Project/Area Number |
20K01892
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 07080:Business administration-related
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
加藤 寛之 法政大学, 社会学部, 教授 (10410888)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
Fiscal Year 2024: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2023: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2022: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2021: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2020: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
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Keywords | 造船産業 / 戦略 / 雁行形態論 / プロダクト・サイクル / ビジネスシステム / プレーヤー / 成熟期 / プロダクトサイクル |
Outline of Research at the Start |
歴史の長い産業である造船産業を対象とし、長期的観点から各社の戦略とその相互作用を分析して、従来先発国と後発国の産業発展を説明してきた雁行形態論およびプロダクトサイクルモデルに対して、現時点で生じている棲み分けという現象と、雁行形態論およびプロダクトサイクルモデルとの齟齬を明らかにする。その上で、現時点で生じている現象を統一的に明らかにする新たなモデルを提唱することを目的としている。
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Outline of Annual Research Achievements |
日本の造船産業が建造量のシェアでは韓国や中国に追い抜かれながら、なぜいまだに3番手地位を保っているのか、また年によっては建造シェアが拡大することもあるのかについての要因を明らかにしようとしている。 造船所を取り巻くプレーヤーには、競合の造船所の他に、鉄鋼所、サプライヤー(舶用工業)、直接作業者(溶接職人)、オーナー(船主)、オペレータ海運業者(海運業者・船主)、ユーザー(荷主・商社)がいる。 日本の造船産業が強さを保っている理由の一つに、造船所以外のプレーヤーがいずれもしたたかかつ強靱で、ビジネスシステムに登場するプレーヤーのほぼ全てが国内に揃っているということが挙げられる。 オペレータはユーザーに海運サービスを提供する。オペレータ自身で造船所から船を購入するが、海上輸送量のピークに合わせて必要な船を全て購入するわけではない。海上輸送量は数年毎に大きく変動するためピークに合わせて船を所有してしまうと、所有する船が稼働しないか、稼働率を高めるために安い運賃で受注せざるを得なくなる。そのため、ピーク時に必用になる全量を所有するのではなく、海上輸送量の減った次期に必用採る最低量を所有する。海上輸送量が急激に増えた場合はスポットでオーナーから用船(レンタル)を受けるか、購入するのである。海上輸送量の急変動のリスクをオペレータとオーナーで分散しているのである。 2022年度は主にオペレータに用船や転売という形で船を提供するオーナーの行動の背景について研究を進めてきた。オーナーは全世界で約500プレーヤーである。そのうち日本国内には小規模なオーナーが多数存在する。彼らが機動的に資金調達し、商機を機敏に見抜き機動的に行動する実情とそれができる背景に関する調査を進めてきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍で海事図書館のアクセスの難易度が上がったが、コロナ禍が収束し、予約制だが理容は出来るようになった。ただし以前のように利用形態は開放型ではなく閉鎖型となり利便性は大幅に低下している。それが主に調査が遅延している背景である。 そこで別のアプローチを採用した。国内にいるオーナーが海上輸送量の急変動に際してオペレータに用船するか転売する商機を機敏に見抜き、さらにその商機を逃さぬよう機動的に行動するために、資金調達をどのように行っているのかについて、オーナー自身にヒアリングすることは出来なかったものの、彼らがどのように資金を運用しているのかについて、金融関係者達から様々なヒアリングを進めることが出来た。 バルクキャリア(バラ積み船)の船価は海上輸送量の変動の影響を受けて、45億円~90億円と変動する。船の納期は3年と受注から引き渡しまでの期間が長いため、需要変動に機動的に船を供給(建造)することはできない。オーナーは船価の価格が45億円と低迷している時期に造船所から船を購入し、船価が90億円とピークになる時期にオペレータに転売して鞘を抜いている。 45億円の利益が出た場合、約半額の22.5億円の納税義務が生じる。即座に納税して手元に現金のない状態だと、そこで減価償却費を先行計上し、一方で課税を繰り延べる。一方で例えば特定組合契約で航空機のオペレーティング・リースに投資して事業損益分を費用計上する。オーナーはバルクキャリアのみに投資するのではなく、航空機やコンテナ船のオペレーティング・リースへも投資し、それらの間の需要変動のズレを商機として把握し、また、減価償却費の先行計上と課税繰り延べと損金算入を最大限利用することで、常に手元に現金を有し商機に機動的に投資する。これを繰り返していることが判明した。 こうしたしたたかなプレーヤー達が国内に多数いることが造船産業を下支えしている。
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Strategy for Future Research Activity |
日本の造船産業が強いのは、実は造船所だけが強いのではなく、造船産業のビジネスシステムをとりまくプレーヤーが全て日本国内に揃っているから強いという側面がある。 こうしたプレーヤー達の行動原理とその背景の仕組みを、ことごとく明らかにしていくことができれば、従来とまるで異なる構図が浮かび上がる。 雁行形態論やプロダクトサイクルのモデルでは、主に1つ1つの産業だけがを取り扱い、その産業の主役となる国が推移していく背景を明らかにしようとしている。だがこれらのモデルには、産業に関連するビジネスシステム全体のプレーヤー達(競合他社の造船所ではない)に関する視点が欠けている。 造船所を取り巻くプレーヤーには、競合の造船所の他に、鉄鋼所、サプライヤー(舶用工業)、直接作業者(溶接職人)、オーナー(船主)、オペレータ海運業者(海運業者・船主)、ユーザー(荷主・商社)がいる。日本の造船産業が強さを保っている理由の一つに、造船所以外のプレーヤーがいずれもしたたかかつ強靱で、ビジネスシステムに登場するプレーヤーのほぼ全てが国内に揃っているということが挙げられる。 今後の研究の推進方策として、造船所を取り巻く各プレーヤー達の行動原理と、それを背景で支える仕組みについて明らかにしていくことを目標とする方針である。
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