Project/Area Number |
20K00431
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02030:English literature and literature in the English language-related
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Research Institution | Hiroshima University (2021-2022) Fukuyama University (2020) |
Principal Investigator |
中尾 佳行 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 名誉教授 (10136153)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
地村 彰之 広島大学, 人間社会科学研究科(文), 名誉教授 (00131409)
佐藤 健一 滋賀大学, データサイエンス学系, 教授 (30284219)
大野 英志 広島大学, 人間社会科学研究科(文), 教授 (80299271)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥3,770,000 (Direct Cost: ¥2,900,000、Indirect Cost: ¥870,000)
Fiscal Year 2022: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
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Keywords | チョーサーの話法 / 意味論コーパスの構築 / カンタベリ―物語 / Hengwrt MS / Ellesmere MS / 初期刊本 / スピーチの言語指標 / 語り手の編集 / カンタベリー物語 / Hengwrt MS / 話法の意味論コーパス |
Outline of Research at the Start |
話法の研究は、近代の小説が中心的に行われ、その発達過程の調査は少ない。中世の韻文は殆ど扱われず、特に意味論では、Fludernik (1993, 1996)やMoore (2015)により部分的な検証がある程度で、チョーサーでの体系立てた調査は殆どなされていない。話法の設定の切り替えは、多くの場合その言語の意味を変容させ、話法は本質的に意味論の問題である。本研究では、話法を意味付けるタグを精緻化し、そのタグを多様な社会層の巡礼者が話をし、話法の多様性が見られる『カンタベリー物語』、これまでの研究で作成した電子化された4テクスト、Hg, El写本及び刊本に付加し、話法の意味論コーパスを構築する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、G. チョーサーの『カンタベリー物語』(The Canterbury Tales)の2つの代表的な写本とそれに対応する2つの代表的な刊本を取り上げ、4テクストの電子パラレルコンコーダンスを精査し、チョーサーの語りテクストにおける話法を解明することである。本年度は話法を特徴づけるパラミターのタグ付けを継続的に行い、意味論コーパスの作成を一層充実させた。話法は本質的に意味論の問題であり、チョーサーの現代英語訳と日本語訳を手掛かりに、話法の伝達動詞、語り手の歴史的現在、自由間接話法・思考、被伝達部の法助動詞の解釈(根元的意味、認識様態的意味)等を調査した。この研究成果を2022年7月に開催の「新チョーサー学会」第22回大会で、"How to Translate Chaucer's Multiple Subjectivities into Japanese: Ambiguities in His Speech represenation"と題して発表した。翻訳を通して、原典に潜む話法の意味のヴァリエーションないしトラランスが描き出された。2023年Peter Langから出版予定の本(第2章を執筆)においては、チョーサーにおける話法タイプを4つに分けて論じた。人物による話法タイプの使い分け、写本上句読点(引用符)のないことから話法タイプが流動的であること(時制の一致がなく、被伝達部に現在形が散見される)、新たな話法タイプである自由間接話法・思考の出現(特に現在時制が使用されると、人物に特定なのか、一般的なのか曖昧性が生ずる)、そして話法に内在する認知主体の複層性(発信者と受信者の関係の階層性)がそれである。また話法と写本レイアウトの関係、初期刊本にある人物のスピーチに関する標準化への修正、語り部の時制の改編なども跡付けた。タグ付けは意味論の基礎データとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
話法の意味論を伝達部、被伝達部、語り部に分けて調査した。伝達部については、動詞の種類、動詞の時制(権威者の引用部でなくても現在形が散見される)、動詞に付加される修飾構造(ジェスチャー表現等)をチェックした。被伝達部のスピーチは、間投詞、呼びかけ語、直示語、命令文、疑問文、省略文等をその言語指標としてタグ付けした。写本上句読点(引用符)がないため、一つの話法においても執拗に重ねられていた。韻文においてはHg写本及びEl写本の行ごとに、また散文においては電子テクスト上で設定した(チェックのための恣意的な設定)行ごとにチェックした。タグが1行においても重なり合うことが多く、どのように計量化し、統計的な処理をしていくのか、課題が残った。語り部における編集過程は濃淡があり、語り手に引き寄せて捉えるか、登場人物に引き寄せるかで、話法タイプは微妙なグラデーションが観察された。タグでは、Fludernik (1993)を参照して、narrator's report of an act、narrated perception、free indirect speech/thought等にタイプ分け、タグを入れた。しかし、境界線は必ずしも明確でなく、タグ付けでは、複数の可能性を記した。とりわけ、語り手が現在時制を使用している場合、その多義性とも相まって、登場人物に特定されるものか、一般論なのか、判断に困った。チョーサーの話法は、中世テクストの本文(ほんもん)特性、語り手は編集者(compilator)で、必ずしも創造者(auctour)でないこと、換言すれば、主体の分散に大きく左右されているようにも思える。話法には認知主体の層の問題があることが、タグ付けの複数性から浮かび上がってくるように思える。この点を更に検討していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
チョーサーの話法の意味を伝達部、被伝達部、語り部において、タグ付けを行った。タグは、行ごとに行った。人物のスピーチには、伝達動詞の種類(seyde, spak, answerde, quod等)、誰が誰に、また被伝達部の特徴、具体的には呼びかけの人称、直示語の種類、文型の種類、省略文、法助動詞の使用、語数等をチェックした。しかし、それぞれの関係付けについては課題が残った。統計的な処理の可能性について、応用統計学の専門家である佐藤健一教授の支援を得て、詰めていきたい。時制とモダリティは、語り部においても人物のスピーチにおいても心理に密接に係わり重要な役割を果たしている。Hg写本とEl写本及び刊本において、時制とモダリティ(法助動詞に着目)について、どのような異同が見られるか、またそれは何故なのかを調査している。この調査の一部を次年度(2023年度)8月7日に開催されるThe 2023 Hiroshima International Conference In sondry ages and sondry londes: Global Chaucer in the XXIst Centuryにおいて、発表する予定である。時制の異同は人物の会話ではなく、殆んど語り部にあり、歴史的現在使用の有無に見られた。異同は写本間で双方向的で、チョーサーの言語のヴァリエーションと考えられた。法助動詞の異同は、人物と語り部で拮抗して見られた。法助動詞の種類の異同は殆ど無く、あってもwol-shal, wolde-sholdeに限定的であった。他方、一つの法助動詞について現在形と仮定法過去の交替が多く見られた。初期刊本での異同は、分担者の地村彰之教授と大野英志教授の助言を得る予定である。また上記学会ではJonathan Fruoco教授と同席することもあり、今後の研究について指導助言してもらう予定である。
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