Project/Area Number |
20K03013
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 09060:Special needs education-related
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Research Institution | Tezukayama University |
Principal Investigator |
山本 隆宣 帝塚山大学, 心理学部, 客員研究員 (60191417)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 雅俊 福井大学, 子どものこころの発達研究センター, 特命助教 (50828928)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2021: ¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | トリプトファン / 注意欠陥多動症(ADHD) / キヌレン酸 / オリゴデンドロサイト / 無アルブミンラット / 分枝鎖アミノ酸 / 中枢性疲労 / 尿中トリプトファン / 易疲労感 / 不注意行動関連因子 / 睡眠障害 / ADHD-RS-IV / AASS尺度 / 尿中モノアミン代謝 / 注意欠如・多動症 / 神経伝達物質 / アミノ酸 |
Outline of Research at the Start |
中枢性疲労は脳神経系を主体とする疲労現象であり、注意欠如・多動症(ADHD)の行動特徴との関連が指摘されている。本研究の目的は、児童期のADHDの中枢性疲労について、行動と分子基盤との関係性から明らかにすることである。そのために、ADHD児童と健常児童によって行動特徴、認知機能、疲労物質の3つのレベルの指標がどのように異なるのかを、小児型慢性疲労症候群国際診断基準尺度、ADHD-RS-IV、ワーキングメモリ、尿中の神経伝達物質やアミノ酸に関して調べ、これらの指標の相関関係を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は文字どおり、分子動態と認知行動をつなぐ研究でありそれぞれの特徴を活かしながら神経発達障害のADHDの原因解明を進めてきた。具体的にはADHDの基盤に中枢神経系疲労(中枢性疲労/精神的疲労)が潜んでいるという仮説のもと、中枢性疲労動物モデルを作成しすでに本研究で特定した疲労原因物質であるトリプトファンとその代謝物質キヌレン酸の海馬内での含量を測定した。海馬組織は神経膠細胞であるオリゴデンドロサイトを、神経細胞ではシナプトゾームを抽出した。その結果、オリゴデンドロサイトでは中枢性疲労によりキヌレン酸含量が増加した。シナプトゾームではトリプトファンとキヌレン酸の両方が増加した。このようにキヌレン酸の代謝亢進が示すように、神経細胞だけでなくグリア細胞でも亢進していることからグリア・ニューロン間の連携で中枢性疲労を引き起こしていることがわかった。この成果は第28回認知神経科学学術集会(2023)に発表した。 研究代表者が発見した無アルブミンラットはADHD動物モデルであり、前述と同様のトリプトファン代謝亢進とともに著しい易疲労性を示し、注意欠陥と多動を伴う。ところが分枝鎖アミノ酸を投与しておくと明らかに疲労の軽減を示す。分枝鎖アミノ酸は天然素材であり、広くサプリメントとして使用されている実績もあるので、神経発達障害の根底にある中枢性疲労を軽減し、ADHD特有の行動改善に役立つ可能性がある。以上のように、まず分子動態についてADHDの特徴を明らかにしてきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に述べたように、本研究課題は分子動態と認知行動をつなぐ必要がある。そして分子動態についてADHDの根底にある中枢神経系疲労の原因物質の特定とその動態を明らかにすることができた。したがって次に明らかにしなけらばならないことは、ヒトADHD児の身体的疲労と精神的疲労の調査による解明である。そこで児童思春期のADHDにおける疲労とその成因に関する調査研究を行った。ADHDを伴う成人では大きな疲労を伴うことが報告されている。しかしながら、児童思春期でのADHDと疲労との関係に関する詳細は不明なのでこれを検討した。放課後デイサービスに通う5歳から18歳(男性17名:女性3名)までを対象に疲労症状に関する質問紙法を用いて自己申告により実施した。調査対象がADHDのみは4名、ADHDとASDの併存症例は11名、残る5名はADHDと多様な精神神経疾患の併存症例であった。また、睡眠の質と量、意欲、注意機能、運動スキルについても調査した。その結果、ADHDのみ及びADHDに他の精神疾患の併存の両者(n=20)では85%が大きな疲労の身体症状および精神症状を持っていた。注意機能のみならず姿勢制御系に関わる筋緊張の調節困難な例が63%あり、作業がしづらい原因になっていた。 本調査はADHD/ASDの併存症の有病率が著しく増加していることを示した。ADHDとASDの両者は共通する症状が多いとされており、まず疲労を軽減するためのトランス診断的アプローチを考慮した取り組みが必要であると思われた。 以上のように、動物モデル実験から精神的疲労の原因物質の特定とその動態を明らかにし、さらにADHD児を調査することで、実際、精神的疲労がこの障害の基盤になっていることを明らかにし、本研究課題は文字どおり、分子動態と認知行動をつなぐ研究を推進することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終目的は神経発達障害児に対して、これまで明らかにしてきた行動・認知・分子基盤に立脚し、今後どのような教育的介入で支援していくかについて、その方法を開発することである。この方向性は申請時の研究推進計画をはるかに上回る研究成果である。研究をさらに推進させるための必要資料として、健康な普通学級の子供達と比較し、認知行動や生活習慣の違いや特徴を知る必要がある。そのためのアンケート調査内容は睡眠時間の量や質、疲れの程度、身体運動に関するスキルや興味、意欲に関してであり、それらを調査していく予定である。本研究は国の支援を受けて2020年から2025までの5年間計画で実施されているものなので、アンケート結果はこれらの調査にご協力いただいた方々に報告するとともに学術集会に発表し、社会に還元していく。 福祉国家デンマーク、オーフス市に赴き2カ所の発達障害施設を視察してきたが、神経発達障害児が急増している実態を目の当たりにした。これは日本も例外ではなく、近年、世界的に増加してる。現在、心身ともに健康児童生徒でも日常生活のあり方、言い換えればライフスタイルがメンタルヘルスの問題と関係していることも考えられ、その予備群の存在が本調査で明らかになる可能性は高いと予想している。そういう意味で子供達のメンタルヘルス問題に対する予防について有意義な情報を協力いただいた関係者や保護者、そして本人にも還元していく。このような背景のもと、対象と手順については以下のように実施していく。1、幼稚園(可能な場合、少数)2、小学校(6歳から12歳、40人前後)3、中学校(12歳から15歳、40人前後)のそれぞれの学齢の子供達で男女混合で調査していく。
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