Project/Area Number |
20K03483
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 10040:Experimental psychology-related
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Research Institution | Kitasato University (2021-2023) Tokyo Women's Medical University (2020) |
Principal Investigator |
稲田 健 北里大学, 医学部, 教授 (90365164)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
押淵 英弘 東京女子医科大学, 医学部, 准教授 (90568073)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | ストレス脆弱性 / レジリエンス / ドーパミン / 恐怖記憶ストレス / 情動記憶処理 |
Outline of Research at the Start |
精神疾患においてストレス脆弱性と、ストレスからの回復力であるレジリエンスが注目されている。これまでの研究から、恐怖記憶ストレス時のドーパミン神経の過活動がストレス脆弱性と関連し、恐怖記憶ストレス時のドーパミンは恐怖記憶の消去にも関与することが示された。以上より恐怖記憶ストレスにおいて、ドーパミンは脆弱性とレジリエンスの両方に関与することが示唆される。本研究では恐怖記憶ストレスによる情動記憶障害モデルラットを用いて「ある域値以下のドーパミン放出が情動記憶を消去する」という仮説を検証し、ドーパミンの働きから、レジリエンスの生物学的機構を解明して、精神疾患の治療戦略に貢献する基盤的知見を得る。
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Outline of Annual Research Achievements |
精神疾患に共通する病態としてストレスへの脆弱性が想定され、ストレスに対抗する回復力としてレジリエンスが注目されている。これまでに申請者は、恐怖記憶ストレス負荷時のドーパミン神経の過活動がストレス脆弱性と関連することを示してきた。一方世界では、恐怖記憶ストレス負荷時のドーパミンは、恐怖記憶の消去にも関与することが示されている。以上より恐怖記憶ストレスにおいて、ドーパミンが脆弱性とレジリエンスの両方に関与することが示唆される。本研究では恐怖記憶ストレスを用いた情動記憶障害モデルラットを用いて、「ある域値以下のドーパミン放出が情動記憶を消去する」という仮説を検証し、ドーパミンの働きから、レジリエンスの生物学的機構を解明し、精神疾患の治療戦略に貢献する基盤的知見を得ることを目的とする。 本研究では恐怖記憶ストレスを用いた情動記憶障害モデルラットを用いた。8週令雄性S.D.ラットを使用し、恐怖条件づけ刺激CS(ブザー音)と非条件付け刺激US(電気フットショック)とを同時に暴露した。このモデルラットに、CSを提示し、すくみ行動の時間を測定し、初回からの減衰/増強の変化を観察し、ドーパミン神経伝達に影響を与える抗精神病薬を投与してその影響を観察した。 CS提示後のすくみ行動は、CS提示を繰り返すごとに減少した。このすくみ行動は、抗精神病薬を投与すると変化した。変化の程度は、抗精神病薬の用量と投与頻度によって異なった。すなわち、抗精神病薬は、情動記憶処理の消去に対して影響するが、その程度は、用量と投与頻度によって異なることが示された。既報と合わせて考察すると、抗精神病薬は、扁桃体ドーパミンの放出を促進する作用と伝達を遮断する作用により、情動記憶消去を制御している可能性があることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では恐怖記憶ストレスを用いた情動記憶障害モデルラットを用いて「ある域値以下のドーパミン放出が情動記憶を消去する」という仮説を検証する。 恐怖条件付けによる情動記憶障害モデルラットを作成し、CSを提示し、すくみ行動の時間を測定し、初回からの減衰/増強の変化を観察した。CS提示後のすくみ行動は、CS提示を繰り返すごとに減少し、10回目まで一貫して減少した。このモデルにおいて、ドーパミン神経伝達に影響を与える抗精神病薬(ハロペリドール:HAL)を投与すると、すくみ行動の減衰に変化が生じた。すくみ行動の減少は、生理食塩水投与群に比して、HAL0.05㎎/㎏体重群と0.1㎎/㎏体重群では遅延し、HAL1.0㎎/㎏体重群では早期に生じた。さらに、HALの慢性投与はすくみ行動を抑制し、HALの単回投与はすくみ行動を増強し、消退を遅延させた。 以上の結果から、ドーパミン神経伝達を制御する抗精神病薬は、情動記憶処理の消去に対して影響するが、その程度は、用量と投与頻度によって異なることが示された。この結果は論文公表した。 既報において、抗精神病薬のHALが扁桃体ドーパミンの放出を促進する(Oshibuchi, 2009)ことが示されていることを踏まえると、ドーパミン受容体遮断薬である抗精神病薬は、扁桃体ドーパミンの1)放出を促進する作用と2)伝達を遮断する作用により、情動記憶消去を制御している可能性があることが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナ感染症対策、研究員の人事異動といった要因により、研究遂行が遅延した。これまでの結果は、部分的に論文公表してきたが、さらにデータを追加して、順次、論文公表していく。研究費は、論文投稿の際の英文校正費用や掲載料に充てる。
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