エストロゲン受容体機能のリン酸化による制御:肥満や神経変性疾患予防への応用
Project/Area Number |
20K07053
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 47030:Pharmaceutical hygiene and biochemistry-related
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Research Institution | Meiji Pharmaceutical University (2022) Tohoku Medical and Pharmaceutical University (2020-2021) |
Principal Investigator |
進藤 佐和子 明治薬科大学, 薬学部, 講師 (50795987)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | 核内受容体 / ERα / リン酸化 / エストロゲン受容体 / 免疫細胞 / 炎症 |
Outline of Research at the Start |
肥満や糖尿病、神経変性疾患にエストロゲン-エストロゲン受容体α(ERα)系が防御的に働くと考えられてきたが、詳細な機序は明確ではない。申請者は、ERαのリン酸化がエストロゲン非依存的に多くの遺伝子発現を制御すること、また免疫細胞でリン酸化ERαレベルが高く、非リン酸化ERαモデルマウスでは肥満傾向や免疫細胞(好中球や脳ミクログリア)の活性化が認められることを見出した。そこで、ERα機能のリン酸化による制御と肥満や神経変性発症との関連性を分子レベルで明らかにすることにした。本研究成果は、これらの疾患の予防戦略を提供するとともに、核内受容体の新たな研究領域を切り拓くものと期待される。
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Outline of Annual Research Achievements |
本申請者は、核内受容体であるエストロゲン受容体(ERα)のセリン216がマウスの免疫細胞(好中球や脳ミクログリア)でリン酸化されることを見出し、非リン酸化ERαモデルマウス(Esr1S216Aマウス)では肥満傾向や免疫細胞の活性化が認められることを明らかにした。エストロゲンは、ERαを介して脂質代謝制御、インスリン作用、神経保護など多様な生理作用を示すことから、これまで肥満や糖尿病およびパーキンソン病を含む神経変性疾患にエストロゲン-ERα系が防御的に働くと考えられてきた。そこで、ERα機能のリン酸化による制御と肥満や神経変性発症との関連性を組織学的または分子レベルで明らかにすることを目指した。これまで、Esr1S216Aマウスにおいて脳ミクログリアの活性化が、野生型マウスと比較して起こりやすくなること、それに伴う炎症反応が亢進する可能性を示唆してきた。 令和4年度は、神経変性疾患には慢性的な炎症が関与することが周知されているため、組織学的解析によりEsr1S216Aマウスの脳、脂肪組織、肝臓、皮膚組織など様々な臓器において野生型マウスと比較して免疫細胞(主にマクロファージ)の浸潤や炎症応答に違いがあるか、主にマクロファージの炎症型(M1)や抗炎症型(M2)の極性の発現について観察した。炎症が亢進する際のマクロファージは、主にM1型になっており、M1>M2となることで様々な疾患に影響を与えるとされている。老化も神経変性疾患や肥満に影響を及ぼすため、加齢Esr1S216Aマウスを解析に用いた。Esr1S216Aマウスの著しい組織学的変化は現段階では見つからなかった。また、M1およびM2の総マクロファージの発現に著しい変化は認められなかった。しかし、マクロファージのM1/M2の極性が異なる可能性は高く、現在詳細な検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前所属先の研究室では、ミクログリアの他に神経細胞、ミクログリア、アストロサイト、オリゴデンドロサイトなどの脳内細胞間相互作用を正確に評価できる大脳スライス培養系を構築している。この大脳皮質スライス培養系は、生後7日のマウスから脳を摘出後、大脳皮質を分離し、350μm幅に切断した後、培地で浸したメンブレン上で培養を行う手法である。本手法では、脳内と同じ細胞構成でありながら、様々な分子生物学的手法を利用可能であり、同一個体から複数枚のスライスを調製できることから、マウス個体による差をなくした状態でも評価することが可能な系である。この系を習得し、野生型マウス(Esr1WTマウス)とEsr1S216Aマウス(Esr1S216Aマウス)の脳スライス培養系を用いてリポ多糖(LPS)による炎症性サイトカイン発現レベルの比較検討を行った。以前から使用していたマウス由来ミクログリア細胞株のBV2細胞を用いてリン酸化/非リン酸化ERαの過剰発現下ではLPSによる炎症応答性の違いは認められなかったが、大脳スライス系では非リン酸化ERαマウスにおいて炎症が亢進することが確認でき、ミクログリアと他の脳細胞の相互関係が重要であることが確認できた。また、これによりin vivoにより近い系を得たことが確認できた。 しかし、マウスの組織学的解析については、本申請者の所属変更により、実験動物の移動や自家繁殖に時間がかかった。特にEsr1S216Aマウスは輸送ストレスなどの感受性が高く、繁殖しにくい状況となり十分な数のマウスを得ることが出来なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、Esr1S216Aマウスの通常飼育による神経変性疾患や炎症応答の亢進、肥満については、加齢したマウスにおいて顕著に野生型マウスとの違いが認められた。しかし、加齢するに従い個体差が大きくなるため、データのバラツキも顕著になった。また、飼育時間を要するため十分なデータを得ることは出来なかった。そこで、高脂肪食飼育を行うことで、肥満や老化を促進させ、各臓器の免疫細胞の浸潤や炎症応答性を炎症性サイトカインの放出などを指標にして検討を行う。また、精神疾患および神経変性疾患の特定のための行動薬理実験を行い、マウス脳のミクログリアやドーパミン作動性神経細胞数などの変化について病理的な解析を行う。
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Report
(3 results)
Research Products
(3 results)