Project/Area Number |
20K00484
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02040:European literature-related
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
田母神 顯二郎 明治大学, 文学部, 専任教授 (30318662)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2021: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2020: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | ピエール・ジャネ / 解離理論 / 心理療法 / ミルトン・エリクソン / 催眠術 / アンリ・ミショー / マルセル・プルースト / 精神医学 / ラポール / 統合的アプローチ / フランス精神医学 / 精神衰弱 / 現実機能 / 不全感情 / ベルクソン / 創造機能 / 心的緊張 / ヒステリー研究 / フロイト / トラウマ / 解離 / PTSD |
Outline of Research at the Start |
本研究は、近年急速に評価が高まっているフランスの精神科医兼心理学者ピエール・ジャネの理論を取り上げ、時代ごとの変遷や有機的統一性を押さえつつ、その全体像を明らかにすることを目標とする。その際、ジャネ理論における心理療法論的側面と認識論的側面を特に掘り下げていくことで、ジャネ理論の独自性や先駆性を立証し、ジャネ理論が現代において持つ治療的価値や、認識論的可能性を明確にしていきたい。また、精神医学や心理学、そして哲学、文学、認知科学、神経科学なども視野に入れた学際的研究を進め、現代におけるジャネ理論の意義や射程を正確に位置づけていくことで、来たるべき「ジャネ学」の基礎を構築していく。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、前年度に発足したジャネ研究会のメンバーとともに、夏季休暇等を除く月1回のペースで合計10回の勉強会を行った。うち6回は発表主体の会となった。これらを通し、ジャネ理論とヴァン・デア・ハートの構造的解離理論やミルトン・エリクソンの催眠療法理論、あるいはマルセル・プルーストやアンリ・ミショーといった文学者の作品との比較考察なども行うことができ、ジャネ研究全体の幅を広げることができた。また12月には、ジャネ研究会の一部のメンバーが主催する日本催眠医学心理学会でジャネと催眠療法についての発表を行った。 これらの傍ら、従来のジャネの主要著作の研究も独自に進め、特にジャネ後期の大著である『苦悶から恍惚まで』を考察し、その結果を二つの論文にまとめて発表した。(1)「『苦悶から恍惚まで』(上)──ベルクソンとジャネ(14)(『文芸研究』、 151号、2023年9月、69-98頁)、(2)「『苦悶から恍惚まで』(中)──ベルクソンとジャネ(15)(『文芸研究』、 152号、2024年3月、37-60頁)。現在、「『苦悶から恍惚まで』(下)」を執筆中であり、これにより、当初の目的だったジャネの主要著書5作を研究し、ジャネの全体像を描き出すという目標の達成に目途が立った。 理論面で言うと、2023年度は、特にジャネの行動心理学や感情心理学の研究が進んだ。また、脳神経科学(脳の可塑性)やエピジェネティックスなどの科学理論と、ジャネ理論が融和するものであるという確信をますます深め、それらの先駆者としてジャネを位置づける試みを開始した。 最後に、2024年2月にジャネ研究の先達である江口重幸氏とお会いし、本研究への協力を依頼することができた。早ければ、2024年の秋に、国内のジャネ研究者を集めたシンポジウムを開催する計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、文学部長と大学院の文学研究科長を兼任していたため、研究に割ける時間が限られていたが、それでも夏季休暇や冬季休暇、またジャネ研究会などをフルに活用して研究を進めた。コロナ禍の影響などで、日本におけるジャネ研究の基盤を作るという目標は当初の計画通り4年間では終わらなかったが、ジャネ研究会を発足させ、またジャネ研究の先達である江口重幸氏からの協力も得られるようになるなど、将来の「ジャネ学会」設立への基礎固めは出来つつある。すでに1年間の研究猶予を認めてもらっているため、この一年でジャネ・シンポジウムを開催するなどジャネ研究者の連携強化を図り、目標に一歩でも近づきたいと考える。 一方、ジャネの主要著作((『心理自動症』、『ヒステリー患者の心の状態』、『強迫観念と精神衰弱』、『心理学的治療法』、『苦悶から恍惚まで』)の考察を中心に、ジャネ理論の全体像をその変遷とともに明確にするという目標は、本年度でほぼ達成の目途が立ち、今後はこれまでの研究をまとめ、数冊の本の出版というかたちで社会に向けて公表していきたいと考える。 また、日本におけるジャン学会の設立に目途が立ったら、今度はフランス、アメリカのジャネ研究者との連携を深め、さらに国際的な研究を展開できるようにしたいと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
進捗状況欄にも書いたように、本研究は一年間の延長を認めてもらったため、コロナ禍の影響で未達成となっている目標、とりわけジャネに関するシンポジウムの開催と論文集の刊行を実現し、将来のジャネ学会につながるような国内ジャネ研究者のネットワークを築いていきたい。 また、ジャネの主要著作の考察を中心に、ジャネ理論の全体像をその変遷とともに明確にするという作業は、本年度で目標を達成する目途が付いたため、その成果をもとに今後、ジャネについての本を刊行していきたいと考えている。 さらに、これも上で触れたように、近年、脳神経科学やエピジェネティクスが発展し、大脳の可塑性や遺伝子発現制御機構などのテーマがクローズアップされているが、これらの仮説とジャネ理論は呼応しあう側面を持っている。今後、さらに研究を深化拡大し、ジャネ理論の現代的意義をいっそう明らかにしていきたいと考える。 最後に、現在進行中の、ジャネ理論とヴァン・デア・ハートやエリクソンの理論との比較考察もジャネ研究会のメンバーと共に、進めていきたいと考えている。
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