19世紀後半~20世紀初頭の英文学における階級横断的な男性性の再定義の研究
Project/Area Number |
20K00391
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02030:English literature and literature in the English language-related
|
Research Institution | Osaka Metropolitan University (2022-2023) Osaka City University (2020-2021) |
Principal Investigator |
野末 紀之 大阪公立大学, 大学院文学研究科, 教授 (70198597)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 章夫 大阪公立大学, 大学院文学研究科, 非常勤講師 (10527724)
藤井 佳子 大阪公立大学, 大学院文学研究科, 非常勤講師 (70379527)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
|
Keywords | 男性性の再定義 / 唯美主義 / 児童文学 / ラドヤード・キプリング / オスカー・ワイルド / 少年間の友情 / 共感・共苦 / タルボット・リード / 第一次世界大戦 / 男性性 / 帝国主義 / キプリング / セクシュアリティ / 学校物語 / 近現代イギリス文学 / コスモポリタニズム / アラン・ガーナー / ビリー・ブラッグ / ブレクジット / F・W・ファラ― / エドマンド・ゴス / イギリス文学 / 第一次大戦文学 |
Outline of Research at the Start |
19世紀後半から20世紀初頭のイギリス文学における男性性規範とそれに対する再定義の試み、および両者間にはたらく文化的・政治的ダイナミズム(相互作用と抗争)のありようを以下の三点から階級横断的に考察する。(1)ハイカルチャーに属する唯美主義文学の男性性、(2)おもに中産階級の少年を描く「学校物語」における男性性、(3)第一次世界大戦後の文学における男性性。すなわち、ナショナリズムと帝国主義の時代において、それと深く結びついたジェンダーをめぐる文学的表象に関する重層的研究である。
|
Outline of Annual Research Achievements |
今年度も9月と3月に研究発表と質疑応答を行った。代表者の野末紀之は、研究論文「美と苦の感受性――ペイターによる唯美主義表象の書き換え」を『オスカー・ワイルド研究』に掲載した。生身の女をエゴイスティックな欲望の対象にする審美化の問題をペイターが引き受け、反論として「美と苦の感受性の共存」、審美的経験のもつ「距離化の失調」を示すとともに、女性性をおびる「共苦」を、社会的紐帯や世代継承の鍵概念として再規定していることを論じた。昨年度の日本ワイルド協会シンポジアムでの口頭発表に加筆修正をほどこしたもの。また、3月にC・K=ジャクソン「新しい騎士道」の初翻訳を『表現文化』に掲載した。簡単な解題を付した。分担者の藤井佳子は、フォーラム「児童文学とは何かを問い続けて」において、関連資料の展示を行い、提題者として「イメージの伝播と変通――チャッブブックから現代へ」と題する発表を行うとともに、展示資料の解説を書き、報告書を出した。藤井は、アメリカの月刊児童雑誌『セント・ニコラス』 (1873-1940)に掲載された記事から日本の子どもの描かれ方を分析し、性差の発生状況を見るとともに、士族階級の男児たちが武士道を基本精神として養育される様子とその結果を、同時期の英米の少年小説に描かれた少年たちにたいして期待された「男らしさ」と比較考察した。分担者の高橋章夫は、研究論文「キプリングの「共通形式」とラチェンズの追悼の石――第一次世界大戦の戦没者追悼における抽象表現」を『Queries』に掲載した。この論文では抽象的表現を用いて戦没者を追悼する二つの作品を比較検討した。純粋な抽象性を追求したラチェンズの追悼の石とは異なり、キプリングの「共通形式」は、感情を抑制するという男らしさの規範から逸脱しないように、すなわち息子を失った彼自身の悲しみを隠蔽するために多義的で抽象的な形式になった可能性があることを論じた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
代表者と分担者は、それぞれの研究成果を研究発表、論文あるいは報告書にまとめることができた。 近年、海外渡航費用が高騰しているため、海外での調査が困難になっている。そのため、それを必要としている分担者には不利な状況が続いている。にもかかわらず、今年度みずから現地で集めた資料を用いて新たな研究テーマの可能性を切り開いた高橋論文は高く評価したい。タルボット・リード研究を継続する藤井が、今回の発表と報告書では、アメリカにおける日本児童の男性性表象という新たな領域へと踏み出したことも注目してよい。代表者は、かつてボドレアン図書館で集めた一次資料を参照しながら翻訳作業を行うことで、二次資料ではわからない情報を提供することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
野末紀之は、J・A・シモンズやE・カーペンターら男性同性愛の擁護者たちのジェンダー思想にかんする研究を行い、同じ志向をもつW・ペイターやO・ワイルドらのそれと比較考察する。藤井佳子は、主にイギリスの少年学校物語、とくにタルボット・リードの作品を中心に分析を続け、描かれた男らしさが当時の少年たちにどのような影響を与えたのかを、Penny Dreadfulsと呼ばれたいわゆる悪書も視野に入れて考察する。高橋章夫は、2023年にヨーロッパで収集した資料の分析を続け、戦没者追悼の場における男性性の表象のあり方とその変遷をイギリスの周辺諸国と比較して調査する。 また、これまでの研究成果を共著として刊行したい。
|
Report
(4 results)
Research Products
(11 results)