生存権の実現における「関係性」──自律を促進する構造転換の可能性
Project/Area Number |
20K01301
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 05020:Public law-related
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
遠藤 美奈 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (40319786)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2022: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2021: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2020: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
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Keywords | 関係性 / 生存権 / 存在の保障 / ネデルスキー / 相談支援 / 生活困窮者自立支援法 / ビルシッツ / K・G・ヤング / 自律の促進 / ケースワーク / ケアワーク |
Outline of Research at the Start |
本研究は、カナダの法理論・政治理論の研究者であるJ.ネデルスキーによる、法理論における関係的アプローチを用いて、具体的な生存権実現のための制度における関係性の把握・分析を行い、福祉受給者の自律が促進されるような関係性を憲法機関のそれぞれにおいて構想することを試みるものである。本研究では、福祉受給者、給付決定主体とその具体的担当者、サービス提供主体、家族の布置関係及び権力関係がいかに想定され、背後にいかなる規範が存在するのかを探り、受給者の自律の実現における問題点を摘示する。そのうえで、給付に関わる決定権限行使の過程で形成される関係性が、受給者の自律を損わず育むように形成される方途を考えたい。
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Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、前年度までと同様海外出張等は実施できなかったものの、学会報告及び研究会への参加が対面でかなうようになり、文献研究に合わせて研究へのフィードバックを直接的に得ながら課題に取り組むことができた。 憲法13条の「個人の尊重」に「自由の保障」と「存在の保障」の二側面を見い出す見解は、すでに憲法学説によって示されていたところだが、本課題は二側面のうちとくに「存在の保障」に着目している。本年度はまず、生活困窮者自立支援法上の相談支援という制度における、複数の関係主体と憲法規範との交錯点を関係的視座から分析する論稿を公刊した。ここでの検討を通じて、「存在の保障」が関係性の構築を支援の本体部分と見る相談支援に憲法的位置づけが与えられることを確認した。 続いて、経済システムが変化する中での生存権の射程について考察する学会報告を行い、それに基づく論稿をまとめた。そこにおいて、コロナ禍の困窮者の生存権実現に奔走した相談支援員や市民団体とその構成員を憲法上の権利の実現主体と位置付けうるとの着想を得、権利の実現は統治各機関によってのみ担われるのではなく、それらと前記のような市民社会の諸アクターとの相互作用の中でなされるものと捉えるべきとの視座を得ることができた。 こうした関係的な視点は、本年度に執筆した判例評釈においても、事案の分析および規範間の関係を考えるうえで、活かすことができるものと認識した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、関係性アプローチへの理解をさらに深め、前年度に試みた権利論、国家論、統治機構論といった複数の視座からの関係的な現象の把握を、さらに具体的な問題局面に即して試みることができた。これらの作業を通じて、生存権実現のための制度及び社会の構造的把握における関係的アプローチの意義を捉えることはできたが、そこまでの作業に時間を要し、全体の取りまとめが最終年度までに終了しなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度を最終年度として、全体のとりまとめを行う。素材はほぼ揃っていると認識していることから、心がけて時間を確保し、研究会等を通じてフィードバックを得ながら、成果物の公刊を目指した作業を進めることとしたい。
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Report
(3 results)
Research Products
(10 results)