〈音の風景〉を手がかりとした〈記憶の政治〉の解明に関する環境社会学的研究
Project/Area Number |
20K02174
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 08010:Sociology-related
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
大門 信也 関西大学, 社会学部, 准教授 (00559742)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
箕浦 一哉 山梨県立大学, 国際政策学部, 教授 (10331563)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | 風景 / 海鳴り / 気象 / 災害 / 記憶 / 伝承 / 波小僧 / 遠州灘 / サウンドスケープ / 前浜 / 波音 / 音風景 / 記憶の政治 / 環境社会学 |
Outline of Research at the Start |
環境社会学は人びとと環境との関係性の希薄化を問題としてきた。近年では、そうした関係性をめぐる社会的な「記憶」の問題、とりわけ開発主義的な環境の改変をめぐる想起と忘却のせめぎあいへの関心が高まっている。そこで本研究では、〈音の風景〉を手がかりとして、環境との関わりめぐる〈記憶の政治〉を解明するための調査研究を行う。より具体的には、人びとと環境との関係性や地域の歴史が織り込まれた〈音の風景〉をめぐる社会的な「記憶」を掘り起こし、その記述手法を社会学の調査法に取り入れること、さらにその成果を現地との協働による再記憶化へとつなげることが本研究の目標である。
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Outline of Annual Research Achievements |
22年度は、中山間部における伝承の分布や海鳴りの伝搬範囲について地域住民からの証言を集め、一定の成果を得た。これにあわせてウェブサイトを開設し、さらにひろく証言を募集する試みも行った。さらに沿岸部から中山間部までの観察および録音調査によって、昨年度に引き続き、海鳴りの長距離伝搬や音響的特性に関する情報を集めた。より高品質の録音機材の使用により昨年度以上の記録を得た。 また昨年度から引き続き現地研究協力者による情報収集も続けられ、上記の長距離伝搬や音響的特性に関する情報をより分厚く集めることができた。また、協力者たちによる夏場の台風接近時の集中的な観測調査が実施され、大気の変動にともなう海鳴りの変化に関する貴重な情報を得ることができた。くわえてこうしたとりくみそのものが、単に情報を収集する手段としてではなく、地域の風景の記憶と伝承に貢献する様子が見受けられた。 またあらたな取り組みとして、公立小中学校の校歌の歌詞を手がかりに、従来調査地としていた浜松市をこえた広く遠州灘地域での海鳴りの伝搬状況や地域住民による価値づけに関する調査を開始した。 これらの成果について、国内・国外での研究報告を実施した。とくに音と環境に関する研究者が集うWorld Forum for Acoustic Ecologyが開催した国際会議では、音環境と地域社会との関係性について、社会文化的アプローチと音響的アプローチを組み合わせた研究が高い評価を得た。 またウェブサイトをつうじて研究成果をひろく市民に共有する試みも本年度より開始した。年度末には「報告会」として、現地研究良力者に対する調査成果報告を行い、さらに今後についての議論を深めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
22年度は、より多くの現地調査を行うことができ、また現地研究協力者ともより密な協働体制を確立できた。国際会議での発表も含め、当初予定どおりの研究成果を得ることができた。そのため1年目、2年目のコロナ禍による遅れから研究の進捗状況は大幅に改善されたといえるが、その影響を完全に脱したとはいえない。研究機関を1年延長し、成果を実践につなげる作業や地域に関するより焦点化した情報収集を行うことで、本研究課題を仕上げる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策として、(1)地域に関する社会学的情報の収集、(2)海鳴りに関するより焦点化した情報収集と整理、(3)実践への展開、の3点があげられる。 (1)については、これまで海鳴りの社会学的文脈を形成する地域の生業や社会組織についての集中的な聞き取りが十分に実施できていなかったため、これを実施する必要がある。(2)は、海鳴りに関する証言を、探索的な情報から組織的・仮説検証的な情報へと高める作業である。具体的には町内会等地域団体をつうじて行う。(3)については、「風景の上書き」を乗り越えて地域の特徴的な音風景を継承していくための実践を展開する作業である。具体的には小学校をつうじた児童への継承を試みていく。
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Report
(3 results)
Research Products
(7 results)