Project/Area Number |
20K03870
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 13030:Magnetism, superconductivity and strongly correlated systems-related
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
藤山 茂樹 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 専任研究員 (00342634)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田嶋 尚也 東邦大学, 理学部, 教授 (40316930)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
|
Keywords | 量子スピン液体 / 量子臨界点 / 分子性導体 / 有機導体 / ディラック電子系 / トポロジカル絶縁体 / 核磁気共鳴 / ディラック電子 / 電磁双対性 / 軌道反磁性 / モット絶縁体 / 多軌道効果 |
Outline of Research at the Start |
有機導体のうち、マルチバンド効果の発現を期待できる系を選び、核磁気共鳴及び輸送現象の測定から新しい電子状態を探索し、またスピン輸送のような新機能を作り出す。具体的には 1. κ-(BETS)2FeBr4 をスピン輸送の検出 2. HOMO-LUMOのエネルギー差の小さい (Cation)[Pt(dmit)2]2 の非自明モット電子相の解明 を行うことにより、有機導体におけるマルチバンド効果がどのようなものであるか、を探る。
|
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で対象としているモット絶縁体である金属錯体(Cation)[Pd(dmit)2]2は(Cation)=EtMe3Sbの時に最低温度まで古典的磁気秩序を示さず量子スピン液体挙動を示すことが知られる。基底状態はCationに依存することがこれまでに知られており、反強磁性相関をもつ三角格子ネットワークを形成する遷移積分の異方性の関数となることが示唆されていた。今年度は複数のCationの混晶の合成と磁化測定を通して、量子スピン液体がある特定の三角格子異方性のときのみで発現するのではなく、ある一定の幅を有するスピン液体相として存在することを明らかにし、論文にまとめた。一方、古典的反強磁性秩序相と量子スピン液体相の相境界は弱い一次転移のように観測されたが、最低温度における一様磁化率が相境界近傍で抑制されることを見出した。 この量子スピン液体相の電子状態について、電子スピンの分数化された粒子であるスピノンの大きなフェルミ面が存在するかどうか、という論争が長らく続いている。スピノンが電磁場に対してどのように応答するかは非自明であるため、比熱や熱伝導度のような熱測定が唯一の手がかりであると受け入れられているが、研究グループによってデータが大きく異なり、問題が一向に収束しない。問題が解決しない理由のひとつとして、そもそも分子性導体の格子振動が熱測定に与える寄与の大きさが正しく定量化されていないのではないか、と着想し第一原理計算をもちいたフォノンの計算をおこなった。その結果、固体物理学の教科書において典型例として挙げられる無機物質のフォノンの1/10程度の小さなエネルギーしかもたない分散が観測され、低温、低エネルギーにおける熱測定にフォノンからの大きな寄与があることを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年出版した(Cation)[Pd(dmit)2]2の量子臨界相境界における一様磁化率の抑制は無機化合物フラストレート磁性体においても議論されたことのない現象であり、今後理論・実験の両面からの研究の進展がみこめる重要な結果である。 第一原理計算による分子性導体のフォノン計算は従来より計算量が膨大であるため行われたことがなかった。今年度、対称性がたいへん低い分子性導体において、負のエネルギーをもつ分枝が出ないようにする工夫を体得し、今後さまざまな有機導体を対象に研究を展開していく上において不可欠な知見を得ることができた。 装置開発として行っているNV量子センサNMRについては、昨年度は蛍光の伝搬に光ファイバを用いることを考えプロトタイプの製作をおおむね終えていたが、今年度あらたにレンズを用いた集光を試みることとした。現在適切なレンズの選定およびプローブの設計図の作成を行なっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度行った、第一原理計算によるフォノンの計算は、低対称物質であるにもかかわらず分子性導体のフォノン分散を負のエネルギーを有する分散がでないように計算するコツを会得することができている。一方、最初に取り上げた(Cation)[Pd(dmit)2]2はモット絶縁体であるため、モット絶縁体に特有の問題を内在している可能性がある。クーロン反発を導入した計算をおこなうなどして、これまでに得た結果の正当性を検証していく。 これまで(Cation)[Pd(dmit)2]2の量子スピン液体は三角格子反強磁性ネットワークの異方性をパラメータとして反強磁性-スピン液体相図を理解できる、と受け入れられている。一方、近年の第一原理計算はこの物質の3つの遷移積分の大きさが互いに大きく異なっており、単純な三角格子フラストレーション以外の相図の整理ができるのではないか、との議論がある。今年度出版した磁気相図の横軸としてどのように整理するのが良いのか、多角的な検証を行う。
|