Project/Area Number |
20K00294
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02010:Japanese literature-related
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Research Institution | Komazawa University |
Principal Investigator |
近衞 典子 駒澤大学, 文学部, 教授 (20178297)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清登 典子 筑波大学, 人文社会系, 名誉教授 (60177954)
大石 房子 (金田房子) 清泉女子大学, 付置研究所, 客員所員 (80746462)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
Fiscal Year 2022: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
Fiscal Year 2021: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | 上田秋成 / 俳諧 / 大坂騒壇 / 連句 |
Outline of Research at the Start |
上田秋成は若い頃、大坂の俳壇における「一人武者」と称され、晩年までに多くの作品を残している。しかし未だ全集の俳諧編は刊行されず、全注釈書も備わっていない。本科研では秋成の俳諧、特に連句を対象に、全句に的確な注釈を施すことを目的とする。また、連句が詠まれた背景や人的繋がり、特に宝暦・明和期の大坂独特の文化状況である「大坂騒壇」を視野に収めることにより、秋成の俳壇・文壇における位置や、そういった文化状況と文藝との関係性についても幅広く考察を進めていく。このことは、ひとり秋成の俳諧ばかりでなく、秋成の浮世草子を始めとした、現実をかすめた小説の理解への大きな補助線ともなるはずである。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、当初の予定通り、ほぼ月1回研究会を開催して、現在判明している秋成連句の注釈を、担当者の事前調査と注釈書の原稿作成、研究会における討議と原稿の修正、という方法にて実施。研究会後には修正稿を研究代表者に送付、研究代表者が全担当者の修正データを統合・蓄積するという形で研究を推進してきた。研究開始より、研究会は基本的にオンラインで進めてきたが、夏休み期間中の8月23日(水)・24日(木)の2日間、京都において、初めての対面での研究会を実施、研究代表者・研究分担者・研究協力者の5人全員が一堂に会し、長時間にわたって集中的に読解作業を行い、積極的な意見交換を行うことができた。また、この研究会での作業が順調に進んだため、2日目は秋成関係史跡調査も行うことができた。 また、研究の進展に伴い、秋成連句だけでなく、高点句集に採録されている秋成の高点句も検討材料とする必要性に気付き、これをも加えて研究を進めることとし、第26回研究会(11月5日)までにすべての連句を読了。第一段階としての注釈作業を終わらせることができた。研究会での成果の一部については、研究代表者が2月末に論文発表した。 第27回研究会(11月20日)からは、第二段階としてこれまで蓄積してきた原稿を点検、改めて連句注釈の確認と修正を行っている。研究の推移に従い、何度か記述の方針を転換したり、新たに記述内容を付加したりといった変更点があったため、初期の原稿においては形式的な修正点が多い。また、4年間にわたる注釈作業を通じて秋成連句に対する理解も深まり、また少なからず蕉風連句とは異なる詠みぶりがあることも分かってきたため、初期に施した注釈を改めることもしばしばである。 最終年度の2024年度に向けては、研究成果の公開、出版といったことも視野に収めて、より精度を上げ、秋成の全連句の注釈を完成させたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2023年度末までに秋成連句の全注釈をまとめるべく、月1回の研究会を開催し、精力的に連句作品の読解・注釈を続けてきたが、研究を推進する中で、付句における秋成の俳諧的発想を理解するためには、連句だけではなく、点取り俳諧における高点句も本研究課題の対象とすべきではないか、という声が上がるようになった。点取り俳諧とは、点者(宗匠)に句の批点を乞うて、その点数の多さを競う俳諧であり、遊戯的な性格をもった営みである。刊行された高点句集の中に、秋成の句も何句か採録されている。 秋成の関連する高点句集は既に翻刻もなされて研究環境は整っており、その重要性はかねてから指摘されてはいるものの(大谷篤蔵編『上方俳書集』(上方芸文叢刊2-1・2-2、上方芸文叢刊刊行会、1979.10-1981.6)、従来、ほとんど研究対象とはされてこなかった。そこで、検討の結果、秋成の高点句集入集作品も研究対象とする、という結論に達した。当初の予定よりも対象作品が増えたため、研究の進捗面ではゴールが少し遠くなったことは否めないが、秋成の全俳諧作品を対象とする研究の推進という意味では意義があることと考える。 上記のような経緯で、研究はやや遅れてはいるが、順調に注釈作業は進められている。2023年11月5日開催の第26回研究会には、新たに研究対象に加えた高点句集も含めて、秋成連句は一通り、すべての句を読了・注釈することができた。 第27回研究会(11月20日開催)からは、当初の計画通りに、これまでの蓄積データの確認・修正を行っている。具体的には、研究開始時より、研究会での検討を経て発表者各自が修正を加えた原稿を研究代表者に提出、研究代表者がそれらのデータを作品ごとに集約・蓄積してきた。その集約原稿を素材として、形式的な一貫性を整え、読解にも再検討を加えて、最終稿としてのデータの作成に当たっている。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度秋までに蓄積してきた研究成果をとりまとめ、秋成連句全注釈の完成を目指す。具体的には、歌仙(10作品)、百韻(2作品)、七十二候(1作品)、その他、歳旦三つ物、小説作品中の付合、高点集への入集作品など、様々な形態の作品が残されているため、全注釈として一貫性のある、読みやすい形式を整えていきたいと考えている。また内容面でも、4年間の蓄積によって、秋成やその周辺の俳人たちによる連句の付合の手法において、いわゆる蕉風とは異なる独自の詠み方がしばしば見られることが明らかになってきており、本課題研究の当初、まだその理解が十分に深まっていなかった時期に提出された注釈は改めて見直し、再検討を加え、必要に応じて書き改める必要性があるのではないかと考えている。 また、研究会以外の時間を利用して、更なる秋成連句の発掘にも努める予定である。 2024年度はいよいよ最終年度となるため、2024年度末にはシンポジウムを開催すべく企画を進めている。秋成連句の研究を通じ、中村幸彦の提唱した「大坂騒壇」という文化的サークルの諸相を押さえることが、秋成文藝を理解する上で逸することのできない重要テーマであることが改めて浮き彫りになってきた。特に連句という、複数の仲間が集まって詠み継いでいくという形態の文藝にあっては、秋成という一個人だけでなく、彼を取り巻く環境、またそのサークルの在り方を追求し、その関係性を視野に収めた上で作品を読解することが重要である。そして、その重要性は単に俳諧のみならず、小説の世界にまで及ぶと考えられる(『雨月物語』『癇癖談』『春雨物語』等)。 そこで、このシンポジウムでは、大坂・小説というテーマも視野に入れてパネラーを依頼し、幅広く秋成俳諧、および文藝を考える機会としたい。 このような形でこの5年間の研究成果を公開し新たな課題を提示して、今後の進むべき道筋を示すことを最終目的とする。
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