Project/Area Number |
20K02458
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 09010:Education-related
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Research Institution | Niimi College |
Principal Investigator |
広瀬 綾子 新見公立大学, 健康科学部, 准教授 (30814496)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2022: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2021: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 演劇教育 / ドイツの青少年劇場 / 人間形成 / ブレヒト / ドイツの学校教育 / シュタイナー教育 / 新教育 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、「ドイツの学校教育における演劇教育」について明らかにするものである。ドイツおよびオーストリアにおいて演劇を重視する公立学校および私立学校(田園教育舎、シュタイナー学校など)、青少年劇場や児童・青少年演劇専門劇団などを取り上げ、それぞれの学校や劇場、劇団で行われている演劇教育の研究調査を通して、ドイツ教育思想の根底を流れる啓蒙および人格形成(Bildung)の理念・思想が、学校や劇場における演劇教育の実践とどのように結びついているのか、そして、演劇教育の発展を支えた新教育運動の理念である「全人的人間」の育成に、演劇がどのような役割を果たしているのかを明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「ドイツの学校教育における演劇教育」について明らかにするものであり、4年目である今年度は、昨年に引き続き渡独し、現地での研究調査を行った。 (1)ドイツ・ベルリンを代表する青少年劇場「グリップス・シアター」(GRIPS Theater)における「Theater Paedagoge(演劇教育者)」の役割や意義、活動内容について明らかにした。それぞれがレパートリー作品を担当すると共に、中・高生の演劇クラブの指導、学校の教員対象の演劇ワークショップ研修を行うなど、子どもたちや学校と劇場、演劇をつなぐ教育普及活動を行っていることを明らかにした。 (2)グリップス・シアターでは、幼児、小学生、中・高生対象など幅広く多彩な作品を上演しており、これらの作品を鑑賞し、上演分析を行った。小学校では、家庭崩壊、両親の不仲、成績や評価、競争や比較、ランク付けなど学校で子どもたちが直面するストレスをテーマにした作品、高校段階では、ファシズムやナチスの台頭といった史実を切り口に、異質なものの排除など社会的なテーマを扱ったものであることを明らかにした。小学校、中学校、高校が団体で劇場公演を鑑賞することも多く、子どもの発達段階に合わせた内容、上演のあり方、上演の意義について明らかにすることができた。 あわせて、ドイツの演劇教育の背景となる、最新のドイツ演劇の把握に努めた。ドイツ演劇では社会問題である移民や難民を扱ったものが多い。ドイツは総人口の28.7%が移民・難民のバックグラウンドを持っており、演劇の現場では、このような状況がどのように反映され、どのような取り組みがなされているのか。移民・難民の出自を持つ出演者との共同制作や、移民排斥事件を題材にした作品を手掛ける演出家によるドキュメンタリー演劇の手法について、ケルン市立劇場やデュッセルドルフ市立劇場などの取り組みについて理解を深めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度(2022年度)および本年度(2023年)は、渡独し、ドイツ・ベルリンにおけるさまざまな子ども劇場、青少年劇場で、多様な教育プログラムや児童・青少年演劇の上演について研究調査を行うことができた。また、実際に多くの「Theater Paedagoge(演劇教育者)」と関係を築くことができ、彼女たちが行う劇場でのワークショップや教育プログラムについての実際を体験することができた。グリップス・シアターに加えて、この劇場と並んで歴史と伝統のあるベルリンの州立青少年劇場“Theater an der Parkaue”における取り組みについても明らかにし、ドイツの劇場における演劇教育の多様なあり方が明らかになりつつある。 ドイツの演劇教育を支える理論的思想的基盤となるのは、演劇による啓蒙ならびに人格形成の理念・思想であり、その筆頭に挙げられるのは、ドイツ最大の劇作家・演出家B.ブレヒトである。彼の創作拠点である劇場、ベルリーナー・アンサンブル(Berliner Ensemble)で、彼の代表的作品の一つである「プンティラ旦那と下男マッティ」の上演分析、およびハンブルグのSt.Pauli Theaterで、彼の代表作である「三文オペラ」の上演分析を行うことで、演劇の手法としての「叙事的演劇」および「異化効果」が、役者の演技や演出にどのように反映されているかを明らかにすることができた。 世界的に注目されている乳幼児(0歳~3歳未満)演劇についても、グリップス・シアターにおける乳幼児対象の舞台作品を鑑賞し、単純化された舞台表象(段ボールやオブジェ)や役者の行動から、乳幼児が意図や関係性を読み取ったりできることを明らかにした。こうした検討から、乳幼児と舞台芸術の親和性や、保育者養成における演劇・表現活動へと研究を発展させ、進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ドイツの劇場における演劇教育については多くを明らかにすることができつつあるが、ドイツの学校現場での演劇教育については、受け入れてもらえる学校を探すことが難航しており、調査研究、分析が十分に進んでいない。今年度は、ドイツ・ブレーメンで行われるSchultheatertreffen(学校演劇祭)に参加し、学校現場における演劇教育のあり方を重点的に明らかにしたい。また、これまでの研究調査で明らかにしてきたことを具体的な成果物としてまとめたい。
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