古文書学における料紙と機能・様式の有機的関係について
Project/Area Number |
20K00923
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 03010:Historical studies in general-related
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Research Institution | Musashino University |
Principal Investigator |
漆原 徹 武蔵野大学, 文学部, 教授 (20248991)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡野 友彦 皇學館大学, 文学部, 教授 (40278411)
神野 潔 東京理科大学, 理学部第一部教養学科, 教授 (40409272)
花田 卓司 帝塚山大学, 文学部, 准教授 (60584373)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,510,000 (Direct Cost: ¥2,700,000、Indirect Cost: ¥810,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | 文書料紙 / 楮紙 / 雁皮紙 / 奉書 / 杉原紙 / 強杉原紙 / 檀紙 / 引合 / 文書の料紙 / 書札礼 / 武家・公家文書 / 寺社文書 / 中世・近世文書 / 文書の機能と様式 / 楮紙と雁皮紙 / 奉書紙と鳥の子紙 / 料紙の填料 / 下文 / 将軍家御内書 |
Outline of Research at the Start |
本研究は「様式論」を中心に発達してきた伝統的古文書学と、近年急速に発展してきた「形態論」「料紙論」の新たな古文書学を連結して新たな古文書学の体系化を目指すものである。
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Outline of Annual Research Achievements |
令和5年1月に重要文化財指定の「熊谷家文書」、同年11月には益田市教育委員会の全面的協力のもとに、同地域の中近世文書の調査を実施することができた。「熊谷家文書」の調査では、従来から諸説ある熊谷直実置文とその花押について、使用されている料紙を確認した限り当該期の文書料紙と矛盾しないことは確認できた。一方で記載内容に検討すべき点がある文書も散見し、それらの料紙についても今後検討の余地があるのではないかと見られる。総じて江戸時代中期に成巻されたことが知られている「熊谷家文書」は、文書の料紙の状態が非常に良好で、その料紙を顕微鏡撮影を行ったが、うぶな状態の文書と比較検討する上で遜色ない状態であることが判明した。また中世武家文書の料紙と様式の関係性について、「熊谷家文書」調査の結果からも、他の武家文書調査のデータ分析結果と全く矛盾なくほぼ明らかにすることができたとの結論を得た。また以前成巻された直後の「賀茂別雷宮神社文書」の調査をした際、初めて成巻された文書でも料紙の状態を観察できることを明らかにしたが、その後「熊谷家文書」のように、前近代の成巻でも同様の良好な状態で料紙を観察できる中世文書が存在することが明らかになった点も貴重な研究成果と思われる。また島根県益田市域に散在する中近世文書については、うぶなもの、成巻されたもの、裏打紙が施されたものなどその存在形態は多様であったが、これら益田市域に伝存する中世文書に関しては、在地で生産された紙である可能性が高いとの知見を得ることができた。益田では、鳥の子紙を利用した文書が数点確認されたが、使用方法が切紙としてではなく、高級紙である鳥の子紙を竪紙で使用している例もあり、他の生産地からの購入とは思えないことを示唆するものと考えた。近世に起源をもつといわれる石州和紙とは異なる中世文書の料紙生産が石見で行われていた可能性は高いと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
感染症拡大とそれに伴う研究調査対象の古文書所蔵者である個人及び公共機関などの規制措置により、令和2年~4年での調査を事実上休止せざるを得なかったことが大きな理由である。 また新たな調査の実施ができなかったことに加え、研究分担者相互の対面の研究会も制限を受け、オンライン会議を実施したにとどまるが、古文書の実物を研究分担者とともに対面で手に取って確認することが重要な研究上の前提となっているため、研究活動そのものが停滞してことはやむを得ないことであった。 その後規制緩和に伴い調査再開可能となったが、調査場所、人数制限などの制限規制は継続しており、所蔵機関・個人の閲覧調査の許可を得られる日時が限られ、研究分担者全員との日程調整を取ることが難しかったことが調査予定の遅延を招いた。しかしながら、令和5年1月の「熊谷家文書」調査と調査延長許可を得た同年11月の島根県益田市域の中近世文書の調査を実施することが実現し、データの蓄積と新知見を得ることができた。また延期期間の今年度にも広島県尾道市浄土寺所蔵文書他調査実施予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本科研で調査を実施した「熊谷家文書」と「益田家文書」を中心とした益田市域伝来の中近世文書のデータを分析して得られた事実を、従来蓄積してきた調査データと比較検討しながら、中世文書と近世文書の関係性を総合的に明らかにすることによって課題のテーマに迫りたいと考えている。少なくとも中世に関しては、武家文書の様式と料紙の関係性はほぼ明確化することができたが、公家文書と寺社文書及びその他の地下文書等の様式と料紙の関係性はいまだ武家文書ほど明確化できていない点も明らかにしていかなくてはならない課題である。また現在の古文書学では、中世文書の様式が近世文書の様式へいかなる関係性を以て継続展開したのか明らかになっていない現状である。この中で、中近世移行期の文書料紙の用法の変化を確認することによって、一定程度の関係性を見出すことが可能ではないかとの推測できると考える。少なくとも中世から近世への移行期において、豊臣政権樹立以降の武家文書の様式変化が公家文書、寺社文書と同じように転換したとは考えにくいが、料紙の用法の変化から、料紙と文書様式の関係性が中世と近世でどの程度連続し、また変化を見せるのか追求していくことが可能であると考えている。この見通しに従って、武家文書を基準としながら、公家文書や寺社文書などの料紙についても、その変化を確認しつつ、料紙の生産そのものの変化という現象が、制度的変化に基づくのか生産条件の変化が文書料紙の使用の変化をもたらしたのかも考えてみたい。地域的時代的差異が大きいものであることは容易に推定されるので、全体像を明らかにすることは限られた時間と労力では困難が伴うが、最終的には、文書料紙と様式の関係性を通じて多様な事象の全体像を掌握することにつとめることによって研究課題への完成に迫りたいと考えている。
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Report
(4 results)
Research Products
(27 results)
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