Project/Area Number |
20K07980
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 52030:Psychiatry-related
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
片桐 直之 東邦大学, 医学部, 准教授 (70459759)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,770,000 (Direct Cost: ¥2,900,000、Indirect Cost: ¥870,000)
Fiscal Year 2022: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2021: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2020: ¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
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Keywords | 減弱精神病状態(APS) / 拡散強調画像(DTI) / 前頭-線条体-視床回路 / 探索眼球運動 / 精神病発症危険状態(ARMS) / 不飽和脂肪酸 / アラキドン酸 / At risk mental state / MRI / 大脳皮質-線条体-視床ループ / 大脳皮質-線条体-視床回路 / 大脳皮質‐線条体‐視床ループ / 統合失調症 / 精神病発症危険状態 |
Outline of Research at the Start |
統合失調症の精神病症状の発現にはドパミン神経系の障害が関連することが明らかとなっている。そのためドパミン受容体が多く存在する線条体を経由する脳内のネットワークである大脳皮質-線条体-視床ループの障害が精神病症状の発現に関連すると考えられている。 本研究では、統合失調症などの精神病の発症のリスクが高い状態にある発症危険状態(At risk mental state;ARMS)における精神病発症閾値下の精神症状の発現に、大脳皮質-線条体-視床ループの変化が関連するかを調べる。
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Outline of Annual Research Achievements |
統合失調症で生じる幻覚妄想に対しドパミン拮抗薬が奏功することから、ドパミン神経系と関連する神経ネットワークの障害が統合失調症の病因の一つであると考えられている。ドパミン受容体が豊富に存在する線条体は、前頭-線条体-視床回路を形成する。同回路において線条体は、ヒトの内的表象を司る前頭葉と外界からの感覚神経が入力する視床との間の情報伝達の調整を担うと考えられている。統合失調症で生じる精神症状は、前頭-線条体-視床回路に障害が生じ、内的表象と外界との間の情報処理の障害により惹起されると考えられている(異常サリエンス仮説)。これまで、我々は健常者と比較し統合失調症の前駆段階と考えられてきた精神病発症危険状態(ARMS)においても、前頭-線条体-視床回路のうち線条体の一部である被殻において体積の減少が生じていることを報告している。本研究では、ARMSの中核群である減弱精神病状態 (APS)において、前頭-線条体-視床回路をつなぐ神経線維束に変化が生じているか、拡散テンソル画像を用い調べることを目的とし、以下①と②の成果を得た。 ①ARMSでは被殻で病的変化が生じることから、被殻と神経連絡を有する前頭葉運動前野に着目し、APS群において運動前野‐線条体間、運動前野‐視床間の神経線維束に生物学的変化が生じているか調べた。その結果、健常群に比べAPS群では運動前野‐視床間の神経線維束に生物学的変化が生じていることを明らかにした。 ②これまで我々はARMSにおいて探索眼球運動に障害が生じることを報告している。探索眼球運動は前頭葉の中心溝周辺部の前頭眼野や視床などが担う。そこで、APSで生じる探索眼球運動の障害に中心溝周辺部と視床を結ぶ神経線維束である上視床放線の生物学的変化が関連するかを調べた。その結果、上視床放射の神経線維束の生物学的変化と探索眼球運動の障害の有意な相関を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
進捗に遅れが生じた理由は下記①と②の経緯による。 ①統合失調では前頭葉‐視床の間に障害が生じ、代償性に線条体‐前頭葉間が亢進し二次的にドパミン神経系が亢進すると考えられている。現在までに我々はAPS群では健常群に比べ運動前野‐視床間の神経線維の統合性が低下していることを示した。本研究成果は統合失調症で生じる前頭-線条体-視床回路間の障害がAPSにおいても生じることを示唆するものである。同結果はIEPA14, the 14th International Conference on Early Intervention in Mental Health(国際学会)で発表され支持を得た。同学会では統計解析上のディスカッションが行われ、その後、それを受け追加解析を施行した。解析結果はこれまでの結果と同じであったが、結果に対する統計学的信頼性の向上へとつながった。同追加解析に時間と予算を必要としたため、論文作成の進捗が予定より遅れた。 ②昨年度までの解析でAPS群内において探索眼球運動の障害が上視床放線のFA値と有意に相関することを明らかにした。この結果によりAPSで生じる探索眼球運動の異常には中心溝周辺部と視床を結ぶ神経線維束である上視床放線の統合性の低下が関連することが示唆された。同成果を第26回日本精神保健・予防学会にて報告し支持を得た。同学会においては、左右差を考慮した解析を行うことが望まれるとの議論が得られたため、新たに解析を加えた。これらの研究の報告をまとめるため論文化をするのに時間を要した。そのため、研究期間を延長している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果から、①健常群に比べAPS群において、運動前野‐視床間の神経線維の統合性が低下していること、②APS群で生じる探索眼球運動の異常には中心溝周辺部と視床を結ぶ神経線維束である上視床放線の統合性の変化が関連すること、などの知見を得た。 いずれも、APSにおいて、前頭‐線条体‐視床回路上において生物学的変化が生じていることを示す。既に①,②についてはそれぞれ中間報告を上述の学会で行っているが、今後は、それぞれの会で得た知見をもとに再解析を行いこれらの研究の報告をまとめ、論文を完成し報告していく。既に①、②とも投稿準備の段階にある。 また、前頭-線条体-視床回路は、線条体を構成する神経核である被殻、尾状核や側坐核それぞれを経由するサブ回路などに分かれその機能も異なる。①、②の研究結果を統合し、前頭-線条体-視床回路のサブ回路の相違や相互の関係性につき新たに知見を得ており追加して解析、発表、論文化を計画している。
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