Project/Area Number |
20K04000
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 15020:Experimental studies related to particle-, nuclear-, cosmic ray and astro-physics
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
柴田 利明 日本大学, 理工学部, 研究員 (80251601)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,510,000 (Direct Cost: ¥2,700,000、Indirect Cost: ¥810,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | ドレル・ヤン反応 / 反クォーク / 海クォーク / フレーバー非対称性 / パートン / グルーオン / 陽子 / 中性子 / クォーク / ドレル・ヤン過程 / フレーバー対称性 / 量子色力学 / ミューオン |
Outline of Research at the Start |
陽子の中にはクォークだけでなく、反クォークが存在していることが知られている。陽子の中で、反dクォークの方が反uクォークより多いことが1991年にCERN-NMCによって見出され、「反クォークのフレーバー非対称性」と呼ばれている。強い相互作用は量子色力学(QCD)によって記述されるが、量子色力学は結合定数のフレーバー対称性を前提としている。フェルミ国立加速器研究所での実験SeaQuestによって、このフレーバー非対称性の起源を詳しく検討する。実験にはドレル・ヤン反応を用いる。ドレル・ヤン反応ではクォークと反クォークの対消滅が起こるので、陽子の中の反クォークを研究するのに適している。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の今年度の研究実績は、陽子や中性子(総称して核子と呼ぶ)の中の反クォークのフレーバー非対称度測定の実験データを解析してその結果を学術誌に発表したことである(Phys. Rev. C 108 (3) (2023) 035202, Measurement of flavor asymmetry of light-quark sea in the proton with Drell-Yan dimuon production in p + p and p + d collisions at 120 GeV)。本研究は日本・米国・台湾の国際共同研究SeaQuestとして行っている。フェルミ国立加速器研の120 GeVの陽子ビームと陽子・中性子標的の反応で起こるドレル・ヤン過程の実験データを解析した。具体的には核子内の反dクォークと反uクォークの量の比較を精密に行った。主要な結論は、陽子の中では反dクォークの方が反uクォークより多い、ということである。ビヨルケン x の大きい領域まで拡張して測定したところが本研究の新しい成果である。QCDの素過程としては、海クォークはグルーオンの乖離によるものであり、クォークのフレーバー(香り)には依らないので、本研究の結果は核子内で働く力のQCDによる理解に新しい課題を与えるものとなった。この結果は、重陽子標的と陽子標的のドレル・ヤン過程の微分断面積の比によるものであるが、重陽子標的と陽子標的の微分断面積の絶対値を出すデータ解析も行った。絶対値の導出には測定器の検出効率やアクセプタンスの正確な値が必要なので、その検討をした。学術論文として発表する際に必要な誤差の評価も進展した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、粒子加速器を用いた実験データの取得とその実験データの解析という2つの段階から成っているが、粒子加速器を用いた実験データの取得は計画通りにすでに完了した。現在、実験データの解析を進め、その結果を論文として順次発表している。実験データの解析は順調に進んでいる。本研究は、国際共同研究グループSeaQuestを形成して行っている。2021年にNature誌(590 (7847) (2021) 561-565)に論文を発表した後、2023年には更に詳細を記述した論文を発表した(Phys. Rev. C 108 (3) (2023) 035202. Measurement of flavor asymmetry of light-quark sea in the proton with Drell-Yan dimuon production in p + p and p + d collisions at 120 GeV)。優先順位をつけて実験データの解析を行っていて、次の論文の投稿準備をしている。ドレル・ヤン反応の微分断面積の絶対値の解析が進展している。ドレル・ヤン反応の角度分布の解析も行っている。原子核標的のドレル・ヤン反応の実験データも取得してあるので、解析を行っている。COVID-19の影響で、部品が調達できず物品を製造できない会社があって購入を延期したり、国際会議での対面での成果発表を延期したりするということもあったが、研究計画の順番を入れ替えるなどして対応している。以上のことからおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
実験データの解析を続け、学術論文として順次、発表する。これまでに発表した結果は、ドレル・ヤン反応の陽子標的と重陽子標的の微分断面積の比から導出したものであったが、今後は微分断面積の絶対値についての結果も解析する。今後の研究の優先順位としては、陽子および重陽子標的のドレル・ヤン反応の微分断面積の絶対値の測定結果をまず論文として発表する。この絶対値の導出は、陽子標的と重陽子標的の比よりは検討すべき点が多いので、解析を詳細に行う。実験装置の性能の正確な理解とソフトウェアの面での解析手法の開発を更に進める。それに次いで、ドレル・ヤン反応の角度分布の解析も行う。核子内の反クォークの横向き運動量の寄与を調べるのが目的である。核子の3次元的な構造の研究は現在盛んに行われている研究テーマであり、ドレル・ヤン反応によってその研究に寄与することができる。ドレル・ヤン反応とJ/psi生成の比較をすることは、反クォークのフレーバー非対称性を研究するために有用である。ドレル・ヤン反応は電磁相互作用によるが、J/psi発生は強い相互作用によるので、比較によって電磁相互作用の特徴が明確になる。原子核標的でのドレル・ヤン反応の実験データも取得してあるので、解析をする。原子核の効果としては深非弾性散乱におけるEMC効果が知られているが、ドレル・ヤン反応では反クォークが常に関与しているので特徴のある解析ができる。COVID-19の影響で遅れた機器の購入と国際会議での研究成果の発表も行う。
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