Project/Area Number |
20K00618
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02060:Linguistics-related
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Research Institution | Soka University |
Principal Investigator |
石原 忠佳 創価大学, 文学部, 非常勤講師 (10232331)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2021: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2020: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | テイフィナグ文字 / アブジャド / IRCAM / サムード文字 / モロッコ / ベルベル語 / ベルベル語辞典 / ティフィナグ文字 / アラビア語方言 / ティフィナグ文字、 / ポエニ文字 / 古代リビア文字 / タマジグト語 / 北アフリカ / ベルベル語方言 |
Outline of Research at the Start |
ティフィナグ文字を併記したベルベル語辞典は、世界各国でいまだ発刊されていない。まず第一の理由は、ベルベル語の地域格差があまりにも多く、標準ベルベル語を確定してそれを文字化する作業が進んでいないこと。次に、今日までベルベル語が直面していた言語政策上の状況である。ベルベル語が教育の場に導入されたのは2003年になってからで、モロッコ王国が国家として、ティフィナグ文字を使った教育を公式に認可したのは、遅まきながら2011年の憲法改正の時点である。したがって、「話し言葉の文字化」は今日でも困難を極める作業であるが、実施しなければならない研究・調査であると認識している。
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Outline of Annual Research Achievements |
IRCAMモロッコ王立アマズィグ文化研究所図書館を拠点として、モロッコの山岳地帯を小アトラス山脈、大アトラス山 脈、アンティアトラス山脈の3地域に分割して、それぞれの地域のインフォーマントによる聞き取り調査を拠り所として、音声データベースを再確認した。 その後、音声データベースのベルベル文字化作業を推進した。フィールド・ワークで得た音声データを、ティフィナグ文字 として表出するにあたっては、標準ティフィナグ文字(IRCAM)あるいはネオ・ティフィナグ文字(INALCO)を基底モデルとしたが、インフォーマ ントの発話に破擦音が確認されたので、トアレグ系ティフィナグ文字のバリアントも「ティフィナグ文字」として組み入れた。 2024年1月~3月に実施したフィールドワークにおいて、ベルベル文字(テイフィナグ文字)の特質に関して、以下の事実が明らかとなった。①フェニキア人やローマ人の植民地が広がっていた北部沿岸地域に限定されるポエニ語やラテン語とは異なり、テイフィナグ文字で綴られた碑文(Tifinagh inscriptions)は、北アフリカのあらゆる場所に広がっていること。②テイフィナグ文字は、AC4世紀にアラビア半島に居住した古代アラビアのサムード族が使用したサムード文字のようなアブジャドの文字体系ではないため、解読と音声表記が比較的容易であること。③Tifinagh inscriptions は今日でも現存し、古代ティフィナグの文書は数万点の彫刻や絵画で発見されているため、その比較対象による再構築が可能であること。④テイフィナグ文字で綴られたテクストは、当時の人々の現実の生活を反映するもので、彼らが食べたもの、交換した品物、彼らが行った挨拶、そして彼らが共有した宗教的信念などを断片的ではあるが垣間見ることができた
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回の研究ではスペインおよびモロッコの4つの研究施設を拠点として、以下の手順にしたがって研究計画を実施した。① スペイン高等学術研究所図書館および、在モロッコスペイン教育省付属図書館に蔵書として保存された時代別写本を比較対照し、ベルベル文字の原型データを構築した。 ②「在モロッコ テトゥアンAbdelmalek Essadi大学付属レルチュンディー研究所図書館に移り、館内に保存された原本写本と照合した。それらを手がかりに、TetuanからAl-Hoceimasにいたる5つの集落で、フィールド・ワークを実施し音声資料を作成した。③ 在モロッコアルホセイマ図書館において、研究協力者である 21 世紀リーフ・ベルベル協会の Yassin Errahmouni 会長との共同作業を実施し、ベルベル語の語彙を品詞別に選定し、それらを国際音声記号(IPA)とティフナグ文字で併記する作業を行った。④ IRCAMモロッコ王立アマズィグ文化研究所図書館を拠点として、モロッコの山岳地帯を小アトラス山脈、大アトラス山脈、アンティアトラス山脈の3地域に分割して、それぞれの地域のインフォーマントによる聞き取り調査を拠り所として、音声データベースを 作成した。⓹2024年3月に開催された国際会議の席上、アラブ人とは異なるベルベル人の宗教観を、ユダヤ教、イスラーム教、キリスト教の聖典を引き合いに出して紹介した。なお今回はインドからの参加者を迎えて、ヒンドゥー教の聖典「バガヴァット・ギーター」の紹介も行った。帰国時の3月末には、スペイン高等学術研究所図書館を再度訪問し、拙著『ベルベル語小辞典』(明石書店 2023)を寄贈した。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年3月に刊行した『ベルベル語小辞典(日本語-ベルベル語)』に引き続き、『ベルベル語小辞典(ベルベル語-日本語)を編纂することにある。本辞典は第1部および第2部の二つの部分から編纂する予定であるが、第1部ではベルベル語、バスク語、アイヌ語の語彙比較を通じて、その起源がいまだに明らかになっていないこれらの少数民族の言語の特質を、言語的観点から取り上げる作業も念頭に置いている。 その理由は、ここ数年各国の研究機関から、多くの研究者がヨーロッパを中心にモロッコのアブデルマレク・エッサアディ大学図書館に結集し、ベルベル人の言語、伝統・文化、歴史について再考する研究大会を開催しているからである。 とりわけ今回の大会で私の関心を引いたのは、スペイン外務省でベルベル語の教鞭をとるChahid el-Hajami氏が、ベルベル語とバスク語の語彙的類似性を示したことである。またスペイン出身の数人の研究者が、アイヌ民族の起源をスペイン北部に居住するバスク民族との接点に関する仮説を取り上げたことは極めて印象深かった。それはとりもなおさず、「ベルベル」、「バスク」、「アイヌ」といったこれまで個別に扱われてきたテーマが、言語という側面からは一線上に並ぶ可能性を視野に入れることができるからである。
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