Project/Area Number |
20K01273
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 05020:Public law-related
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高井 裕之 大阪大学, 大学院法学研究科, 教授 (80216605)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,000,000、Indirect Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2021: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2020: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | 憲法 / アメリカ / 保守主義 / 原意主義 / テクスチュアリズム / 人工妊娠中絶 / 修正第2条 / 先例拘束性 / 文理解釈 / 権力分立 / 司法消極主義 / 裁判官人事 / 連邦制 |
Outline of Research at the Start |
アメリカ連邦最高裁の一層の保守化が予想される中、日本の憲法学はアメリカ憲法とどう向き合うべきか。この点を考えるために、アメリカにおける保守主義の法理論を歴史的・政治的背景から浮き彫りにし、その内在的論理を解明することが本研究の目的である。その際、(a)裁判官人事をめぐる運動の組織と戦略、(b)保守的な裁判官の見地に立って最高裁内部の意見・思想の布置を描き出すこと、(c)特に言論・信教の自由という争点における最高裁判決の動向、を主たる研究対象とする。これをもって、比較法の対象としてアメリカ憲法を研究することの意義と方法を再検討する契機とする。
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Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度においても本研究の助成金による研究成果は公表するに至らなかったが、私(本研究代表者)の研究としては、本科研費研究の成果公表に向けて十分に進展があった。特に、研究の柱のひとつ、すなわち、保守派裁判官の示す法理、法解釈手法ないし司法哲学に関しては、アメリカ連邦最高裁2022年開廷期も、前年度に続き、注目に値する判決が現れたところであり、その分析に注力したところである。 特に、Students for Fair Admissions v. President and Fellows of Harvard College判決は、大学入学におけるアファーマティブ・アクションが合衆国憲法修正第14条平等保護条項に違反すると判断したところ、多数意見を構成したいわゆる保守派の裁判官と反対意見を述べたいわゆるリベラル派の裁判官との間に同条の制定過程やその後の展開に関して興味深い議論が展開されており、その前年度の重要な判決(人工妊娠中絶選択の自由に対する憲法上の保護を否定したDobbs v. Jackson Women's Health Organization判決等)とも併せて、多角的で詳細な分析を要するものであり、その作業を継続して行っている。 したがって、また、これら諸判決から、憲法条項の原意の理解の方法を摘出するとともに、原意主義に関する従来の議論と最近の諸判決に示された憲法解釈方法との異同(原意主義の理論的発展)を跡づけて、アメリカにおける保守的法理論を全体として描き出すことをめざしており、近いうちにその成果を論文として公表できる見込みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
令和5年度においても、本研究における重要な課題として予定していたアメリカにおける実地調査ができなかった。国内における調査も、出張を行ってまで入手すべき資料があまり見あたらなかったこともあり、調査旅行はしなかった。勤務校における教育活動について時間を費やしたこともあり、本研究に十分な時間を充てられなかった面もある。特に計画的な予算執行について十分な配慮をできなかったことは反省点である。 しかしながら、上記のとおり、連邦最高裁の重要な諸判決の分析を行い、論文として公表する準備をかなりの程度整えることができたことは成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度は、実際上も本研究の最終年度であるので、本研究課題の遅れを取り戻し、本研究の完成を目指す。まず、かなりの予算の執行残額があるので、研究用の図書の充実を期す。 研究の柱のひとつである、保守派裁判官の見解・思想の分析は、引き続き分析対象を広げて継続していく。その際、従来どおり、一般的には最も保守的な立場を取ることの多いトーマス判事のラディカルな原意主義・テクスチュアリズム(文理解釈)等に特に着目しつつ、他の保守派裁判官の見解とも比較し、さらにリベラル派裁判官との議論の応酬にも留意しながら、連邦最高裁の全体動向を把握することも試みる。他方で、連邦最高裁においていわゆる保守派裁判官が多数を占めたとはいえ、本当に連邦最高裁の判決が全体として保守化したのかどうかを、統計的な観点からチェックすることも試みたい。政治的・社会的に注目を集める事件だけでなく、比較的目立たない事件も含めて、連邦最高裁の向かっている方向を探ることも課題である。 本年度は大統領選挙もあり、その文脈で、憲法等に関する問題について、訴訟になっている、またはなりそうな事案についても、また連邦裁判官人事についても、活発な議論がなされるであろうから、その分析も研究の視野に入っている。
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