国際開発規範と途上国政治との摩擦に対する国連開発計画(UNDP)の調整役割
Project/Area Number |
20K01512
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 06020:International relations-related
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
真嶋 麻子 日本大学, 国際関係学部, 准教授 (60598548)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,120,000 (Direct Cost: ¥2,400,000、Indirect Cost: ¥720,000)
Fiscal Year 2023: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2021: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | 国際機構 / 国連開発計画(UNDP) / ローカライゼーション / ラテンアメリカ / 途上国開発 / 現地化政策 / ガバナンス / 国際開発規範 / 途上国政治 / 現地化 |
Outline of Research at the Start |
国際開発規範と途上国政治との摩擦を緩和するための国連開発計画(UNDP)の実践に着目し、国連機関が途上国開発の現場において担っている調整役割を解明する。UNDPは開発業務を現地化し、それによって途上国の関心に応答しつつ、UNDPが価値を置く規範を注入する基盤を得て、調整のための条件を整えてきた。 本研究では、1970年代から80年代の軍政下のチリとアルゼンチンを事例として、両国政府との公式・非公式の折衝を通じて、UNDP現地事務所とそのスタッフが国際開発規範と軍事政権との摩擦に対応してきたことを明らかにする。それによって、規範と現実との調整を担っている新たな国連像を提示する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、国際開発規範と途上国政治との摩擦を緩和するための国連開発計画(UNDP)の実践に着目し、国連機関が途上国開発の現場において担っている調整役割を解明することを目的としている。 本年度は、本研究によって得られた成果をACUNS(国連システム学術評議会)と日本国際政治学会といった国内外の学会で発表することに注力した。 ACUNS 2023年次研究大会においては、”Governance through Operational Activities: A Case Study of the Transformation Process from National Security to Human Security in Guatemalan Peacebuilding”と題して、本研究課題の成果の一部を報告した。1996年12月に内戦終結を迎えたグァテマラでは、その平和構築プロセスにおいて安全保障観の転換が起こったと評価されることがある。本報告では、国家安全保障から人間の安全保障への転換が起こった背景に、ローカル社会による平和構築への参加があることに着目した。また、このことは、グァテマラ固有の要因から生じたのみならず、国際機関によるローカライゼーション実施とも関連することを指摘した。 日本国際政治学会2023年度研究大会においては、部会6「国際機構と国際政治」において、研究成果の発表を行った。現在の国際関係における国際機構の役割を再検討するという趣旨で設置された部会において、「開発支援領域におけるローカライゼーション」というタイトルで研究報告を行った。本課題で実施してきたUNDPに関する研究をまとめた報告であり、近接領域の研究者からのコメントおよび質疑応答がなされ、本研究の今後の課題を明確にすることが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究が当初設定していた研究課題は、【課題①】UNDPの現地化政策の運用過程についてデータを用いた量的把握を行う。【課題②】両国においてUNDP現地事務所が果たした機能を分析する。【課題③】現地事務所常駐代表経験者マーガレット・アンスティを事例として、UNDPスタッフによる軍事政権と国際開発規範との摩擦への対応方法を検討する。【課題④】全体を総括して、国際開発規範と途上国政治との間に立って調整を行うUNDPの機能についての研究書をまとめる、であった。このうち、【課題③】以外の進捗は順調である。 本研究の全体にかかわる成果として、『UNDPガバナンスの変容―ラテンアメリカ地域における現地化政策の実践から』(国際書院、2023年3月)として出版し、その内容の一部を発展させて、国内外の学会での報告をしたことは大きな進捗であった。研究成果に対する近接領域の研究者からの批判的なコメントからは、本研究が対象としている時期以降のローカライゼーションの様相ならびにローカルな要素と国際機構全体としての意思決定の関係性など、新たな課題を認識することが可能となった。 【課題③】については、研究代表者による産前休暇の取得および新型コロナウィルスの感染拡大のもとでの海外調査への制約により、当初予定をしていたマーガレット・アンスティのアーカイブスへのアクセスができていないことが、研究計画の遅れの要因としてある。本来は、オックスフォード大学Bodleian Library(イギリスオックスフォード)において、アンスティのUNDP常駐代表時代の書簡や演説を収集し分析することで、UNDPスタッフが途上国との間に生じる摩擦にどのように対応したのかについての事例研究を行う予定であったが、現時点では実現していない。
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Strategy for Future Research Activity |
研究課題の最終年度を迎えるにあたり、これまで十分に着手できていなかった【課題③】(現地事務所常駐代表経験者マーガレット・アンスティを事例として、UNDPスタッフによる軍事政権と国際開発規範との摩擦への対応方法を検討する)に注力する。アンスティの自伝ならびに関連論文、およびオックスフォード大学Bodleian Library(イギリスオックスフォード)が所有するUNDP常駐代表時代の書簡や演説を収集し分析することで、軍政下のチリにおけるUNDPの役割を再検討する。国際開発規範や人権規範と開発途上国政治の現実との狭間における個別の国連職員の行動からは、国際開発のグローバル・ガバナンスにおける現業的活動の位置づけの手掛かりが得られるものと考えられる。すなわち、国連機関が開発途上国政治との相克のなかで、いかにその正統性を担保できるのかという、さらなる研究の発展につなげるものである。
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Report
(4 results)
Research Products
(13 results)