Project/Area Number |
20K00620
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02060:Linguistics-related
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Research Institution | Kansai Gaidai University |
Principal Investigator |
鈴木 保子 関西外国語大学, 外国語学部, 教授 (00330225)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2023: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2022: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2021: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2020: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
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Keywords | ガンダーラ語 / 同化 / 子音階層 / 中期インド・アーリア語 / 子音結合 / そり舌化 / r音転換 / r音化 / the Asokan Rock Edicts / Middle Indo-Aryan / Gandhari / Khotan Dharmapada / consonant clusters / assimilation / consonant hierarchy / metathesis / Asokan Rock Edicts / phonotactics / consonant changes / 子音変化 |
Outline of Research at the Start |
中期インド・アーリア語の同化は、単一の音変化ではなく、より小規模な複数の音現象の集積である。これら個別の音現象は古期から長期間にわたって起こっている、それぞれが一般的で自然なものである。共通して、音節の最初の子音の優勢と子音の母音との対極化による閉鎖音への変化という2つの原則が支配的であったため、一見、子音階層にもとづく同化であるかのような統一性が生じたものであり、特異性はその複合性から帰結する。中期初期のアショーカ王岩石法勅やより多くの子音結合が残っている北西部のガンダーラ語およびニヤ・プラークリット語などを中心として一次文献の精査にもとづいて論証する。
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Outline of Annual Research Achievements |
中期インド・アーリア語の同化は伝統的な分析では子音階層においてより弱い子音がより強い子音に同化するという、類型論的にも稀な音現象である。他方、実際にはより小規模な変化の集積であることが指摘されてきた。北西部の初期方言ガンダーラ語は、一部の子音結合が残存することで知られているが、このうちサンスクリット語の影響を受けていない初期(アショーカ王岩石法勅)・中期(ホータン・ダルマパダ他)のガンダーラ語文献のrを含む子音結合の発達におけるバリエーションをもとに、子音結合簡略化の過程を明らかにする。一般的な音韻的条件、具体的には語や音節内での位置・隣接する子音の調音方法や調音点など、その他形態的・語彙的・意味的な条件下でバリエーションが見られ、一般的な傾向に合致した、個々の小規模な音変化が集積して、一見、子音階層に支配された画一的な変化という様相を呈するに至ったことを示す。 また、ガンダーラ語文献には、r音転換やr音化など、rに関連する音現象が見られるが、中には音変化とは見なせないような場合も含まれる。従って、先行研究では、実際の発音を反映するものではなく、例えば一部のrCは音声的にはCrであると見做されたり、rが重子音をあらわす補助記号であると解釈されたりしてきた。ところが、r音転換や閉鎖音・摩擦音のr音化は一般的であるのみならずインド・アーリア語派でも古期から現代語にかけてさまざまな音過程が見られる。また、ガンダーラ語がかつて話されていた地域の現代語ダーディック諸語およびヌーリスターン語群のうち、カラシャ語・ワイガリ語にはそり舌母音・そり舌調和の現象が報告されており、ガンダーラ語の一見語源的な裏付けを欠くrに酷似している。従って、このようなrも、現代語と同様、鼻音のr音化や母音そり舌化などの稀な音現象によるものである可能性は排除できない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(1) Rhotic metathesis in Gandhari. Indogermanische Forshungen 2024年10月頃出版予定 (2) Development of r-clusters in Gandhari. 準備中(上記「研究実績の概要」参照)
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 中期インド・アーリア語では同化をはじめとした様々な変化により、子音結合のタイプが重子音・鼻音+閉鎖音など無標なものに限定されるようになった。先行研究ではこれらの変化は子音階層に起因するという解釈があるが、一般的な傾向に合致した、多数の独立した変化が長期間にわたって起こった結果であって、子音階層は原因ではない。ガンダーラ語に残存するrを含む子音結合の発達に見られるバリエーションを精査することにより、多数の小規模な変化が起こったことは確認できるが、これがなぜ画一的な子音階層を形成する結果になったのかを考察する。 (2) ギルナールのアショーカ王岩石法勅にrを含む子音結合が見られるのは、同時期の周辺地域の碑文ではこの子音結合が消失していることを根拠に、一般的にはサンスクリット語の影響とみなされている。ところが、より後の時期とは異なり、サンスクリット語の影響は碑文が造られた紀元前3世紀には一般的ではないうえに、ギルナールの碑文に残存するCrまたはわずかなrCは他の地域の岩石法勅との類似性が観察される。従って、ギルナール碑文に見られるrを含む子音結合は他言語の影響ではなく、より早い時期の言語特徴が公用語または行政用語に残っていたと考えるのが妥当であり、子音結合の発達過程を反映する証拠となる。
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