Project/Area Number |
20K02511
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 09010:Education-related
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
藤井 佳世 横浜国立大学, 教育学部, 教授 (50454153)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥3,770,000 (Direct Cost: ¥2,900,000、Indirect Cost: ¥870,000)
Fiscal Year 2023: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2020: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | 教育学 / ドイツ / ストヤノフ / ハーバーマス / 批判理論 / 人間形成論 / 人間形成 / 教育実践 / コミュニケーション / 教育改革 / ホネット |
Outline of Research at the Start |
本研究は、ドイツにおける批判理論と教育改革についての教育思想史研究の視点から、教育哲学者ストヤノフの人間形成論の検討を通して、批判的人間形成論を教育実践の文脈で再解釈し直し、シティズンシップ教育と結びつく批判的教育学の更新に関わる研究である。
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Outline of Annual Research Achievements |
ストヤノフの批判的人間形成論の再解釈を進めた。ストヤノフはホネット承認論を基盤とした人間形成論を展開しており、現代社会における移民や移動の社会課題に応えるだけではなく、教育の対象としての子どもの特性を踏まえた理論を提案している点に特徴がある。とりわけ、いかなる場合でもよい承認があると考えるのではなく、承認が新しい教育統制の手段へ変貌する可能性も踏まえ、承認が適切に作用する場合とその反対に作用する場合があるとし、区別の重要性が明らかになった。また、1960年代以降の激動の時代とその後における批判的教育科学の展望についても考察を推進した。とりわけ、ハーバーマスの理論を中心に教育実践と改革への影響を明らかにし、戦後ドイツにおける連立政権下での教育改革の課題とその後の展開を踏まえ、今日においても未だ実現されていない教育課題のあることが示された。ストヤノフの批判的人間形成論の検討と批判的教育科学の展開を重ねて考察することから見えてきたのは、次の二点である。第一に、アドルノのラジオ放送が教育実践家に与えた影響と同じように、ハーバーマスの理論に基づいた民主化の教育と実践が語られているわけではないことから、フランクフルト学派の第一世代と第二世代における教育学への影響は質の異なるものであったと言える。また、教育改革期においてハーバーマスの理論は実践家から求められるような直接的な影響関係下にあったわけではなく、理論的な影響の強さが前面に出ている。第二に、ストヤノフの批判的人間形成論は、人生において新しい自己を形成するような変容する自己を説明するだけではなく、既存の社会における自己を超える自己形成論である。ここには、社会批判と連動する人間形成論が示唆されており、主体性の拡大とは人格を形成する自由に基づくことであり、既存のアイデンティティを超え複数の共同体を翻訳する人間形成過程のことである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ストヤノフの批判的人間形成論の再解釈と批判的教育科学の展開とを検討することを通して、戦後ドイツにおけるフランクフルト学派と教育学との関係の変遷や第一世代と第二世代と第三世代と教育との関係の異なりについて考察を進めることができた。とりわけ、批判的人間形成論は単純な社会化とは異なる自己形成論であり、社会批判を含んだ主体形成を示している。このことは学校教育においても確認できることであり、1968年世代の教育実践者が振り返った文章には生徒を批判的で自立し連帯感のある人間になるための教育を行うことが社会を変えていくことにつながると考えていたことが示されている。このように、既存の社会を批判的に捉える観点は主体形成と社会形成の両輪に内包されており、批判理論と教育学の関係を踏まえた批判的教育科学の更新にとって重要である。また、政治と教育の関係を踏まえてハーバーマスの理論を読み直し、教育学との冷却期間後として、民主化の理念と公共圏の思想は今日まで維持されうるものであり、コミュニケーション共同体としての教育を理論化する道が示された。さらに、初期ハーバーマスにおける科学と反省に基づく人間のコミュニケーションは、実践に導かれた知識を社会において言語化する方向を示唆しており、実際の生活における知識の民主化であることが示された。以上のことから、コミュニケーション共同体の再解釈が新しい批判的人間形成論の構築につながることが明らかになった。感染症による社会状況により海外調査に関する予定に変更は生じたが、柔軟に対応することでおおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度の研究成果を踏まえたうえで、令和5年度は新しい批判的人間形成論の構築に取り組む。そのために、批判的人間形成論に関する資料を収集分析し、それらの解読を進め、まとめていく。とりわけ、令和4年度の研究より明らかになった、1960年代以降の批判的教育科学が興隆した時期から冷却期間を経た今日までを継続的に捉えることによって、民主化を進めるという社会課題の中に教育の再構築が含まれ、行為主体としての人間が主体の自由を実現しようとする観点は一貫していることから、解放を理論的に支持する主体の自由を基盤に批判的人間形成論の構築を進める。また、コミュニケーション共同体を想定することにより、理論と実践は同じ目的を有するようになるため、教育実践を射程に納めた理論の提案となるように進める。さらに、社会統合としての意味を強くもつハーバーマスのコミュニケーション論は、相互主体的な関係をコミュニケーション合理性に貢献する実践だけに限定してしまうという批判的見解を反映し、相互主体的な関係とコミュニケーションの関係を再定義することも進める。これらの取り組みを通して、教育実践と結びつく批判的教育科学を形成し、批判理論と教育学の関係を更新し、新しい批判的人間形成論を示す。資料収集や意見交換に関しては、社会状況に応じて柔軟な対応をとり、全体としての研究の遂行が順調に進むように実施する。
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Report
(3 results)
Research Products
(12 results)