Project/Area Number |
20K01034
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 03040:History of Europe and America-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
土屋 和代 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (60555621)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
Fiscal Year 2024: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
Fiscal Year 2023: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2021: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2020: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
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Keywords | 人種・エスニシティ / ロスアンジェルス / アメリカ合衆国 / 都市 / ジェンダー / インターセクショナリティ / 社会史 / 歴史学 / 階級 / 社会と文化 |
Outline of Research at the Start |
世界的にみた排外主義の高まりのなかで、多様な経験、思想を有する人びとがいかに「共生」していくのかは現代社会が抱える大きな課題の一つである。本研究は「多人種社会アメリカ」を象徴する都市ロスアンジェルス(以下LA)に焦点をあて、「黒人ゲットー」として知られてきたサウスLAという都市空間を形作った人びとの歴史を紐解くことで、人びとがどのように差別や不平等の過去に向き合い、新たな関係性を築いてきたのかを探る。アフリカ系アメリカ人の歴史であるとともに、黒人、ラティーノ、イタリア系といった集団のはざまに立ち、LAという〈場〉を形作った人びとの歴史―集団「間」の歴史を掘り起こすことを目的とする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度はまず ①貧窮状態にあるシングルの親とその子どもたちへの公的扶助プログラムである要扶養児童家族扶助の受給者が、1960年代のアメリカでいかに生存権と保証所得の実現をもとめて闘ったのかを検討した(“The Other America” and the Quest for Economic Justice")。 ②人種平等とジェンダーの公正さを分かち難いものとして概念化し、黒人と女性の権利のために闘った弁護士・法学者のパウリ・マリーがなぜ晩年聖職者を目指したのかを、ハーバード大学のラドクリフ研究所に保管されているパウリ・マリーの個人文書やマリーの自伝、同時代文献などをもとに検討した。(「黒人神学とフェミニスト神学をつなぐ・ひらく――パウリ・マリーの思想と運動」) ③インターセクショナリティという新しい分析枠組みを用いることで、様々な地域の歴史、社会、文化のいかなる諸相が浮き彫りとなるのかを、具体的な事例をもとに学際的に検討したシンポジウムを企画した(第31回東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻主催公開シンポジウム)。また、シンポジウムを発展させた論集の編纂を行なった。 ④リプロダクティヴ・ジャスティス(性と生殖をめぐる正義、RJ)という、インターセクショナリティの視点から「性と生殖に関する健康と権利」をとらえ直した新しい思想が一体何を意味するのかを、RJを目指す運動を長年にわたり牽引してきたロレッタ・J・ロスの言説を通して検討した。(「ロレッタ・J・ロスとリプロダクティヴ・ジャスティス」) ⑤チカーナアーティスト、教育者、活動家のジュディス・バカが世界最長の壁画「グレート・ウォール・オブ・ロスアンジェルス」を通してどのように「民衆」のためのアートを生み出したのかを検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度も史料や文献を取り寄せるなどして、研究を進めた。また、次年度初頭に予定されているロスアンジェルスでの研究調査、史料収集に向けて、下調べを行なった。「研究実績の概要」で示したもの以外に、クィア的視点からアメリカ史をとらえ直し、人種やジェンダー・セクシュアリティを歴史叙述の不可欠な構成要素に位置づけたテキストを共同翻訳した(マイケル・ブロンスキー著、兼子歩・坂下史子・髙内悠貴・土屋和代訳『クィアなアメリカ史―再解釈のアメリカ史・2』)。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度はまず、4月にロスアンジェルスにて研究調査、史料収集を行なう予定である。具体的には次の作業を行なう。 ①ロスアンジェルス・カウンティ美術館(LACMA)で開催中の、ジュディス・バカの「グレート・ウォール・オブ・ロスアンジェルス」に関する展示(1960年代を描いた壁画)について現地調査を行なう。また、サンフェルナンド・ヴァレーにある「グレート・ウォール・オブ・ロスアンジェルス」での調査も実施する。②1965年のワッツ蜂起を記念する壁画など、バカが制作に携わった、あるいは制作を支援した壁画の調査を行なう。③「南カリフォルニア社会研究・調査図書館(SCL)」について、現地調査を行ない、史料を収集する。⑤カリフォルニア大学ロスアンジェルス校、および南カリフォルニア大学図書館でロスアンジェルス史に関する文献と新聞記事を入手する。
つぎに、収集した史料を解析し、関連文献を読み進めながら、本プロジェクトのとりまとめを行なう。 ①ロスアンジェルスでの現地調査と収集した史料の解析をもとに、ジュディス・バカの「グレート・ウォール・オブ・ロスアンジェルス」についての論考を完成させる。②黒人史、労働史、移民史、女性解放運動史に関する幅広い文献と文書史料を保管する「南カリフォルニア社会研究・調査図書館(SCL)」を創設したユダヤ系の活動家エミール・フリードの思想と運動を、フリードの個人文書やSCLの文書をもとに分析する。フリードが赤狩りの時代にどのように言論の自由の弾圧と闘ったのか、なぜ社会運動に関係する史料を収集し、サウス・セントラルの地に図書館を築くに至ったのか、フリードの思想がどのように継承され、変遷を遂げたのかを考察する。③引き続き、ロスアンジェルス史、都市研究、大量投獄/収監社会に関する研究書、およびインターセクショナリティに関する文献を読み進める。
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