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古代ローマのアリメンタ制度(子弟養育制度)に関する研究

Research Project

Project/Area Number 20K01050
Research Category

Grant-in-Aid for Scientific Research (C)

Allocation TypeMulti-year Fund
Section一般
Review Section Basic Section 03040:History of Europe and America-related
Research InstitutionBeppu University

Principal Investigator

飯坂 晃治  別府大学, 文学部, 教授 (30455604)

Project Period (FY) 2020-04-01 – 2025-03-31
Project Status Granted (Fiscal Year 2023)
Budget Amount *help
¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,000,000、Indirect Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2023: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2022: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2021: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2020: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Keywords古代ローマ / イタリア / 都市 / 官僚制 / 救貧制度 / ラテン碑文 / エヴェルジェティズム
Outline of Research at the Start

本研究は,古代ローマのアリメンタ制度に焦点をあて,ローマ帝国における皇帝権力と地方都市の関係について考察する。アリメンタ制度とは,皇帝や都市エリートなどの富裕者が地方都市において基金を設定して土地所有者に資金を貸与し,その利子収入で少年・少女に義捐金を給付する養育制度である。従来の研究では,地方都市に対する皇帝権力の管理能力は大きくなかったと評価されている。これに対し本研究は,後1世紀末以降,イタリアにおいて皇帝の出資により実施された公的アリメンタ制度の政治的・社会的背景と目的について分析し,皇帝権力がイタリア都市に対して影響力を及ぼしていたことを明らかにしようとするものである。

Outline of Annual Research Achievements

2023年度は、アリメンタ制度(子弟養育制度)の目的に関する考察をおこなった。この目的に関する議論は、これまでのアリメンタ研究においても追求され続けてきた問題であり、本研究の核心をなすテーマでもある。現段階では、市民権をもたない子供への金銭の支給はおこなわれていなかったことから、アリメンタ制度の目的を福祉とすることはできないように考えている。アリメンタ制度は、イタリアの50以上の都市で実施されたことが確認できるが、現存する史料が実施規模をどの程度反映しているかを判断するのは難しいものの、イタリア内のすべての都市でおこなわれたとは考えにくい。その際、アリメンタ制度を実施する都市がどのような基準で選ばれたのかを史料から探ることは難しい。都市の選定に関しては、その地方の社会経済的状況のみならず、都市が持つ人的資源(帝国レベルの有力者)の影響力などを考慮に入れる必要もある。そのように考えると、アリメンタ制度の実施には、都市の側のイニシアティヴも重要な契機となったのではないかと考えられる。
昨年度までの研究で明らかにしたように、従来の研究はアリメンタ制度を、人口増加策(とりわけ将来に兵士となる男児の育成)や、低利の融資をつうじた農業支援策と理解してきた。これに対して近年の研究は、アリメンタ制度の実施を、皇帝が寛大で慈悲深い市民の「父」というイメージを発信するためのプロパガンダとして見る傾向が強い。しかしながら、上に述べた都市の側のイニシアティヴという点を考慮に入れるなら、同制度の目的は、基金を設定する皇帝政府のレベルのみならず、アリメンタ制度の実施を誘致した都市レベルのものにも着目する必要が出てくるだろう。そうした都市レベルのアリメンタ制度の目的に関しては今後さらに研究を進める必要があるが、そのひとつとして皇帝権力との関係強化が挙げられるであろう。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

4: Progress in research has been delayed.

Reason

本研究はこれまで、公的アリメンタ制度が、それまでイタリア都市の維持・再生産を担っていたエリートの流出という都市社会の変容を背景に、サブエリートに都市社会への貢献を促す目的で実施されたのではないか、という仮説を立てて、同制度の分析をおこなおうとするものであるが、現時点でこの仮説の検証にはいたっていない。
本研究はこのほかにも、公的アリメンタ制度と私的アリメンタ制度の関係、公的アリメンタ制度の法的側面、そして、公的アリメンタ制度の運用を管理する行政機構を研究課題としているが、このうち、進捗をみているのは最後の行政機構に関する研究である。この点に関して本研究は、イタリアの街道網の維持管理に責任を負っていた街道監督官(curator viarum)が、その行政活動の一環としてアリメンタ制度の管理にもあたっていたことを指摘し、その理由として、 (少なくとも2世紀前半までは)イタリアで地方行政に関わる帝国官僚が街道監督官のみであったこと、そして、街道監督官は、土地(公有地および私有地)に関わる業務が多く、土地を担保とした貸付により運営されていたアリメンタ制度の監督者として適任であったことを明らかにしている。

Strategy for Future Research Activity

2024年度は、公的アリメンタ制度に関して、その目的に関する新たな理解を提示する必要がある。そのためには、公的アリメンタ制度に関する主要な史料であるウェレイア碑文とリグレス・バエビアニ碑文をあらためて精査し、基金創設者であるトラヤヌス帝のプロパガンダや、五賢帝時代のイタリアの統治行政、アリメンタ制度の実施を誘致した都市エリートの動機、アリメンタ基金から貸与を受けて利子を支払った参加者、そしてアリメンタ基金から手当の給付を受けた子どもとその家族などに関する分析を早急に進めることで、公的アリメンタ制度の全体像を明らかにする必要がある。
またこれらの課題の研究が難航する場合、本研究が進捗をみている公的アリメンタの行政機構に関してさらに、元老院議員が就任したプラエフェクトゥス職、騎士身分が就任したプロクラトル職、都市エリートが就任したクアエストル職に関する分析を進めることが次善の策と考えられる。

Report

(4 results)
  • 2023 Research-status Report
  • 2022 Research-status Report
  • 2021 Research-status Report
  • 2020 Research-status Report
  • Research Products

    (8 results)

All 2024 2023 2022 2020 Other

All Int'l Joint Research (2 results) Journal Article (5 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (1 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results)

  • [Int'l Joint Research] モンペリエ第三大学(ポール・ヴァレリー大学)(フランス)

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    • Author(s)
      飯坂晃治
    • Journal Title

      西洋古典学研究

      Volume: 71 Pages: 116-119

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  • [Journal Article] ローマ帝国における街道と統治行政──街道監督官(curator viarum)によるアリメンタ制度の管理を中心に──2023

    • Author(s)
      飯坂 晃治
    • Journal Title

      聖域・街道・地割 V── 古代ローマと日本をつなぐ ──

      Volume: 5 Pages: 49-58

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      Koji IISAKA
    • Journal Title

      Le Sanctuaire, la Voie et le Cadastre V. Comparaison entre le Japon et l’Antiquite romaine

      Volume: 5 Pages: 59-65

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    • Author(s)
      飯坂晃治
    • Journal Title

      史学雑誌

      Volume: 131-1 Pages: 118-119

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    • Author(s)
      飯坂晃治
    • Journal Title

      歴史と地理 世界史の研究

      Volume: 263 Pages: 50-53

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  • [Presentation] ローマ帝国における街道と統治行政 ──街道監督官(curator viarum)によるアリメンタ制度の管理を中心に──2022

    • Author(s)
      飯坂晃治
    • Organizer
      オンライン国際シンポジウム「宇佐とローマをつなぐ 古代の街道の比較研究」(別府大学・モンペリエ第三大学)
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    • Int'l Joint Research

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Published: 2020-04-28   Modified: 2024-12-25  

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