Project/Area Number |
20K01609
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 07040:Economic policy-related
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
池下 研一郎 九州大学, 経済学研究院, 准教授 (80363315)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2020: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | 自動化 / タスク・モデル / 経済成長 / スキル・プレミアム / 補助金政策 / 所得分配 / 賃金格差 / AKモデル / タスク / 所得格差 / タスク分析 |
Outline of Research at the Start |
近年,人工知能やロボット技術などのデジタル技術革新が進むことで,人間の雇用が機械に奪われ,所得や富の格差が拡大するのではないかという懸念が強まっている。しかし自動化技術の進展が経済成長や雇用に対してもたらす影響について,経済学的分析は十分ではない。本課題では,労働経済学の分野で着目されているタスク分析の手法を経済成長理論に適用し,自動化技術,所得格差,経済成長の相互的なメカニズムを解明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,「タスク(業務)分析」の手法を導入した経済モデルを用いて,AIやロボティックスによるタスクの自動化が経済成長や所得格差に対してどのような影響を与えるのかを明らかにすることである。 2023年度は前年度からのテーマである計画③「労働の質の違いを考慮したモデルの拡張と分析」を継続し,研究を行った。具体的には機械と代替的である単純労働者と,補完的な知識労働者(IT技術者)という2つのタイプの労働者がいるような状況で,自動化技術の向上やIT技術者の育成・供給が経済成長や所得格差に与える効果を分析した。分析の結果,短期的には自動化技術の進展は単純労働者と技能労働者の賃金格差を拡大させる一方で,IT技能者の供給増加は賃金格差を縮小させることを明らかにした。 また計画④「成長モデルを用いた統合的分析」では,③の結果を単純な2部門成長モデルに拡張し,シミュレーションを行うことで,(i) 長期的にタスクの自動化が進み,労働分配率は低下する,(ii) 初期に労働者間の賃金格差は縮小する一方で,後に拡大に転じる,という2点を明らかにした。これらの結果は1970年代以降の米国におけるスキル・プレミアムの変化を説明できるものであり,重要である。最終的にこれらの分析結果は"Effects of Automation and Human investment on Wage Gap"という論文名でSSRNにてオープンアクセスで公開された。 最後に計画④については,本科研費の自動化と資本蓄積の相互依存性に関する研究成果である"Automation and Economic Growth in a Task-based Neoclassical Growth Model"が国際学術誌であるMetroeconomicaに掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究期間は2020年度~2022年度までの3年間であったが,動学モデルの開発と分析に時間を要したため,1年延長した。2023年度は前年度までに実施した自動化技術と賃金格差の分析を動学モデルに拡張し,シミュレーションを通じて米国の賃金格差の動きを再現することに成功した。この研究成果については,"Effects of Automation and Human investment on Wage Gap"というタイトルで,SSRNにて公開された。また本研究課題の研究成果をまとめた論文である"Automation and Economic Growth in a Task-based Neoclassical Growth Model"を,国際学術誌であるMetroeconomicaにて出版することもできた。 その一方で計画④で予定していた「内生的成長モデルを用いた自動化と経済成長のモデル分析」についてはタスク自動化のインセンティブを動学モデルに取り込む点で技術的な困難に直面しており,その問題をいまだ解決できていない。また年度後半では勤務校における教育負担が想定より重く(英語での大学院授業や修士・博士学生の指導・支援など),研究や執筆の時間が十分に確保できなかった。また成果発表についても,教務や入試日程の関係でスケジュールが合わず,新型コロナの影響で2020年,21年に見送った分をカバーできていない。上記のような理由で進捗としては「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度についてまずSSRNで公開した論文である”Effects of Automation and Human investment on Wage Gap”を改訂し,国際査読誌に投稿する。現在,すでに構築した動学モデルを用いて,自動化技術の進歩やIT教育の強化に関するシミュレーション分析を行っており,その結果をもとに論文に加筆・修正を加え,論文を完成させる。 一方で「内生的成長モデルを用いた自動化と経済成長のモデル分析」については,タスク自動化のインセンティブを動学モデルに取り込む点で技術的な困難に直面しており,未だその問題をいまだ解決できていない。そこで本テーマについては,三重大学の内田秀昭准教授との共同研究という形で,研究を進めていくことにする。内田氏は現在,企業の異質性を導入した経済成長モデルに関する分析を進めており,内田准教授との共同研究はテーマの進展に大きく寄与するものと期待できる。 最後に研究発表についてもコロナ禍で実現できなかった分を補うべく,九州大学のサバティカル期間を活用し,国内外での様々な学会,研究会,国際コンファレンスに参加する。
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