「地震=断層運動」からの脱却:新手法による微小な非せん断破壊成分推定の試み
Project/Area Number |
20K04141
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 17040:Solid earth sciences-related
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
今西 和俊 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 副研究部門長 (70356517)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2022: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2021: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2020: ¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
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Keywords | 非せん断破壊 / 逐次相対法 / 臨時観測 / 近接地震 / 地震 |
Outline of Research at the Start |
地震が断層運動(せん断破壊)で説明できることが理論的に認められてから半世紀以上が過ぎた。観測データの分析からもこの理論は支持され、せん断破壊の仮定の下、様々な議論が進められている。しかし、地震はそんなに単純なプロセスではなく、観測データも充実してきた現代において、「地震=断層運動」という常識を再考してみる価値がある。 本研究では独自に開発中の手法を多くの実データに適用し、地震破壊に含まれる微小な非せん断破壊成分を十分な精度で推定することに挑戦する。そして、非せん断破壊の実態を解明し、背後に如何なる物理機構が働いているのかを明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は地震破壊に含まれる微小な非せん断破壊成分を十分な精度で推定する手法を開発し、多くの実データへの適用を通して非せん断破壊の推定を行い、これまで踏み込むことができなかった微視的な地殻プロセスの実態に迫ることを目的にしている。 今年度は、昨年度の予備解析でダブルカップルで説明することが困難な地震が含まれていることを確認した東広島市直下の下部地殻地震クラスターに着目した。解析対象としたのは、2004年以降に発生したM1.5以上の地震(約70イベント)である。これらのクラスターに、本研究で開発した逐次相対モーメントテンソル法(論文準備中)を適用した。この手法について改めて触れておくと、クラスター内の地震に相対モーメントテンソル法(Dahm, 1996)を繰り返し適用し、個々の地震のモーメントテンソル解の精度を上げるのと同時に地震間の相対精度も上げていく方法である。参照とする地震のモーメントテンソル解の精度が悪いと信頼性の高い結果が得られないという相対法の本質的な問題点を解決している。逐次相対法を適用した結果を見ると、この地域の上部地殻で発生する地震を代表する東西圧縮の横ずれ型が卓越しているわけではなく、様々な断層タイプの地震が発生していることがわかった。このような小さな領域内でメカニズム解が大きく変化するのは珍しく、高間隙水圧により様々な姿勢の既存クラックが破壊する状況になっている可能性がある。また、推定誤差を有意に超える微小な非ダブルカップル成分が含まれていることも明らかになった。非ダブルカップル成分の空間分布にはあまり特徴が見られないが、クラックの開口成分が卓越する時期と閉口成分が卓越する時期が4-5年周期で繰り返す時間変化が確認できた。以上の推定結果から、クラスター内に流体が周期的に注入され、これが深部クラスターを引き起こす要因になっている可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究で開発した逐次相対法を実データに適用し、微小ながらも、推定誤差を有意に超える非ダブルカップル成分の存在を明らかにしつつある。また、昨年度開始した伊豆半島東部における臨時観測に関しては、4か月に1回程度の頻度でデータ回収と保守作業を実施した。解析とデータ蓄積に時間を要したため、論文化が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
開発した逐次相対法を欧文誌に取り纏めるとともに、解析プログラムを公開する。具体的な適用事例は、臨時観測を行っている伊豆半島東部における地震活動と東広島市直下の下部地殻地震クラスターである。これらの結果を通して、地殻内地震における非せん断破壊の実態とそれが意味する背後の物理機構を取りまとめる。
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Report
(3 results)
Research Products
(6 results)