Transformation of the Indian Monetary System and the Colonial Rule during the Interwar Years
Project/Area Number |
20K01807
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 07070:Economic history-related
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
今田 秀作 和歌山大学, 学内共同利用施設等, 名誉教授 (60201943)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
Fiscal Year 2022: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2021: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2020: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | インド / 植民地 / 貨幣制度 / 金吸収 / 貨幣需給 / 金融政策 / 信用貨幣 / 地金 / banking habit / 公債政策 / 幣制 / 金本位制 / 金為替本位制 / 貨幣供給 / 貨幣流通 / ソブリン金貨 / 金貨本位制 / インド貨幣制度 / インド経済史 / 植民地支配 / 両大戦間期 |
Outline of Research at the Start |
本研究は両大戦間期におけるインド植民地幣制の動態的変化の意義を解明することを目的とする。本研究では、一方でのイギリス当局の政策意図と、他方でのインド在来の貨幣・経済構造及びインド人による政策要求との相互規定関係を解きほぐし、かつ従来の研究で用いられてきた「金か銀か」という図式を乗り越えて、新たにインド幣制における管理通貨制的要素の発展如何という問題を設定する。本研究は信用制度発達史と植民地支配史とを総合した新たなインド幣制史像を構築するととともに、現在のドル体制に至るグローバルな貨幣制度史のうちに植民地期インド幣制を位置づけることを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
私はすでにインド外国貿易決済に関わる為替銀行による金の裁定取引がいかにインドへの金流入をもたらしたかを詳しく検討したが、本年度は当時のインド幣制との関わりにおいて、他の金の流入経路を含め、インドの金吸収の全貌に迫ることを課題とした。他の流入経路とは、主にインド住民の個人的需要に発する金輸入およびインド地金商による投機的な金輸入を指すが、まず当時のインド幣制(金為替本位制)が、インドの金吸収を抑制するというイギリスの意図にも拘わらず、こうした流入を阻止する機能を持たなかったことが考察された。というのは、この幣制が持つインド金輸入抑制作用は、基本的に、為替銀行の裁定取引において、インドへの金現送による決済ではなくインド省手形を利用した為替決済を銀行に選択させることに限定され、それゆえ裁定取引と無関係な金輸入は、インド人の根深い貯蓄習慣に導かれ、また先進的で活発なボンベイ地金市場を利用しつつ、旺盛に展開されたからである。インド金為替本位制では、国内の自由な金市場(バザール金市場)や金の自由な輸出入という、古典的金本位制に共通する措置が承認されながらも、同時に金決済の発動を抑えるメカニズムが用意されることで金吸収の抑制が図られた。こうした抑制策にとどまった主な理由は、インド人が根深い金需要を持ち、彼らの経済生活を持続させるためにも、また植民地支配の安定を図る上でも、当局がインド人の金需要を否定できなかったことにあり、その金需要は政治的不安定性・伝統的な慣習・銀行組織の未発達といった、インド社会の構造的な特質に根ざしており、これらの変化なしにインドの金吸収を弱めることは不可能であると理解された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来軽視されてきたインド植民地幣制における金の役割に止目するという本研究の立論に関わって、私はすでにインド外国貿易における金決済のメカニズムと金流入の実態、および輸入された金の国内配分の入り口であったボンベイ地金市場の実態を解明し、かつインド幣制が一義的に金為替本位制と理解されるべきではなく、それは古典的金本位制(金貨本位制)の要素を多分に含んだ、両者の独自な複合形態であることを論証してきた。こうしてインドの対外決済メカニズムや貨幣制度の特質把握を進めた上で、私はインドの国内貨幣事情の分析に向かい、国内貨幣需給・流通構造を分析するとともに、国内貨幣循環の季節的変動がイギリスの企図する貨幣政策をいかに制約したかを考察した。また本年は、為替銀行の裁定取引に含まれない金輸入、すなわちインド住民の個人的需要に発する金輸入およびインド地金商による投機的な金輸入が、インド金吸収を抑制するために考案された貨幣制度としての金為替本位制の関与を受けずに、自由かつ旺盛に行われたことを実証した。イギリスは大戦期を除き、インド金吸収の抑制において妥協的な施策に終始したのである。インド金吸収の抑制策やイギリスの企図する貨幣政策における困難性は、貨幣制度的には中央銀行によって管理される信用貨幣制度の発達によって克服されうるが、そのためにはインド経済構造の真に近代的な発展や政治的安定(政府への信認)が不可欠の前提条件となる。とはいえ当時の植民地支配がこれらの点で後ろ向きであったことは否めない。こうして私はインド植民地幣制を分析し、それに関わる通説を批判しながら、今や植民地支配の本質を問うところまで研究を深めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
イギリス当局は、1925年に新たな政府委員会を設置し、従来以上に抜本的なインド幣制改革に取り組んだが、本研究では今後、委員会提案に込められた政策意図とその背景、及び政策の実行程を検討したい。委員会の政策提案は、(a)金為替本位制に代わる金地金本位制の導入、(b)ルピー銀貨の法貨規定の廃止、(c)高いレートでのルピー為替平価の再設定、(d)インドにおける中央銀行の創設を含んでいた。私は、まず当局が従来の金為替本位制に代わって金地金本位制を提案したことについて、本研究が明らかにした、戦前型インド植民地幣制の本質規定を踏まえて考察する。本研究によれば、インド金為替本位制は、インド現地の貨幣事情に規定されて、古典的金本位制的要素をふんだんに含んだ、本来の金為替本位制とは乖離したものであった。そこから当局は、金節約上、古典的金本位制の次の段階である、その意味でより現実的な金地金本位制採用を掲げたと思われるが、同時にそれは信用貨幣制度の発達にもとづいて国内金兌換や金貨流通を廃するものであった。こうして紙幣流通に置き換えるべく(b)が提案され、また信用貨幣制度発達の不可欠の条件として(d)が構想されたのである。とはいえ信用貨幣制度発達のためにはインド経済構造の真に近代的な発展や政治的安定(政府への信認)が必要である。この点で委員会が(c) を提案してインドの経済成長に消極的な姿勢を示したことは、当局の自己矛盾を意味する。こうした姿勢では(b)・(d)も難航したに違いない。本研究では、こうした植民地支配の自己矛盾に焦点を当て、また委員会提案の実行過程を跡づけながら、幣制改革がインド統治権を巡るイギリス当局とインド・ナショナリストとの政治抗争の中心的テーマとなったことの必然性を解明する。
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Report
(4 results)
Research Products
(1 results)