity |
リッカートのスピノザ関係文献について、解読作業を進め、2023年度以内に、できれば紀要に、「リッカート近世哲学史講義準備ノート・スピノザの部分の解説」と題して、評釈を行う予定である。そのさい、現在刊行中の岩波『スピノザ全集』の成果を取り入れつつ、とくにトレンデレンブルクの言うところの「根本的思考」「本質的形式」の読解を踏まえる予定である。可能ならば、ベンノケリーによるミル因果論を下敷きにしたリッカート自然哲学を挿入したいが、読解上の困難を抱えている。 それとは別途、「因果の語り・価値の語り」と題し、スピノザが西南ドイツ学派の前哨として果たした役割についてのモノグラフを草する。そのなかでは、アーペルの超越論的プラグマティックスに掉さしながら、行為の推論図式において、価値的な概念が相対的に縮減された検証リストを与える(アーペルの説明-理解-論争を参照)ことを論じる。第一稿は6~8月に発表し、他の研究者の意見を聞く予定である。書物としての体裁をとるのは2025年度かもしれない。 二重作用説とは違う形で、もっぱら新カント学派内在的に尊厳概念の考察も構想している。ヴェーバー、ヴィンデルバント、リッカートの尊厳論を、客観性論文・哲学概論・認識の対象第三版に即して考え、その文脈で主意主義における合理性(逡巡し決断することも合理的である)を探りたい(2025年5月に締め切りの予定)。 2023年度中には、2022年開催のシンポのまとめ、及び価値哲学者の論攷集をまとめる予定である。フッサールは植村玄輝氏、ディルタイは上島洋一郎氏、カント哲学の現代的展開として、近堂秀氏・高木駿氏、シンポのまとめとして、入江祐加氏の玉稿を掲載する。九鬼は研究最終報告の意味から、価値形而上説・価値決断主義・価値認知主義・価値記述理論という具合に、この間の科研費研究で、リッカート解釈が変遷してきたことを再構成する。
|
Report
(3 results)
Research Products
(11 results)