健康に関する疑似科学的言説をもつ宣伝の特徴と浸透状況に関する研究
Project/Area Number |
20K03272
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 09080:Science education-related
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
加納 安彦 名古屋大学, 環境医学研究所, 助教 (50252292)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷 伊織 愛知学院大学, 心理学部, 准教授 (10568497)
石井 拓児 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 教授 (60345874)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | 疑似科学 / 健康食品 / ヘルスリテラシー / 科学リテラシー / 教科書分析 / 人体の構造と機能 / テキストマイニング / 健康リテラシー / 医療従事者 / 健康 / 初等中等教育 |
Outline of Research at the Start |
人体や健康、医療に関する疑似科学的な言説が広く浸透している。特に、いわゆる「健康食品」に関する宣伝が多く、医療従事者やその養成課程にある学生にも少なからず影響している。そこで、「健康食品」の宣伝に共通する特徴や論理の巧みさをテキストマイニング分析によって明らかにする。さらに、市民や医療従事者、学生がどのようにして人体や健康に関する知識や考え方を身につけてきたかを、初等中等教育課程に遡って教科横断的に検討するとともに、実際に教育課程を経た学生が受けた影響についても明らかにする。これらの成果から、医療従事者や学生を対象として、「健康食品」に対する知識や考え方を身につけるための教育内容を提案する。
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Outline of Annual Research Achievements |
1)「健康食品」の広告分析:特に機能性表示食品を対象とし、機能性表示として最も多い「脂肪系(体脂肪、中性脂肪、内臓脂肪等)」に関する食品を取り上げた。2年分の新聞掲載広告並びに折り込み広告には24商品、178広告があり、広告回数の多かった2商品を対象として、KH coderを使用して分析した。この結果、レイアウトや広告文には、タイトルのネガティブな問いかけ、本文での機能性関与成分の名称使用や「根拠」論文に由来する「データ(グラフや写真)」の提示などの共通する特徴があった。この成果は第77回日本栄養・食糧学会(2023年5月)で発表予定である。 2)教育課程の分析:小・中・高校の理科、社会科、技術家庭、保健体育を中心に「人体の構造と機能」がどのように扱われているのかを教科横断的に分析した。この結果,小・中・高校のいずれにおいてもすべての器官系を取り上げて学習せず、教科間での系統性も不十分であった.また、特に「健康食品」に関する教科書での記載には,現状に無批判なものがあった。この成果は第46回日本科学教育学会(2022年9月)で発表した。 3)医療従事者養成校の学生を対象として、健康や食品に関する疑似科学的言説の浸透についての調査を分析した結果、多くの学生のなかに深く浸透し,学生の認識が入学以降卒業時まで変化していない内容が少なくなかった。一方で、専門分野によって基礎医学科目で学ぶ内容が異なっていることに起因する教育効果の差も確認できた.これらの結果は、高校や専門課程での教育内容の分析と合わせて『科学教育研究』誌2023年3月号に発表した。 4)医療従事者への教育:理学療法士などを対象としたセミナーを5回実施した。おもな内容は、機能性表示食品制度やその科学的根拠に関する信憑性などついてであった。関連して、疑似科学の典型であるホメオパシーについても、その歴史や理論について解説した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1)「健康食品」に関する新聞内容の分析は、機能性表示食品のうち「脂肪系」に注目して分析した。同様に機能性表示食品のうち、「記憶・認知機能」に関する分析を進める予定であったが、発表機会に恵まれず中断している。 2)教育課程の分析:「人体の構造と機能」にかかわる内容の履修状況と合わせて、本研究とは異なるプロジェクトの共同研究者からの依頼によって、「微生物・病原体、感染症」に関する教育内容の分析も行い、第46回日本科学教育学会(2022年9月)で発表した。当初予定していなかった研究であったため、進捗の遅れを生じたが、関連する内容を異なる角度から分析することができ、研究の幅が広がった。 3)継続して進めてきた研究であったが、論文執筆と、投稿後の査読コメントへの対応に時間がかかった。論文ではアンケート調査結果の分析のみならず、本研究プロジェクトの中心テーマの一つである教科書分析の内容を盛り込んで、合わせて論文とした。 4)医療従事者への教育:医療従事者への教育は、実施回数が予定よりも少なかったとはいえ、定期的に実施し好評を博した。講演内容はすべて録音し・録画している。文字起こしを順次進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果を生かし、第4年度には以下のように研究を進める予定である。 1)宣伝内容の分析:機能性表示食品のうち、「記憶・認知機能」を訴求する食品を対象に、これまでと同様に新聞広告のテキストマイニング分析を行う。これらの成果は2023年10月の第3回ヘルスリテラシー学会で発表する予定である。 2)教育課程の分析:昨年度より新課程となった高校では、今年度から新に始まる教科もあり、それらの教科書を新たに購入して、分析内容を追加する予定である。幅広い教科を対象とし、小・中・高校の各科目での教育内容を比較し、それらが系統性が保たれているのか否かを検証する。また、昨年に別のプロジェクトで取り組んだ「微生物・病原体、感染症」に関する教育内容の分析結果も付け加えて、今年度中に論文化し投稿する予定である。 3)医療従事者への教育と教材の作成:「疑似科学入門」と題するセミナーを隔月で実施する予定である。2023年度は「ダイエット」食品などの対象となる糖質を中心として生化学的な基本知識とともに、疑似科学的な宣伝内容やダイエット法の影響を考える。さらに、これまでの講演内容を文字起こしし、医療従事者が利用できるテキストの作成をめざす。さらに、同様の内容をWebサイトを作成して公開する。
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Report
(3 results)
Research Products
(6 results)