近世前期における史書・軍書類の編纂・出版と情報流通の研究
Project/Area Number |
20K00348
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02010:Japanese literature-related
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
倉員 正江 (長谷川正江) 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (70307817)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Project Status |
Completed (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
Fiscal Year 2022: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
Fiscal Year 2021: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
Fiscal Year 2020: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
|
Keywords | 宝永落書 / 墨海山筆 / 「古金馬鹿集序」 / 「世直し」願望 / 香西成資 / 小早川隆景 / 『武田兵術文稿』 / 『黒田家譜』 / 貝原益軒 / 豊臣秀吉の朝鮮出兵 / 小早川能久 / 小幡景憲 / 毛利秀元 / 寿林 / 小幡小早河両師伝 / 翁物語 / 鶴頭夜話 / 老談記 / 小早川伝記 / 日本近世文学 / 出版 |
Outline of Research at the Start |
近世前期に盛行した写本の史書・軍書(軍記)類の成立事情と、刊行に至る経緯を考察する。この時期に軍書類の編纂が盛んになる背景には、幕府や藩祖・藩政を顕彰する意図、泰平の世の中になって過酷な戦国時代を回顧する風潮があり、また軍学・史学が処世に資する教養として四民を越えて定着した点も看過できない。従来研究の乏しい作品や作者像を分析することで、近世前期における歴史意識の形成と精神文化の一端を明らかにする。
|
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度は、近世期における情報流通の実態として、五代将軍徳川綱吉(正保三年〈一六四六〉~宝永六年〈一七〇九〉)の治世下と没後に多出した、いわゆる「宝永落書」を取上げ、未紹介作品を中心にその性格を再検討した。 明治期に矢島松軒隆教が熱心に落書を収集し、周知の如く『江戸時代落書類聚』に結実した。中でも「宝永落書」は巻二-四に該当し、最大の量を誇る。翻刻上・中・下三巻三冊が出版されたことで、江戸時代の落書の公開が進み、『落首辞典』が「落首年譜・人物索引」を付して『類聚』を補填している。よって狂歌形式の作は従来かなり網羅されていると言えよう。ただしそれ以外の漢詩形式・散文形式の落書は、未翻刻のものも少なくない。 その中で、内閣文庫蔵書写本『墨海山筆』(天保十四年閏九月十三日関根為宝序 総目録共八十四冊存 請求番号217-0031国立公文書館デジタルアーカイブ画像公開)は従来も貴重な叢書と認識されているが、第八冊所収「宝永落書」は看過されてきたと思しく、未紹介の落書を多く含む。叢書の編者は整三堂旭岱と称し、東叡山寛永寺の塔頭の僧正であったという。寛永寺は増上寺と並んで徳川家の菩提寺として知られ、綱吉の墓所でもある。「宝永落書」末尾には「天保庚子(=十一)春」の書写との識語がある。中でも「古金馬鹿集序」は従来言及がないが、『古今和歌集』仮名序の徹底したパロディであり、知識人の戯作的性格が溢れている。例えば綱吉治世の六種の悪事を指摘し、それは「富士山の噴火」「京都の大火」「江戸の地震」「東叡山根本中堂の扁額」「砂除け金の徴収」の五種に、「いわゐの哥」を加えた六種である。最後に新将軍家宣の政治に期待する祝意を込めつつ、落書を記す意義を君主の善悪を糺すことだとしている。当時の落書は武家社会を対象とし、次世代の将軍に期待する風潮や「世直し」願望を込めた共通認識を広める役割があったと結論付けた。
|
Report
(4 results)
Research Products
(5 results)