Project/Area Number |
20K01201
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 04030:Cultural anthropology and folklore-related
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
中嶋 奈津子 佛教大学, 総合研究所, 特別研究員 (50772555)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
Fiscal Year 2022: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2021: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2020: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | 早池峰神楽 / 大償神楽 / 担い手 / 継承 / 岳神楽 / 弟子神楽 / 師弟関係 / 継承と伝播 / 早池峰山信仰 / 獅子頭権現 / 神楽の継承 / 神楽の伝播 |
Outline of Research at the Start |
近年、国内では中断せざるおえない民俗芸能が後を絶たず、その対策は急務である。これについて早池峰神楽(岩手県花巻市大迫に伝承される岳神楽と大償神楽の総称)をモデルに、いかにして時代を超えて神楽の継承と伝播をなすことができたのか、資料とフィールドワークを通して解明し、民俗芸能を維持するための条件等新たな方向性を示す。それにはまず、学術的にも「早池峰神楽」として一括りに認識される岳と大償の神楽について、本質の違いについての解明が必要である。また本研究により「担い手と継承のメカニズムに着目することで、芸能の起源を推察する」という新たな視点を得ることで、従来の神楽研究に一つの方向性を示すことが出来る。
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Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度は、早池峰大償神楽(岩手県花巻市大迫)が長期間に渡り継続できた理由を明らかにするために、「神楽の担い手と地域性」に着目した調査・研究を実施した。大償神楽は神楽開始から500年以上経過することが伝えられるが、その担い手についてはこれまで明確にされていなかった。そこで、江戸時代末期から近現代における神楽の担い手について、山陰文書や佐々木家文書などの資料の調査や、地域住民に対する聞き取り調査を実施し、①担い手の変遷 ②担い手の家同士の関係性 ③居住地域の特色などを含めて分析した。結果、担い手の変遷については、江戸時代から明治時代までは大償三社大権現別当佐々木家の血族の家と、早池峰山の最初の里宮である田中明神別当山陰家の弟子により神楽が担われていたことが明らかになった。また、後に佐々木家の分家や大償集落の決まった家筋の人々により神楽が担われるようになるが、近現代では血族以外の担い手が増えていくという、その変遷を明らかにした。加えて、近年、大迫の地域を超えて複数の若者が神楽衆として参加する、あるいは県を超えての宣伝・アピールなど、新たな試みを展開していて、後継者の獲得に努力しており、神楽の継承における次の段階を迎えていることがわかった。これらのことを踏まえて、これまでの担い手はもちろん、「今後、民俗芸能が誰により,どのように継承されるのか」について考察することは、今後の民俗芸能の維持と継承を考える上で重要であることを報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度前半は、まだコロナ禍の影響を受けていたことにより、聞き取り調査の主対象者である高齢者に対する調査が滞っていたために調査に遅れが生じていた。後半より少しずつ調査を再開することが出来るようになり、大償神楽の地域内での確立の過程と伝播状況については、これまでの調査の蓄積と昨年末以降の調査によりある程度研究を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の課題としては、① 神楽の担い手と地域性の詳細調査(昨年からの継続課題として) ②関連する周辺の神楽の調査 ③これまで神楽の継続を可能とした要因の明確化 ④継承における課題の抽出および、継承者育成における今後の展開 の3点について研究を進めていく。 ①と②については、引き続き大償集落の佐々木家(大償神社禰宜)を中心とした集落内の神楽の家筋の人々について、残された資料の屋号や聞き取り調査などから特定していく。加えて、大償集落以外で大償の神楽に関わる人々の居住地域を確認するとともに、「どのような関係性から大償神楽に関わっていたのか」について早池峰山周辺地域の信仰圏を踏まえながら検討していく。また未調査である、大償神楽に関わる他地域における弟子神楽の形成についても検討していく。 ③と④については、同じく資料調査と聞き取り調査から、主として近現代以降の大償神楽の担い手の変遷および神楽をとりまく社会状況を総合して考察する。とくに、後継者育成における現状と新たな試みに着目して、継承における課題を検討していく。
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