ドイツにおける日本学-カール・フローレンツの日本文学研究の問題点を探る-
Project/Area Number |
20K00509
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02040:European literature-related
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
辻 朋季 明治大学, 農学部, 専任准教授 (70709089)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
Fiscal Year 2022: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
Fiscal Year 2021: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | 日本文学史 / 日本文学の翻訳 / 日独学術文化交流 / 日独比較文学 / 日本文学史記述の問題点 / ドイツの日本研究 / 国際日本研究 / カール・フローレンツの研究成果の分析 / 日本詩歌の翻訳形式をめぐって / 和歌の独訳比較 / ちりめん本 / 上田萬年とフローレンツ / 孝女白菊 / 藤原実定 / 日本文学史記述の問題性 / 近代科学とコロニアリズム / ドイツにおける日本学 / 人文科学と植民地主義 / 日本文学史記述の分析 |
Outline of Research at the Start |
ドイツの初期の日本学者カール・フローレンツの研究業績の解釈と、彼の発言の言説分析を通して、彼の日本研究活動に潜む無意識の西洋中心主義的態度を明らかにし、これを黎明期のドイツの日本研究に内在する問題として一般化して論じ得るかどうかを考察する。特に、代表的著作『日本文学史』の記述内容の分析、同時代の日本文学史記述やドイツの各国文学史記述との比較・対照を行うとともに、彼の思想的態度が鮮明に表れる契機となった二つの論争における彼の議論をディスクール分析することで、フローレンツがいかなる認識のもとで日本文学を規範化してきたか、また自らの知的権威をどのように確立してきたのかも明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、カール・フローレンツの主著『日本文学史』の精緻な読み込みと、彼が引用・訳出した日本文学作品のリスト化の作業に取り組むとともに、原作と翻訳との比較も行った。またドイツの図書館が所蔵する翻訳詩集『東方からの詩人たちの挨拶』や『孝女白菊』について、各版の内容の比較作業を終えることができた。さらに『日本文学史』の脚注における引用文献情報や、「ちりめん本」各版の裏表紙の広告欄なども手がかりに、『日本文学史』や上記二冊の「ちりめん本」の成立時期や各版の発行時期を特定する作業も行った。その主要な成果は以下の通りである。 1906年初版発行の『日本文学史』は、実際には数年早く刊行される予定であったことが、同書の異なる3つの版の比較によって明らかになった。 1894年刊行の『東方からの詩人たちの挨拶』は、同じ発行元であるAmelang社のロングセラー詩集『詩人たちの挨拶』をモデルとしており、このことも、フローレンツが日本詩歌を西洋の叙情詩の形式に改変した背景の一つと考えられる。またこれらの最終年度の成果を含め、研究期間全体において解明できた点は以下の通りである。 ・『日本文学史』における、原作の形式にも配慮した独訳は、1895年の上田萬年との翻訳論争における上田の批判を受け入れる形で生まれた。他方で、詩情を伝えるために形式改変はやむを得ないとの立場も見られ、同書の中に彼の立場のゆらぎが窺える。論争後に「ちりめん本」に追加された序言にも、上田との論争を意識する姿勢が鮮明であったが、翻訳詩集と『日本文学史』の訳詩を比較対照することで、彼がいかに上田の批判に応え、翻訳をどう改善・深化していったのか、変化のプロセスを可視化できた。 ・『日本文学史』では、ドイツの英雄叙事詩とのアナロジーも用いて軍記物を過度に評価する傾向が見られ、日清・日露の両戦間期の時代思潮が色濃く反映されている。
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Report
(4 results)
Research Products
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