Project/Area Number |
20K00700
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02090:Japanese language education-related
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松村 瑞子 九州大学, 言語文化研究院, 特任研究者 (80156463)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東出 朋 長崎国際大学, 人間社会学部, 講師 (50837705)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2021: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2020: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | ポライトネス(丁寧さ) / インポライトネス(失礼さ) / ディスカーシブアプローチ / 日露対照研究 / 日露相互理解 / 談話分析 / ポライトネス / インポライトネス / ディスカーシブアップローチ / 異文化理解 / 言説的アプローチ / 異文化間コミュニケーション / 異文化理解教育 / 教材開発 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、ロシアでの日本語教育に焦点をあてた日本語(イン)ポライトネス指導教材および指導法を開発することを目的とする。ポライトネスとはコミュニケーションを円滑に進めるための社会的に適切な配慮や心配りであるが、異文化理解を促進するためには互いのポライトネス研究が不可欠であると考えられる。しかし現在のところ日露(イン)ポライトネスの指導教材および指導法も殆ど開発されていない。そこで、本研究では、日本人にとって理解の難しいロシア語(イン)ポライトネスおよびロシア人にとって理解の難しい日本語(イン)ポライトネスを収集し、その結果を基に効果的な日本語(イン)ポライトネス指導教材および指導法を開発する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本人とロシア人の相互理解に極めて有効と考えられる、日本語・ロシア語の(イン)ポライトネス(丁寧さ・失礼さ)の対照研究を行うものである。まず、日本人にとって無礼・丁寧すぎる・理解しがたいロシア語(イン)ポライトネスを含む談話例、およびロシア人にとって同様に感じられる日本語(イン)ポライトネスの談話例を収集して分析した。この分析結果を基に日本人・ロシア人に対する認識調査を開始した(令和2年度・3年度)。次に、令和4年度には、この認識調査を完成させ、その調査結果を基に、日露(イン)ポライトネスの類似点・相違点を抽出し、その認識の類似・相違に繋がる社会文化的要因を探る予定であった。しかし、周知の事情で令和4年2月以降ロシアでの調査研究が中断され、令和4年度には、日本人に対して行った調査結果および令和4年2月までに行ったロシア人に対する調査結果をもとに日露対照研究を行い、その研究成果を発表した。 研究期間を1年間延長していただき、その時点で収集できている日本人・ロシア人に対する認識調査を基に、日露(イン)ポライトネスの類似点・相違点を抽出し、その認識の類似・相違に繋がる社会文化的要因を探った。その結果を基に、テキスト『日本人とロシア人にとってのポライトネス・インポライトネス(丁寧さ・失礼さ)』を開発した。テキストの前半では本研究で行った調査結果を基に特定した日露(イン)ポライトネスの類似点・相違点に焦点をあてたタスクおよび解答例・解説を作成した。後半では、ロシアの映画、日本の小説を題材として、長い談話を見ながら、日本とロシアの社会文化慣習の中での(イン)ポライトネスとは何かを学習者自身が推論しながら理解を深めていくことができるようなタスクを作成して、解答例・解説を加えた。さらに、第3回東アジア言語文化研究会で、この教材を用いた異文化理解教育の方法について解説した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、日本人とロシア人の相互理解に極めて有効と考えられる、日本語・ロシア語の(イン)ポライトネス(丁寧さ・失礼さ)の対照研究を行うものである。令和2年度・3年度は概ね順調に研究を進めていった。日露(イン)ポライトネスの類似点・相違点を示す談話例を収集して分析した。この分析結果を基に日本人・ロシア人に対する認識調査を開始した。令和4年度には、この認識調査を終える予定であったが、周知の事情で令和4年2月以降ロシアでの調査研究が中断され、令和4年度以降は、研究の遅延を余儀なくされた。令和4年度には、日本人に対して行った調査結果および令和4年2月までに行ったロシア人に対する調査結果をもとに日露対照研究を行い、その研究成果を発表した。研究期間を1年間延長していただき、令和5年度には、できればロシアでの調査を再開する予定であったが叶わなかったため、その時点で収集できている日本人・ロシア人に対する認識調査を基に、日露(イン)ポライトネスの類似点・相違点を抽出し、その認識の類似・相違に繋がる社会文化的要因を探り、教材および指導法を開発した。ただし、現時点では調査が完全には行われていないため、国内外での研究発表を積極的に行うことはできていない。そのため、もう1年間研究期間を延長していただいて、研究自体をできるだけ完成したものにし、学会や学術誌において研究成果を十分に発信した後、終了したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、日露の相互理解を目指した(イン)ポライトネス研究であるため、日露のポライトネスと社会文化との関りをより具体的に提示することのできる研究方法をとった。Brown and Levinson (1978) はポライトネス理論として最も強い影響力をもつ研究ではあるが、Haugh(2004) が指摘するように、様々の文化の(イン)ポライトネスを同一基準で定義することは難しい。Helen Spencer-Oatey (2000) は「異なった文化はどういうコンテクストでどういう行動が適切かについて異なった慣習をもっている」と述べる。また、ポライトネスへの言説的アプローチ(Discursive Approach)では、個人と社会との関係、話し手の言語産出のみならず聞き手の言語評価、談話中での会話参加者の相互作用を考慮に入れた(イン)ポライトネス研究を提案した。本研究もこの観点から(イン)ポライトネスを分析した。 しかし、本研究での調査を行っていく中で、言説的アプローチを用いてより深い異文化理解を進めるには、(イン)ポライトネスに対するアンケートや認識結果を基にテキストを作成するだけでは十分でないということも分かった。学習者自身が自ら推論しながら理解をふかめていくことができるようなテキストおよび指導法を考えていくことが不可欠であり、それこそが言説的アプローチの強みであると考えるようになった。 どのような方法をとってそれを行うべきかを現在模索中であるが、因(2004)(2008)等で行われたマンガを用いた異文化理解教育の方法、Khadijaha and Matsumura (2020) などにみられる映画を用いた語用論技能教育の方法を基盤としながら、より深い異文化理解教育の方法を探っていくつもりである。
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