上演芸術における「文化の編み合わせ」:1920年代フランスの「能」研究とその受容
Project/Area Number |
20K00139
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 01050:Aesthetics and art studies-related
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Research Institution | Osaka University of Arts |
Principal Investigator |
長野 順子 大阪芸術大学, 芸術学部, 教授 (20172546)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥3,250,000 (Direct Cost: ¥2,500,000、Indirect Cost: ¥750,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | 上演芸術 / 前衛劇運動 / 能楽 / 仮面 / 身体所作 / 前衛劇 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、1920年代のフランスにおいて、日本で直接「能」公演を体験したフランス人による研究や報告及び各曲目の翻訳がどのように受容されたか、そしてそこから「能」固有の舞台形態・仮面・身体所作に刺激を受けて、当時の演劇改革を中心とする前衛芸術運動がどのような形で展開していったのかを考察する。それを通して、この時期に特徴的であった芸術諸ジャンルの交差とともに、「文化の編み合わせ」の独特の様相を浮き彫りにすることをめざす。
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Outline of Annual Research Achievements |
20世紀初頭ヨーロッパの前衛劇運動に関わった人々が共有していた日本の「能」への関心とそれがもたらした影響をめぐる「文化の編み合わせ」について、以下のような調査と研究及び研究発表を行った。 (1)20世紀初頭のイギリスやフランスで先鋭的な演劇改革を目指した前衛劇運動は、一般向けのリアリズム演劇に対抗するなかで、日本の伝統芸能における「能」の面や様式的な身体表現に関心をもっていたことを明らかにした。とくに、イギリス人G.クレイグ編集の演劇雑誌『仮面』(1908-29)での「能」の紹介記事等や、フランスの演出家J.コポーの演劇学校での「能」上演の試み等について調査を進めた。 (2)また前衛芸術の雑誌『SIC』(1916-19)を創刊したP.アルベール=ビローによるプラトー劇場発足までの歩みを、当初の人形劇作品及び日本人アーティスト瓜生靖に触発された習作等を中心に考察した。プラトー劇場については、独自のセルフポートレート写真家C.カーアンの俳優としての短期間の関与に焦点を当てた。また、瓜生から無表情で抑制した演技を受け継いだ彼女が、仮面の使用と人形的な動きによる身体感覚の変容や自己の多重化を自らの「永続的なカーニヴァル」としてどのように捉えていたのかについて考察した。 (3)2022年8月に北フランスのスリジー国際文化センターで開催されたC.カーアンをテーマとしたシンポジウムにおいて‘L'univers carnavalesque chez Claude Cahun par le prisme du masque et de la marionnette’と題する研究発表を行った。新型コロナウィルス感染拡大により1年遅れで実現されたこの企画には特別に日本からZOOMによる参加となったが、これにより大きな成果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
G.クレイグ、J.コポー、P.アルベール=ビローらの手稿その他を含む資料及びフランスの前衛劇運動の諸資料をさらに調査するためにフランス国立図書館(BNF)その他での作業を予定していたが、コロナ禍のためにかなわなかった。また、シュルレアリストの女性写真家C.カーアンの前衛劇参加を中心とした諸活動についても、出身地ナントのメディアテークにおけるアーカイブや市立美術館での詳しい調査ができなかった。他方2021年8月開催予定が延期となったスリジー国際文化センターでのシンポジウムが2022年8月に開催されたが、日本では依然コロナの感染状況が収まらずまた昨今の国際情勢もありフランス出張は見合わせてZOOM参加での研究発表となった。その成果はシンポジウムの報告書として論文集にまとめられる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)G.クレイグ、J.コポー、P.アルベール=ビローらの発行した雑誌や講演記録他について、日本で可能なものの入手を進め、またBNFのサイトなども活用しつつ、調査をさらに進めていく。 (2)明治維新の欧化政策により廃絶の危機にあった日本の「能」が、雑誌『能楽』の発行(1903年)や『世阿弥十六部集』の出版(1909年)などを機に再興していったことと並んで、アメリカ人E.フェノロサ(とE.パウンド)、フランス人N.ペリやP.クローデルらによる能への傾倒や能研究が進行していたこと、また彼らの帰国後ヨーロッパ各国に普及した「能」作品の翻訳や研究の前衛劇運動への影響などを、上演芸術における諸文化の編み合わせの一事例として再確認する。 (3)P.アルベール=ビローが発行した前衛雑誌『SIC』の果たした先進的な役割について他の前衛雑誌と連関させながら調査する。プラトー劇場における諸作品上演の詳細についてもさらに調査を進める。またこのプラトー劇場に関わった日本人アーティスト瓜生靖の活動については、不明なことが多いが、調査を続けていく。C.カーアンに関してはとくにニーチェをはじめとする思想家からの影響のあり方について考察する。 (4)スリジー国際文化センターのシンポジウムでの発表原稿をさらに推敲して論文集に寄稿する。また日本で最初となるカーアンの展覧会については、作品等の貸借先との交渉が難航してはいるが2024年以降に愛知県美術館で開催されることになったので、その準備作業を進め、それと関連する小シンポジウムの計画等も立てていきたい。
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Report
(3 results)
Research Products
(4 results)