研究指向教学IRのフロンティア:データに基づく高等教育改善の問題点と可能性
Project/Area Number |
20K02961
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 09050:Tertiary education-related
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
宮本 淳 北海道大学, 大学院教育推進機構, 教授 (00374645)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
|
Budget Amount *help |
¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
Fiscal Year 2022: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
|
Keywords | 教学IR / 教育評価 / 高等教育 / 教職員協働 / Good Practice |
Outline of Research at the Start |
教育の成果は、「おそらく大学の成績は入試の成績に関係しているであろう」というように感覚で捉えられてきた。教学IR(Institutional Research)は、様々な数値データを用いた客観的な分析結果を教育改善に活用することである。データを用いて教育効果を測り、検証し、改善に結びつけていく活動は、研究と言えるが、大学間でこれらの成果の共有が進んでいないのが現状である。検証された成果を広く発信し、議論されてこそ研究活動であるので、本研究では成果の共有が進まない理由を探り、把握したうえで、教学IRを教育の発展に資する学術研究活動として推進する新しい体制の必要性と意義を示す。
|
Outline of Annual Research Achievements |
これまで3年間の各教育機関がコロナ禍の中、様々なデータ分析、アンケート調査により教育環境改善を行ってきた事例報告が報道やセミナーなどで確認できるのは、IR担当者でなくとも必要に迫られ、結果的にIR活動を行ってきた成果と言える。しかし、それらが研究活動として行われているとは言い難い。本研究が目指す研究指向のIR活動は、セミナーなどで課題とされる例えば「コロナ禍における学びをどうするか」というような大きなテーマを議論する中で試行錯誤的な事例報告をするだけでなく、比較可能なデータを提供し合い、それらを引用、比較し、学術的に議論され、そこから新たな課題発見と課題解決が連鎖的に発生することを目指している。本年度は、引き続きコロナ禍の制限を受け、本研究の主体となる訪問調査の実施が困難な状況であったが、オンラインセミナーへの参加や海外協力研究者の来日を機会に行った議論により研究を進めた。また、研究代表者の所属配置換えにより大学院教育にまで議論の範囲を拡大して研究を推進した。海外協力研究者はIR先進国である米国の研究者であるが、その研究者が知る限り日本の大学の教務情報システムは、非常にしっかりとしており、詳細であるとの意見をいただいた。一方でそれが活かされていないとの指摘を受けた。その点は、本研究の目指すところであるが、米国のようにIRに関する学会等で、研究として取り組みが議論されるようになれば大きな進展になると考えられ、教学IR活動を研究指向で行うことの重要性があらためて確認できた。大学院教育にまで拡大した教学IRについては、学士課程とは異なる課題が浮かび上がってきている。学びの最終地点である大学院教育を考えることで、初等教育から高等教育までを一貫して客観的に評価する必要性が示され、教学IRは、誰のための、何のための活動であるのか、そしてどのように役立てられるのかが整理されつつある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究開始当初より、コロナ感染症の多大な影響を継続して受け、進捗の遅れを取り戻すことはできず、研究期間延長を申請し、承認された。 本年度は、教学マネジメントに関するオンラインセミナーに5回参加した。各大学が行っている教学マネジメント事例を包括的に紹介する内容であり、大学に設置された教学IR担当部署がそれらを担っている事例、自学内の各種データの分析が行われている事例が紹介された。質疑応答については本研究の示す通り、研究成果として各大学間のIR活動の共有が進まないために、同じ内容が繰り返されている。セミナー主催企業が独自の調査結果の分析事例を示すことがあり、大学側が自学と比較をして、議論を進展させることが研究活動のひとつであると考えるが、その範疇は自大学内に閉じており研究活動として推進されていない様子をうかがう事ができた。教育業界の企業は、提供するサービスに応じて独自に取得することができる大量のデータの分析を進めていることが分かる。教学IRを研究指向で進めるには関連企業との接点が重要であることが明らかになった。 米国の海外協力研究者とは、来日時に議論する機会を得た。日本の多くの大学は優れた教務情報システムを持っていながら、活かしきれていないという指摘は、まさに本研究の問題提起そのものである。また、米国ではIR担当者に自分に課されている職務はどれに当たるかという調査を行っており、その職務は18ドメイン、1351種類に分類されている。18ドメインのひとつが「研究タスク」であり、主要業務として示されている。 学士課程の課題として研究をスタートさせたが、大学院にまで拡大したことにより、大学院で活躍する学生がどのような初等、中等教育を受けてきたかなどを教学IRの考え方を導入して議論する必要性が確認されている。 以上のように、副次的な計画以上の進展はあったが、全体としては遅れていると判断している。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究期間延長は承認されたが、これまでの遅れを取り戻すためには、かなり的を絞り、より効率の良い方法で研究を進め、まとめていく必要があると考えている。今後、訪問調査を中心に進め、その過程で教学IRの活用事例収集、高等教育の改善に資する研究課題の抽出を同時に行う。訪問調査の対象は、これまでの研究活動で知り得た教学IRを積極的に進める教職員、企業に絞り、効率的に調査を推進する。研究課題の抽出については、大学院教育を含めた高等教育を中心にするが、本研究より、初等教育から大学院に至る高等教育までの接続を考慮する重要性も見えてきたことから、発展的に初等、中等教育をも視野に入れ、日本の学校教育全般にわたる課題提起ができるよう、日々の職務の中での各教育機関、関係者との意見交換も取り入れ研究を推進する。
|
Report
(3 results)
Research Products
(2 results)