Project/Area Number |
20K03497
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 10040:Experimental psychology-related
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Research Institution | Otemon Gakuin University (2022-2023) Kyoto University (2020-2021) |
Principal Investigator |
大塚 結喜 追手門学院大学, 心理学部, 特任助教 (60456811)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
志澤 美保 京都府立医科大学, 医学部, 教授 (00432279)
佐藤 鮎美 島根大学, 学術研究院人間科学系, 講師 (90638181)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 高齢者 / 実行系機能 / 社会認知 / 社会性 / 抑制 / 心の理論 / 抑制機能 / 加齢 / 記憶 / 感情 |
Outline of Research at the Start |
高齢者特有の現象として,感情的にポジティブな情報への注意が高まる「ポジティブ効果」が知られている.このポジティブ効果は加齢による社会性低下に影響を与えている可能性がある.そこで本研究では,社会性を支える心的機能の中で最も実証的データが蓄積されているToM(心の理論)を対象に,(A) 視線計測を用いてポジティブ効果が高齢者の抑制機能を阻害しているのかどうかを検討し,(B) 高齢者のToMにおける抑制機能と感情機能の関係を脳活動から検討し,(C) 加齢による抑制機能と感情機能の変化が社会性低下に影響を及ぼすメカニズムを解明する.
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Outline of Annual Research Achievements |
高齢者の認知機能に関する従来の研究は記憶の低下に主たる関心を置いてきたが,本研究は社会性低下メカニズムを解明することを目的とする.また近年,自己申告に基づいた睡眠時間の長さが高齢者の認知課題成績と関連を示すことが知られており,睡眠時間が短すぎても長すぎても高齢者の成績が低いことがわかっている.そこで令和5年度には,日本語版「目から心を読むテスト」で測られる社会性機能と日本語版Montoreal Cognitive Assessment(MoCA)で測られる認知機能の成績と睡眠時間の関連性を検討した.その結果,年齢と睡眠時間の長さの間にしか有意な相関が認められなかった.長すぎる睡眠時間の影響が年齢の高い高齢者でなら認められる可能性があったため,年齢の低い高齢者(young-old; 65~73歳; 43名)と年齢の高い高齢者(old-old; 74~85歳; 41名)の2群に分けたうえで,各群における認知課題成績の個人差と睡眠時間の関連性を更に検討した.その結果,日本語版「目から心を読むテスト」については両群で睡眠時間との関連性を発見できなかったが,MoCA得点についてはyoung-old群で睡眠時間と正の相関が有意傾向であったのに対し,old-old群では有意な負の相関が認められた.すなわち社会性機能と睡眠時間に関連は発見できなかったが,認知機能については年齢の低い高齢者では睡眠時間が長いほど成績が高く,年齢の高い高齢者では睡眠時間が長いほど成績が低いという逆の可能性が示された.以上の認知機能についての成果を,日本ワーキングメモリ学会大会で発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受け,本研究の進捗はやや遅れている状況である.とくに重篤化リスクの高い高齢者を対象とする実験については実施に慎重にならざるをえず,感染対策を講じたうえで感染拡大がある程度収まっている時期に集中的にデータを取得する必要があると判断し,令和3年度にMRI(こころの未来研究センター連携MRI研究施設使用)を用いて高齢者約90名を対象に脳構造データを取得し,MRI外で取得した日本語版「目から心を読むテスト」や抑制能力の指標との関連性を検討する計画に変更した.令和5年度は脳構造データについてNODDI(neurite orientation dispersion and density imaging)による分析を完了したものの,分析結果を共同研究者と議論した結果,高齢者の社会認知に関わる脳構造に生じている変化をNODDIで特定することは困難であると結論づけざるをえなかった.そこでVoxel-based morphometry(VBM)とTract-Based Spatial Statistics(TBSS)による分析で明らかになった,日本語版「目から心を読むテスト」の成績差につながる灰白質領域と白質領域から高齢者の社会性低下機構をモデル化し,その成果を論文としてまとめ,査読付き国際学術誌に投稿した.また睡眠時間の長さが高齢者の認知課題成績と関連を示すという新たな知見を取り入れ,令和3年度にMRI外で取得した各種行動データと睡眠時間との関連も検討する追加分析を実施した.その結果,社会性機能と睡眠時間に関連はなく,認知機能だけが睡眠時間の長さとの関連を示した.この結果は社会性低下メカニズムが認知機能低下メカニズムと分離している可能性を示す極めて重要な知見であり,この結論で間違いないことを確認するために更なる追加分析を進めている状況である.
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度は,VBMとTBSSによる分析によって明らかになった,高齢者の日本語版「目から心を読むテスト」の成績差につながる灰白質領域と白質領域から高齢者の社会性低下機構をモデル化した成果を引き続き査読付き国際学術誌に投稿し,発表を目指す予定である.また令和5年度に新たに得られた「社会性機能と睡眠時間に関連はなく,認知機能だけが睡眠時間の長さとの関連を示す」という知見を裏付けるべく,更なる追加分析を進める予定である.睡眠時間との関連という観点からも,高齢者の社会性低下機構についてモデル化を進める予定である.
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