Plays in Print and Their Collections: Bibliography and Book History of Early Modern English Drama
Project/Area Number |
20K00420
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02030:English literature and literature in the English language-related
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
英 知明 慶應義塾大学, 商学部(日吉), 教授 (60218518)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2023: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2022: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | シェイクスピア / 書誌学 / 書物史 / 旧蔵本 / ファースト・フォリオ / ミルトン / 書物 / 演劇 / コレクション |
Outline of Research at the Start |
本研究は初期近代英国演劇研究の場において実践される、書誌学と書物史の「総合研究」である。書物の印刷と出版を合理的かつ事実に基づいて再生するテクニカルな「書誌学」研究を実践する学者は国内で少数であり、他方この時代の演劇作品の「書物史」研究に携わる研究者はさらに少ない。本研究はシェイクスピア時代の演劇作品を対象に、これら二つの領域を融合して行う、いわばシンクロニシティを追究する研究であり、言い換えれば、技術的、合理的、実証主義的な書誌学と、個別のコピーや蔵書家のコレクションなどへの史的考察を目指す書物史の双方の分野を統合し、いわば<書物学>と称し得る新たな学問分野を切り開く研究である。
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Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は、シェイクスピア作品を購入・使用した著名人を対象に、演劇本がいかに彼らの活動に寄与したかを探る目的で研究を行った。特に力を入れたのは、フィラデルフィアの公立図書館に収蔵されている『シェイクスピア作品集』初版(1623、以下Fと略記)のかつての所蔵者ジョン・ミルトンについての研究であった。
今年度は、そのFという書物そのものにさらなる焦点を深く当て、先行研究で未だ光が当てられていないFの植字と印刷に関する新たな研究を行った。とりわけ注力したのは、『ロミオとジュリエット』の最終ページ、および『トロイラスとクレシダ』の冒頭ページの印刷に大きな影響を与えたジャガード印刷所と編集者ヘンリー・ウォリーとの間で起きたアクシデント、そしてそれが及ぼした印刷の遅れ、そして植字工によって引き起こされた不規則なテクストの生成についてであった。
この印刷所外の揉め事のせいでFの印刷は数週間遅れ、結果、Fは第一刷から第三刷までに漸次分かれて出版されるという予想外の展開を引き起こした。とりわけ第二刷においては、第一刷で作成したが廃棄が決まったページを「再利用」せざるを得ない状況が生まれ、そのため『ヘンリー八世』と『トロイラスとクレシダ』との間に、『ロミオとジュリエット』の最終ページが紛れ込むこととなり、その1ページに印刷所が大きな「×」印を付して発売したため、ジャガード印刷所にとって印刷技法上の大きな瑕疵を露呈してしまったことを論じた。また『トロイラスとクレシダ』の冒頭ページの印刷がやり直しになったことで、このページが各々別の機会に、二人の異なる植字工によって植字されたことから生じた「本文上の差異」について詳細に論じた。この研究は論文にまとめられ、2022年度末(2023年3月)に日本シェイクスピア協会が発刊する『Shakespeare Journal』に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
シェイクスピア作品は、上演後に印刷・出版され戯曲本となり、それが読者に購入されたり、演劇研究者や愛好家、書物のコレクターの手に渡るなど、それぞれが個別で固有の歴史を持ちながら「書棚の戯曲」としての歴史を重層的に育んでいる。
そうした歴史を辿ることを本研究の主眼のひとつに設定している一方、印刷所における書物そのものの生成の過程をこれまで以上に精密に探索し、未解明な部分を見つけ出し、問題点を拾い上げ、先行研究には無い独自のオリジナルな研究を打ち立てることも本研究のもう一つの狙いである。そうした印刷所における演劇本の書誌学的な追究を、本研究が「印刷所の芝居」と呼ぶ所以である。
Fの研究では一定の成果は残せたものの、今年度もコロナの影響を受け、海外出張が実現できなかったこと、また古書の流通が大きく滞り、有力な資料を入手出来ず、またオークションなどへの出品も低調であったことから、進捗状況が遅れる素因となったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は「印刷所の芝居」により一層焦点を当て、とりわけFが印刷所でどのようなプロセスを経て製作、出版されたかをさらに詳細に検証する。特に『ロミオとジュリエット』の最終ページとF全体の印刷プロセスに関する研究を中心に、どの時期にどのようなプロセスで印刷が二度行われたかについて先行研究を網羅し、新たな「書誌学的検証法」を導入して分析する予定である。
また本文の異同などの細かいデータを収集し、ジャガード印刷所で働いた複数の植字工を対象に、個人レベルで職人の仕事ぶりを明らかにする予定である。またその結果、Fが印刷所でいかなる変更や加筆を受けたかを、職人の意図をも含めて厳密な分析書誌学の手法をもって明らかにする。
印刷所で行われた英国演劇作品の本文生成過程への精緻なアプローチは、我が国では西洋書誌学を専門とする研究者人口が少ないため、ほとんど実践されていない。そのため「シェイクスピア書誌学研究」が手薄となっている印象は否めず、そうした現状を打破するため、今年度はより高いレベルでの研究を行い、海外の学術誌に投稿したいと考えている。
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Report
(3 results)
Research Products
(2 results)