Project/Area Number |
20K00462
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02040:European literature-related
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
寺田 龍男 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 研究員 (30197800)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,510,000 (Direct Cost: ¥2,700,000、Indirect Cost: ¥810,000)
Fiscal Year 2023: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2021: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | 中世ドイツ文学 / 比較文学 / 写本 / 本文の流動 / ディートリヒ叙事詩 / ドイツ文学 / 書記伝承 |
Outline of Research at the Start |
中世ドイツ英雄叙事詩の一ジャンルである「ディートリヒ叙事詩」には,写本が書き継がれる過程で本文が大きく流動する作品群「ディートリヒの冒険叙事詩」(以下「冒険叙事詩」)がある。その流動の原因は従来,唯一の原本を後の写字生が自由に改作した結果であると説明されてきた。しかしこの解釈では,多くの作品に複数ある系統の成立とその後の動態を十分には説明できない。 本申請研究は,冒険叙事詩の諸作品において, ①書記伝承の初期の段階ですでに内容の異なる複数の「原本」があったこと ②異なる系統の本文が混じり合う写本の中には,写字生が先行する複数の写本を校合勘案して書かれたものがあること 以上2点の論証を目標とする。
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Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度も当初の計画に沿って作業を進めた。目標は、(1)「ディートリヒの冒険叙事詩」諸作品には作品の成立当初から複数の「オリジナル」があったという仮説を立てること、および(2)写字生が書写の過程で複数の典拠を使用したために本文が流動したという仮説を立てること、この2点である。 中世ドイツ文学では多くの場合、典拠と作品本文との関係が不明確であるが、本企画の上記2点の目標を達成するためには、典拠を書写して写本が作成される過程で本文がどのように流動するのかを考察しなければならない。書記伝承の実態がその場に居合わせた人にしかわからないのは論を俟たないが、中世ドイツ文学でも例外的に作品における記述と出典の関係が明らかなハインリヒ・フォン・ミュンヘンの『世界年代記』の事例を参照することにより、研究を進めることができた。 その『世界年代記』では、実態の把握と分析が可能であることを前年度の発表論文で示した。そこで得られた知見をもとにして、ディートリヒ叙事詩の諸作品につき、本文流動のあり方を考察した。 なお作品の本文が写本ごとに異なるというのは、書写作業を人の筆写に頼り、なおかつ著作権の概念がなかった前近代においては普遍的に見られる。しかし同じ理由で、実態の解明が困難な現象でもある。まさにそれゆえ、異文化間の比較が、個別現象における作業仮説の構築に有効である。以上の考えから、本文流動の研究が盛んな中世日本文学研究の成果に学んで流動の要因や背景事情などについて調査し、中世ドイツ文学の研究への応用の可能性を考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和5年度に研究成果を公表することはできなかった。しかしデータ分析は予定通り進めた。また研究協力者との協議などで本研究を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
計画最終年度であったが、延長申請が認められたので遅れを取り戻すためさらに研究を進める。 本文流動という現象については、作品成立初期の段階で、すでに複数の「オリジナル」が存在したことが原因となる可能性があり、その仮説をもとに考察を進めてきた。しかし流動の原因はもとよりそれだけではなく、さまざまな要因が考えられる。そこで今後は、以下の方針で作業を続ける。 (1)写本の本文に即した考察と分析を引きつづき行い、実証的な論を進めるための基礎データを収集する。 (2)本文流動の現象について様々な指摘がすでになされている日本文学研究の成果を援用して、中世ドイツ文学研究のための仮説構築に向けた作業を行う。
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