近現代スイスと子どもの強制保護の史的考察ー社会福祉における子ども観
Project/Area Number |
20K01069
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 03040:History of Europe and America-related
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
穐山 洋子 同志社大学, グローバル地域文化学部, 准教授 (10594236)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
Fiscal Year 2024: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
Fiscal Year 2023: ¥130,000 (Direct Cost: ¥100,000、Indirect Cost: ¥30,000)
Fiscal Year 2022: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2021: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2020: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
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Keywords | スイス / 青少年福祉財団 / 施設児童 / 里子 / C.A.ロースリ / 親子分離 / 奉公児童 / C.A. ロースリ / スイス社会 / 社会福祉 / 福祉的強制措置 / 人権意識 / 子ども観 / C.A. ロースリ / 青少年福祉 / イェーニッシェ / 移動型民族 / 負の歴史 / 子どもの強制保護 / 子どもの救済 |
Outline of Research at the Start |
19世後半から20世紀のスイスでは、多くの子どもが福祉政策の一環として実親から強制的に保護され、施設や里親のもとで養育された。先行研究では、子どもの強制保護の個別の背景と要因(貧困、不完全な家族、犯罪・非行など)が考察されているが、その手段が「なぜ子どもの強制保護」であったのかは示されていない。この解明には、近現代スイスの子ども観、および保護する側がどのような子ども観で、私的領域である家族に介入したのかを考察することが不可欠である。本研究では、子どもの強制保護という概念で括られる様々な事例の比較を通して、近現代スイスの社会福祉に通底する子ども観とその変遷を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
スイスでは20世紀後半まで、貧困問題の解決や社会秩序の維持のために子どもや青少年の強制保護(里子、奉公、施設収容)が広く行われていた。本研究は、特に自治体や関連組織の家庭への介入を容易にした1912年の民法典制定以降から戦間期に着目して、その背景を子ども観の観点から考察することを目的にしている。その際、スイス全体の青少年福祉政策や事業を総括し、相互の協力関係を構築するとともに資金援助を行っている「青少年のために(PJ)」(1912年設立)を中心に考察している。 2023年度は2022年度に考察した子どもの施設収容と施設での処遇を包括的に批判した作家C.A.ロースリの主張に対するPJの反応を中心に考察を行った。ロースリは『施設生活』(1924年)において、施設は支配と被支配との関係から成立し、外部との接触が全くない孤立した存在であると指摘し、そのような環境で育った子どもは社会に適合することが難しくなると主張し、まずは処遇改善、そして最終的には施設廃止を求めた。これに対しPJおよびPJと協力関係にある施設管理者や自治体担当者からは、子どもや青少年の養育にとって家庭が一番望ましいことは共通認識としてあるものの、里親不足、非行青少年や犯罪的な青少年、身体・精神障害を持つ青少年にとって施設は不可欠であるという認識が示され、施設を維持することが確認されていたことが明らかになった。この研究結果について、「20世紀初頭スイスにおける青少年福祉施設をめぐる議論」というタイトルで報告を行った。 また、2023年度の現地調査(8月~9月)では、PJの年次報告書と機関紙(月刊)を中心に資料調査を行った。現在、特に戦間期を中心に①PJの子どもや青少年を家庭外で養育(里親、施設)することにどのような考えや理念を持っていたか、②PJがどのような子ども観をもってそれらの事業に取り組んでいたのかを考察している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究開始から2年にわたり新型コロナウィルスの感染拡大により、本研究の根幹をなすスイスの文書館および国立図書館での資料調査ができなかったため、最初の研究計画からは遅れている。当初2年半は主に二次文献とオンラインで入手可能な資料を基に、①子どもの強制保護という過去に対するスイス政府および社会の取り組みと②ロースリの親子分離を余儀なくされた子どもに対する考えに関する研究を進めてきた。①の研究成果は2022年度に論文として発表、②に関しては2023年度に口頭発表し、2024年度内に論文で公表する予定である。 当初、貧民教育協会などの青少年福祉に関連する諸団体も考察の対象とする予定であったが、調査ができなかったことによる時間と史資料の制約のため、対象をPJに絞ることで研究成果を期限内にあげることが可能になると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度にロースリの子どもや青少年の施設収容および施設生活に対する批判について論文を執筆予定であったが、2022年度および2023年度に入手した史料にロースリの批判に対するPJの反論が見つかったため、それを含めて考察した論文を2024年度に執筆予定である(本内容は2023年度に口頭発表を行っている) 2023年度に引き続き、2024年度もPJが子どもや青少年を家庭外で養育することにどのような考えや理念を持っていたのか、PJがどのような子ども観をもってそれらの事業に取り組んでいたのかを考察する。それに加えて、PJの発行する切手やポストカードあるいは月刊誌で表象される子どもや青少年を分析することで、PJの子ども観についても考察する。 2022年度と2023年度の現地調査で収集した史資料により、PJが「困窮した、苦境にある子ども」の救済という事業を通じて、対象の子どもを短期的に保護していたことが分かった。この事業は第一次世界大戦という危機的な状況から始められ、その後、恒常的な活動となるが、なぜ恒常的な事業となったのか、この背景についても明らかにしたい。 また、2024年度の現地調査では、未収集である1933年から1939年、可能であればそれ以降のPJの資・史料を調査する予定である。
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Report
(4 results)
Research Products
(9 results)