Project/Area Number |
20K00490
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02040:European literature-related
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
大森 雅子 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 准教授 (90749152)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
|
Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
|
Keywords | ソ連文化 / ロシア文化 / 独ソ戦 / 児童文学 / 児童雑誌 / 『ムルズィルカ』 / コルネイ・チュコフスキー / ミハイル・ゾーシチェンコ / ロシア文学 / メディア文化 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、ソ連時代の児童雑誌を取り上げ、その中で表象された国内外の「敵」について、同時代の成人向け大衆雑誌や他のメディアを参照しつつ明らかにすることで、ソ連の児童雑誌における「敵」表象のパラダイムの構築とその再生産のメカニズムの解明を試みる。その際、ユング心理学の「影」の概念を援用することで、ロシア革命後からペレストロイカ期までに刊行された児童雑誌において、「公式的」な「敵」のイメージが、各時代の戦争や文化政策を契機として、どのようにイデオロギーの再生産に関わり、それらがどのように継承されていったか考察する。
|
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ソ連時代の代表的な月刊児童雑誌『ムルズィルカ(Мурзилка)』(1924-)に焦点を当てて研究を行った。5歳から10歳までの読者を対象とした『ムルズィルカ』は、独ソ戦期(1941-45)の物資不足の中でも一度も休刊することのなかった数少ない児童雑誌であったことから、本年度は戦時中から戦後にかけて刊行されたバックナンバーを通覧し、年代ごとに特徴を整理した上で、同時代の大人向けのメディアや他の児童雑誌・新聞との比較分析を行い、『ムルズィルカ』の独自性を考察した。 本年度の研究で明らかになったことは、独ソ戦の戦況に応じた誌面の内容の変化は、全世代のメディアに共通しているものの、『ムルズィルカ』におけるヒトラーのイメージやドイツ兵に関する挿絵と言説は、当時の大人向けの雑誌やピオネールの年代向けのメディアのものとは大きく異なっており、「敵」に対する憎悪感情の煽動があまり見受けられない点である。 本年度はまた、当時の『ムルズィルカ』に掲載されたコルネイ・チュコフスキーやミハイル・ゾーシチェンコ等の独ソ戦に関連する短篇のテクストと挿絵を取り上げ、戦争でトラウマを負った児童のための娯楽雑誌としての観点から『ムルズィルカ』の実態を分析した。 以上の研究成果について、2022年12月15日から17日まで台湾の淡江大学にてオンラインで開催された国際学会「ロシアの言語学とロシア文学研究2022」において口頭発表を行った。その後、学会発表の内容に、ロシア文化の専門家からのアドバイスを反映させて加筆した論文を当学会の論集に投稿し、受理された。論集の刊行は2023年5月の予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度は、ロシア軍によるウクライナ侵攻の影響で、当初予定していたロシアの図書館での資料収集ができなかった。本研究の分析対象であるソ連の児童雑誌のうち、『ムルズィルカ』についてはインターネットでの閲覧や近年出版された児童雑誌の図版集によって研究の見通しが立っているものの、それ以外の主要な児童雑誌の多くは、オンラインでの通覧が難しく、それらの全体像を通史的に捉えることが難しい状況のまま現在に至っている。そのため、『ムルズィルカ』以外の「敵」の表象の変遷について、雑誌ごとや時代ごとに主要な特徴を整理し、対象年齢の異なる児童雑誌を比較する作業が滞っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度中にロシアへの渡航が可能になれば、現地で児童雑誌に関する資料収集を行いたいと考えているが、当分の間はインターネットで閲覧できる資料と児童雑誌の図版集を用いて、研究を進めていく予定である。 次年度は冷戦期の『ムルズィルカ』を中心的に取り上げる。その際、ソ連文化研究の知見も活かして、同時代のアニメーションや風刺画、歌謡曲といった児童雑誌以外の他のメディアにも研究対象の範囲を広げ、『ムルズィルカ』における「敵」表象の特質を多角的に考察したい。
|
Report
(3 results)
Research Products
(5 results)