Project/Area Number |
20K02354
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 08030:Family and consumer sciences, and culture and living-related
|
Research Institution | Okinawa Institute of Science and Technology Graduate University |
Principal Investigator |
小泉 好司 沖縄科学技術大学院大学, イメージングセクション, リサーチ サポート スペシャリスト (60343563)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野村 陽子 沖縄科学技術大学院大学, サイエンステクノロジーグループ, サイエンス・テクノロシ゛ー・アソシエイト (90302794)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
|
Budget Amount *help |
¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2021: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2020: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
|
Keywords | 芭蕉布 / 顕微鏡観察 / イトバショウ / 繊維 / 光学顕微鏡 / 電子顕微鏡 |
Outline of Research at the Start |
この研究では,ワーハ(硬く小物やインテリア用),ナハウ(やや硬く帯などに使用),ナハグ(柔らかく着尺用)に類別される芭蕉布について,それら3種の構造的・構成的な違いを明らかにし,次にワーハ材料となる植物体部位からナハグ様繊維を作出する.3種の繊維について,繊維やその材料となる植物体繊維組織の形態的・構造的な違いを,光学・電子顕微鏡技術により解明する.リグニンやセルロースなど繊維の硬さに関わる細胞壁の構成成分について,機器分析ならびに超解像顕微鏡技術で調査する.また微生物分解を利用した技術で,ワーハ材料からナハグ様繊維を作出し,作出した繊維については本来のナハグと類似した特性をもつか精査する.
|
Outline of Annual Research Achievements |
本年度も前年に引き続き芭蕉布繊維やイトバショウ植物の形態ならびに構造成分についての研究を進めた.芭蕉布の糸材料については,職人別のワーハ,ナハウ,ナハグ-ヌキ(横糸),ナハグ-ハシ(経糸)を入手している.これまでそれぞれの糸について,太さ,表面構造,横断切片を用いた細胞壁の厚みなど,硬軟に関わる要因の観察を行ってきたが,本年度は特に蛍光色素(ベーシック・フクシン)と蛍光顕微鏡を使い,リグニン(糸の硬さに関わると考えられる)の定量観察を試みた.染色した横断切片の画像解析の結果,単位面積あたりのリグニン量は,ワーハ,ナハウ,ナハグ-ヌキ(横糸),ナハグ-ハシ(経糸)の順で多かったが,その差は小さいことがわかった.またイトバショウ植物の葉鞘部の繊維細胞についても,ベーシック・フクシンを用いてリグニン量を調べたところ,ワーハ部位,ナハウ部位,ナハグ部位,キヤギ部位の順で多いが,糸での計測と同様に,その差はわずかであることが判明した.これまでの結果から,ナハグ繊維では細胞壁が薄いことが判明している.今回のリグニンの定量と合わせ,ナハグ繊維が柔らかいのは,細胞壁の薄いことが大きな要因であると考えられた. 芭蕉布繊維を作出する実験についても進めている.特許化の可能性が高いことから,年度は喜如嘉の芭蕉布工房と連携して,究分担者が検討してきた採繊処理の実証試験を進めている.塾練した職人が準備したサンプルを提供してもらい実験室で処理を行い,蕉布工房で職人がその材料から繊維以外の不要部分の除去(ウー引き)を行った.現在,ウー引き後の材料を乾燥中であり,工房で職人とともに観察を続けている.本実証試験では,条件を調節することで,これまで検討してきた処理方法により,採繊が効率化される可能性が示された.また,基礎的検討の結果を専門誌へ投稿すべく準備を進めた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
共同研究者の野村博士から多大な協力が得られ,また博士の進めている芭蕉布の研究についても,協同研究ならびに情報の提供を受けることができ,実験自体は良好に進んでいる.現在,昨年度までに得られた顕微鏡観察や引張試験の結果をまとめ,英文誌に投稿する準備を進めているが,ワーハー,ナハウ,ナハグ繊維やイトバショウ植物体での細胞壁の厚みに関する解析から,ワーハー,ナハウ,ナハグそれぞれの繊維について,単一の繊維間でも違いがある可能性が考えられた.定量にある程度のサンプル量が必要になる従来の化学的方法では,単一の繊維としての性質を示すのか疑問が生じたため,リグニンについてはイメージング技術を用いて繊維一本について定量できる方法で検討しなおした.研究についての進展であるので,時間がかかるのはいたしかたないが,すべての結果を22年度内にまとめ,論文を投稿し査読による内容についての判断を仰ぎたかったことを考えると,遅れているところもある.また本研究の電子顕微鏡観察について,協力研究者の離職にともない,電子顕微鏡を使用する実験については進めることができていない.
|
Strategy for Future Research Activity |
執筆中の論文について,できるだけ早い時点で英文紙に投稿し,国際的な観点からの審査ならびに評価を受ける.必要に応じて論文受理に向けた補足実験や内容の改定を行う.作年度末,代表者の所属する部門の共焦点顕微鏡に蛍光寿命を測定する装置(FLIM)が導入された.リグニンについては,量やその性質の違いを蛍光寿命の違いとして検出できることが知られているので,必要応じてこのFLIMを用いることにより,芭蕉布繊維やイトバショウ植物体のリグニン量を測定する. 執筆中の論文が受理・公開されたときは,内容について日本語の紹介記事を書き,喜如嘉芭蕉布事業組合へ成果を報告する.本研究は研究者だけでなく芭蕉布に興味も持つ方々や生産者にも得られた結果を還元することも課題である.英語で公表した内容については,多くの人々にわかるように日本語で紹介する.また学会・研究会に積極的に参加し,芭蕉布についての公告や研究成果について報告を行う. 芭蕉布繊維を作出する新しい方法の開発実験についても論文投稿まで行う.工房での実証試験の材料(繊維)から職人に糸を績んでもらい,伝統工芸作製に,本研究で開発した方法が使用可能か検証していく.また,基礎的な検討結果はすでに論文にまとめていることから,特許化の有無が分かりしだい,専門誌に投稿する予定である.
|
Report
(3 results)
Research Products
(5 results)