総力戦と女子職業教育―第一次世界大戦期ロシアの家族・教育とジェンダー
Project/Area Number |
20K01061
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 03040:History of Europe and America-related
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
畠山 禎 北里大学, 一般教育部, 教授 (60400438)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,770,000 (Direct Cost: ¥2,900,000、Indirect Cost: ¥870,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2021: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | ロシア帝国 / 「大改革」 / 「女性問題」 / 女性史 / ジェンダー史 / 職業教育 / 農業教育 / 家政教育 / 第一次世界大戦 / ジェンダー / 教育 / ロシア技術協会 / 家族 |
Outline of Research at the Start |
本研究は19世紀末から第一次世界大戦までのロシアを対象に、家族・教育領域におけるジェンダー規範の変遷を追跡することを目的とする。ロシア帝国政府やロシア二月革命後に成立した臨時政府の女子職業教育政策、民間団体の女子職業教育運動に関する史料をロシアやウクライナの図書館や古文書館で調査し、教育事業の構想・実践において語られた言説を分析してジェンダー規範を読み取る。女子職業教育運動がロシア帝国の身分・社会階層的、エスニシティ的多様性を反映していたことにも配慮する。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は2022年度に引き続き、「女子農業教育運動とジェンダー」を研究課題とした。帝政期ロシア女性史の第一人者であるウォロベックは、主要国の中で初めてロシアにおいて女性が参政権を獲得した事情として、帝政期に女性がさまざまな権利を得て公的領域において活動していたことに注目している。ウォロベックは、女性が果たした役割や達成したもの、そしてそれらがジェンダーに及ぼした影響を解明するための作業を継続していくべきだと主張する。そのような議論をふまえて、本研究は女子農業教育運動を検証した。考察によって、女子農業教育運動の動向、教育運動への女性の参加状況、女子農業教育における男性活動家と女性活動家の間の着眼点や主張の違い、女子職業教育運動とフェミニズム運動の関係性などが明らかになった。 ロシアの女子農業教育運動は1880年代に本格的に始動した。その担い手だった男性知識人は、農業の不振を打開すべく、女子農業学校を設立し、正しい知識を持ち男性農場主の補助者になることができる妻を、教養があり農業に愛着を持った知識人を育てることのできる母親を育成しようとした。1890~1900年代における経済の急成長、農村や辺境の統治・開発の進展を背景に、女子農業教育事業は軌道に乗る。それが学校の卒業生に男性農場主の妻となる道だけでなく、農業専門職に就く道も切り開くことになった。 1890~1900年代には、女子農業教育運動に女性活動家が参加するようになる。彼女たちが独自の視点から女子農業教育論を展開することで、女子農業教育の目的や内容も多様化した。女性活動家の主張の中にはフェミニズムの主張と共鳴するものもあり、彼女たちは女子農業教育運動とフェミニズムを接合する役割を果たしていた。女子教育運動の変容とフェミニズムへの接近は、1900年代のロシアでフェミニズムが急速に活性化した一因として考慮すべきである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、ロシアやウクライナの図書館や古文書館でロシア帝国政府やロシア二月革命後の臨時政府による女子職業教育政策、民間団体の女子職業教育運動に関する史料を調査し、教育事業の構想・実践において語られた言説からジェンダー規範を析出することをめざすものである。第一次世界大戦期については先行研究が少なく、ロシアやウクライナの図書館や古文書館での文献調査が不可欠である。しかし、新型コロナの感染拡大、それに続くロシアによるウクライナ侵攻の開始により、ロシアやウクライナの研究機関(ロシア国立歴史古文書館、ロシア国民図書館など)で文献調査が実施できない状態となった。そこで、本研究が本来、検討の対象とする時代よりも前の時代(19世紀後半~20世紀初頭)については科研費での研究開始前にロシアやフィンランドで史料を調査・収集していたことから、19世紀後半~20世紀初頭を中心に研究を実施することにした。 2022年度および23年度は、女性史・ジェンダー史の観点から女子農業教育振興団体の教育事業を特徴づけるとともに、女子農業教育活動家の著作を読み解いてその思想を浮かび上がらせることを試みた。研究の結果、19世紀後半~20世紀初頭における教育運動の動向、教育運動への女性の参加状況、女子農業教育における男性活動家と女性活動家の間の着眼点や主張の違い、女子職業教育運動と同時代のフェミニズム運動との関係性などが明らかになった。 しかし、2023年度内に研究結果を論文にまとめることができなかったこと、本来の2023年度課題に着手できなかったことから、2023年度までの進捗状況を「やや遅れている」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」でも述べたように、2024年度は女子職業教育運動についての研究結果を論文にまとめることをめざす。 これと並行して、当初計画の2023年度課題「ユダヤ人団体の女子職業教育運動」に取り組む。19世紀末のロシアでは、急速な経済成長と社会変動、政治の不安定化がユダヤ人の迫害(ポグロム)を暴発させ、ユダヤ人の大規模な国外移住を引き起こした。ユダヤ人団体は、ロシアにとどまることを選択した手工業者などの生存を確保する策の一つとして、男女の職業教育を見いだした。帝政末ロシアでユダヤ人がどのような立場に置かれ、ユダヤ人団体がどのような職業教育事業を計画・実施したのか。職業教育の目的・内容はジェンダーによりどのような違いがあったのかなどを明らかにしたい。 なお、フィンランド共和国ヘルシンキ(フィンランド国立図書館)でユダヤ人職業教育運動に関する文献調査を実施する予定である。
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Report
(4 results)
Research Products
(9 results)