How culture can be successfully introduced to bring inter-ethnic harmony: Learning from the Tlingit cultural emissary, Nora Marks Dauenhauer
Project/Area Number |
20K00438
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02030:English literature and literature in the English language-related
|
Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
林 千恵子 京都工芸繊維大学, 基盤科学系, 教授 (10305691)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
|
Budget Amount *help |
¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥130,000 (Direct Cost: ¥100,000、Indirect Cost: ¥30,000)
Fiscal Year 2021: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2020: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
|
Keywords | アラスカ先住民族 / クリンギット(トリンギット) / ノーラ・マークス・ダウエンハウアー / 口承物語 / 歴史民族学 / ロシア人と先住民の戦い / 『わたしたちの祖先』 / 『トリンギット領アメリカのロシア人』 / 地名研究 / 先住民由来の地名 / 民族共生 / 文化の発信 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、アラスカ先住民族クリンギット(トリンギット)の作家・詩人ノーラ・マークス・ダウエンハウアー(1927-2017)が講演や各種メディアを通じて行った、クリンギットの伝統文化(特に精神文化)の解説に焦点をあて、Sealaska Heritage InstituteやAlaska State Museum等での資料調査研究をもとに、解説内容と表現方法の約50年間の変遷をたどり、読者や聴衆の理解を深めるために積み重ねられた工夫を明らかにすることによって、ダウエンハウアーによる文化解説がなぜ成功したのかを解明する研究である。
|
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度は、アラスカ先住民族クリンギット(トリンギット)の作家・言語文化研究者ノーラ・マークス・ダウエンハウアーによる伝統文化に関する発信が、米国社会の「白人」に広く認知された時期やきっかけを、1970年代以降の全米の新聞記事から推定した。また、非先住民からの受容のきっかけとなった著作内容を分析し、評価の要因を考察した。 最初にダウエンハウアーが米国で広く注目を集めたのは、クリンギット口承物語の研究書『わたしたちの祖先』(1987)出版によってであり、先住民言語を夫妻で守ろうとする姿を報じた記事が全米の各紙に掲載されたことがきっかけだと分かった。しかし、これにより一気に認知度が高まることはなかった。 一般の人々の間で関心と評価が高まる契機となったのはリディア・T・ブラックとの共編著『トリンギット領アメリカのロシア人―1802年と1804年 シトカの闘い』(2008)の出版だと考えられる。本書は、19世紀初頭にアラスカ南東部で勢力を拡大するロシア人に先住民族が壊滅的被害を与えた「シトカの闘い」について、その歴史的真実を、先住民とロシア人双方の体験者・目撃者による語り/記録と、最新の研究知見から解明しようとした歴史民族学の大著である。本書で初めて公開された口承物語と歴史記録は、200年以上前の先住民社会や人々の心の動きを鮮やかに蘇らせただけでなく、未解明の歴史の謎を解くスリルを読者に堪能させ、本書は2008年度アメリカン・ブック・アワードを受賞した。 この著作によって、ダウエンハウアーは先住民族の歴史や文化に改めて非先住民の目を向けさせることに成功しただけでなく、先住民の歴史、文化、物語の中に現代の学界や社会にとって有益な情報や、問題解決への新しいアプローチが存在することを具体的に示してみせた。この詳しい研究結果は令和5年の学会発表及び投稿論文で発表予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究では、アラスカのSealaska Heritage Institute (SHI)、Alaska State Museum及びUniversity of Alaska Southeastが所蔵するダウエンハウアーの多様な種類の著述資料を扱う。具体的には、ダウエンハウアーが新聞や雑誌に寄稿した記事、ガイドブック等の解説、講演のスクリプトなど、これまで研究対象として注視されなかった資料に改めて焦点をあてようとしている。 しかし、令和4年度は新型コロナウィルス感染症の変異株による流行が続いた。研究代表者は親の介護に従事しており、自身の感染や渡航後の隔離によって長期間介護ができなくなる可能性があり、海外への渡航を断念した。 国内での研究に専念した令和4年度は、オンライン検索が可能な資料の検証を進めるとともに、当初は研究対象外としていた出版物に改めて着目することで、ダウエンハウアーによるアラスカ先住民の歴史・文化発信のアプローチの新規性と重要性が浮き彫りとなり、異文化理解促進の成功の一因を解明することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和4年度の研究内容を第35回エコクリティシズム研究学会(令和5年8月)のシンポジアム「環境と戦争」の中で発表する。「ラッコの毛皮をめぐる19世紀多民族間戦争―『トリンギット領アメリカのロシア人―1802年と1804年 シトカの闘い』と歴史記録への新たなアプローチ」というタイトルで、ダウエンハウアーが一般読者からも広く認知されることになった著作の分析結果及び新規性について発表を行う。発表内容は研究論文としてまとめ学会誌『エコクリティシズム・レヴュー』第17号に投稿する。 令和5年9月と令和6年3月には、アラスカ州ジュノーで資料調査を行う。具体的には、Sealaska Heritage Institute(SHI)、Alaska State Museum、 University of Alaska Southeastにおいて、ダウエンハウアーの著述資料と講演原稿の収集と検証を行う。研究成果をまず報告書の形で完成させた後、令和6年夏に多民族学会で研究成果を発表し、学会誌『多民族研究』に投稿予定である。
|
Report
(3 results)
Research Products
(4 results)