Project/Area Number |
20K05669
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 36010:Inorganic compounds and inorganic materials chemistry-related
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Research Institution | Kitakyushu National College of Technology (2021-2023) Gakushuin University (2020) |
Principal Investigator |
坪田 雅功 北九州工業高等専門学校, 生産デザイン工学科, 准教授 (50626124)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
Fiscal Year 2022: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
Fiscal Year 2021: ¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 結晶成長 / 結晶核 / 遷移金属カルコゲナイド / 転位 / 準安定 / コーヒーリング効果 / 液相成長 / MX3 / トポロジカル結晶 / 結合エネルギー / 電荷密度波 |
Outline of Research at the Start |
単純な結晶成長機構では説明がつかないリング結晶の形成過程を、顕微鏡下での観察により、一定の結晶方位へ曲がる機構と端の結合に関して明らかにする。低次元導体の単結晶リングは、結晶に穴を空けた場合と本質的に異なり、干渉や電流スイッチングといった現象が観測される。結晶成長はエネルギーを最小にするモデルで古くから提唱されており、ナノサイズのリング構造は既に多数の実例がある。だが、マイクロサイズのリング結晶は関与する原子数も桁違いに多く、これまでの単純な界面自由エネルギー最小理論では説明がつかない。そこでマイクロリング結晶の成長機構を、直接観察から得られる成長速度と転位の運動論的解析によって解明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
遷移金属トリカルコゲナイドMX3(M=Nb, Ta, Mo; X=S, Se, Te etc)は擬一次元的な伝導特性を有する単結晶として知られており,低次元導体特有の現象である電荷・スピン密度波や超伝導状態への相転移が,圧力や層数による要因が及ぼす物性への影響等の研究が進められている.本結晶は単軸に沿って大きく成長し,一次元鎖を形成することが知られている.近年の研究により,合成条件を制御することで結晶の端が接合したリング形状やメビウスの輪形状といったトポロジーが異なる結晶に成長することが発見されたが,結晶内に含まれる欠陥の構造や結晶の端がどのように結合するかは未だに分かっていない.そこで,結晶成長過程をその場観察し,結晶構造を明らかにすることを目的とした. 結晶合成は石英アンプル内で行った.原料であるTaとSeを真空封入しアンプルを作製した.アンプル内はSeによる過飽和な状態であり液滴が発生する.液滴の溜まる位置を制御することによって結晶の密度や成長に違いが表れた.リング状に結晶が成長するためには,結晶の端と端が接合して,らせん状に成長する,もしくは,液滴の蒸発に合わせて,微結晶が環状に整列する,というパターンが考えられる.どちらのモデルでも結晶がリング結晶の内径と外径の差が小さい場合は,結晶内の歪みとして応力は小さくて済むが,内径と外径の差が大きくなると,転位の侵入によって応力の緩和が行われる.転位の配列については既に論文等で報告済みだが,粉末XRD解析法によって得られる結晶性に関しては,切断・粉末時に加わる応力とトポロジー的な安定性の関連もあり,リングに含まれる歪みの解析には不十分であった.リングの形状を保ったまま,円周方向と半径方向の解析によって詳しい結晶構造の違いが明らかにする必要がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究は,元々使用予定であった機器が,国内状況により利用困難になったため,結晶成長のその場観察に関して主に進めた.九州シンクロトロン光研究センターによる実施を検討し,X線による針状とリング状結晶の微細な変化を調べるために議論を進めたが,マシンの特性上,本研究で合成した結晶では適しておらず,構造解析の実現には至っていない. 光学顕微鏡下で結晶合成観察の分解能を向上した結果,リング結晶の新たな生成方法として液相成長を発見した.リング結晶の成長速度と針状結晶の成長速度を比較した際に,リングの円周上に成長するモデルでは時間が不足することが分かっていた.リング結晶には,結晶幅が数十~百マイクロメートルある結晶も発見されているので,らせん成長の可能性が高いことが示唆されていたが,円筒状に成長するか,円盤状に成長するかのパターンが考えられていた.リングが液相から成長するならば,成長速度の問題は解決し,曲げによる結晶内応力の侵入も従来のモデルとは異なるアプローチで検討する必要性があることが分かった. 本研究で行っている結晶の合成温度は,転位の移動が行われる温度であり転移の再配列が起こっても問題はない.実際に走査電子顕微鏡下で加熱試験を行った際に,結晶が自発的に曲率を有することが明らかになった.これは結晶が理想的な三角柱構造を基本として成長するのではなく,ねじれや転移の規則配列を含んでいることが考えられる. 結晶のその場観察によって新しい知見は得られたが,結晶構造の歪みによる影響や,端と端が接合する機構に関してはまだ詳細は明らかになっていない.
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Strategy for Future Research Activity |
国内状況を考慮しつつ,放射光施設によるX線を用いた研究を進める.九州シンクロトロン光研究センターでの実施が困難であったため,合成した結晶の前準備を整え,高輝度の放射光施設にて高エネルギーを照射することで加熱しながら観察し,結晶構造と転位の運動を調べる.遷移金属をカルコゲンが取り囲む三角柱構造をとる針状結晶に,欠陥(転位等)が侵入することで曲げが導入されリング状の結晶が成長することが予測されている.不規則に転位が侵入した場合は,曲げ,のみになるため,転位の配列に規則性があると期待される.そのため転位配列を解析し,その応力場による力学的な解析をすることでリングの形成を明らかにする.転位は内部エネルギーの上昇に伴い運動するため,十分なエネルギーを結晶に与えて転位の運動を調べる.基板との接触や周りの結晶との接触,さらに結晶の太さが変化のパラメータとして考えられるため,弾性率の影響を考慮して実験を進める. これまでの研究により,液相成長というあらたなモデルを提案した.このことから,液滴を制御することでリング結晶の制御が期待出来る.過飽和度を時間的に制御した合成条件のもと,リングの新しい成長機構を理論的に検討する.既設の合成炉を改良し,これまでに得られた研究成果を基に,更なるリング結晶が成長する条件を探索し,合成条件の変化による成長ダイヤグラムの構築を試みる.
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