Project/Area Number |
20K01198
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 04030:Cultural anthropology and folklore-related
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
中島 成久 法政大学, その他部局等, 名誉教授 (80117184)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,000,000、Indirect Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2022: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | 先住民族 / オランリンバ / 狩猟採集民 / 共有地権 / 新型コロナ / TORA / アブラヤシ農園 / KTP / 土地紛争 / アブラヤシ農園開発 / 資源利用 / 熱帯林 / 委託林 / 産業造林 / 土地権 / インドネシア / 社会的共通資本 / コモンズ / 開発 / オラン・リンバ / 狩猟採集民族 |
Outline of Research at the Start |
インドネシアは「先住民族に権利に関する国連宣言」を承認したが、国内法ではIndigenous Peopleに対応する訳語はない。インドネシアの国内法では植民地時代のMasyarakat Hukum Adat(慣習法民族)が用いられているが、1998年の改革時代以降はきわめて小規模なコミュニティに限定的にしか認められていない。これに対してNGO関係者はMasyarakat Adat(先住民族慣習法社会)という用語を用いているが、スハルトの開発時代に不当に土地を奪われた人々という意味が強く、その主要な担い手は農耕民であり、狩猟採集民族は力を持っていない。本研究ではこの矛盾を解消する道を探る。
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Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナの流行により、インドネシア現地でのフィールドワークは昨年度も実施できなかった。フィールドワークの代わりに、これまでの研究成果と現地に関する新たな知見を加えた査読付き論文を2024年3月英文で執筆した。法政大学比較経済研究所の英文研究誌である。 論文名:Ways to Conserve the Land Title of the Orang Rimba, Hunter-Gatherers of Jambi,Indonesia,Journal of International Economic Studies, The Institute of Comparative Economic Studies, Hosei University, No.38, pp.47-61. この論文は、学術振興会の出版助成基金を得て出版された、拙著『アブラヤシ農園開発と土地紛争――インドネシア、スマトラ島のフィールドワークから――』(2021年、全346ページ、法政大学出版局)の第3章「狩猟採集民族オラン・リンバの土地権――巨大アブラヤシ農園企業への抵抗と生存戦略」を基にしている。英文論文の文字数制限があり、内容を大幅に圧縮した。また、英文論文用に議論の展開を再構成した。 さらに、この論文執筆に際して、インドネシア側カウンターパートのWARSI(インドネシア環境情報フォーラム)の元ディレクターであるルディ・シャフ氏に英文草稿をチェックしていただき、不正確な表現を修正した。また新型コロナ禍のオラン・リンバ社会の現状に関する情報を補足していただいた。 なお、拙著に関する書評が「東南アジア研究」62巻2号(2024年2月)に掲載されたことを補足的に報告しておく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
英文論文執筆に際して、現地カウンターパートのご協力を得て、新型コロナ禍のオラン・リンバ社会の現状について詳しく知ることができた。 新型コロナ流行の際、オラン・リンバ社会では、得体のしれない流行病への伝統的な対処法が出現した。「ベササンディンゴン」(Besasandingon)というもので、一切の生産活動をやめて、ジャングルの中に逃避し、お互いの接触を極端に避けることである。だが、その結果彼らは食糧不足に陥り、アブラヤシ農園で落下したアブラヤシの実を拾い、それを売ることで生活費を稼ぐことが増えて、従来にも増して農園側との紛争が増えた。そのために、政府は彼らに食料を提供し、医療支援を行なった。 インドネシア政府はこれまでオラン・リンバをインドネシア国民として認知せず、国民に常時携行を義務化していた住民証(KTP)をオラン・リンバには発給してこなかった。しかし、こうした非常事態に対応するために、その方針を変更し、宗教欄に政府公認の6宗教以外に「伝統的な宗教」として登録することを認めた。 しかしながら、ジョコ・ウィドド政権の目玉政策の一つである「農地改革のための土地」(TORA)政策は、SAD(奥地の民)の中でもすでに長く定住生活を送り、水田耕作に従事している集団に適用されたが、アブラヤシ農園開発で奪われた土地の返還を要求しているオラン・リンバには適用されず、今後の課題として残っていることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間を再延長した今年度は、先の英文論文の内容を広く一般に伝える活動を行なう。この研究費を得て最初の1年間に、ホームページを開設して研究成果の発信に努めてきた。過去数千件のPVがある。そうした努力の一環として、最終年度に学会発表を計画している。 2024年11月に慶応大学で開催予定のインドネシア懇話会(KAPAL)の大会で、研究発表を行なう予定である。テーマとして、「インドネシア、ジャンビ州のPT SALアブラヤシ農園周辺部に住むオラン・リンバの土地をめぐる現状」を考えている。日本語による発表であるが、発表に備えて、現地の情報をアップデートする。 更なる文献研究を追加するが、この研究発表に向けて、インドネシア側カウンターパートであるWARSI(インドネシア環境情報フォーラム)に先の英文論文へのコメントを依頼し、補足的な情報の提示をお願いする。期待される議論の流れとしては、第一に、住民証(KTP)が付与された後のオラン・リンバ社会の生活の変化、第二にTORA(農地改革のための土地)政策がオラン・リンバの土地返還運動に適用されるための要件は何か、ということである。本来ならば現地でのフィールドワークを基に自分の手で情報を収集するべきではあるが、残された研究費の範囲内で可能な研究活動を行なう。 こうした活動を基にして、インドネシア研究懇話会(KAPAL)の機関誌(インターネット版)に研究発表の要約を執筆する。
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