Project/Area Number |
20K08154
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 52050:Embryonic medicine and pediatrics-related
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
矢ヶ崎 英晃 山梨大学, 大学院総合研究部, 特任准教授 (00377540)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,770,000 (Direct Cost: ¥2,900,000、Indirect Cost: ¥870,000)
Fiscal Year 2023: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2020: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | 先天性甲状腺機能低下症 / 遺伝子 / ジェノタイピング / 遺伝子解析 / 次世代シークエンサー / 甲状腺形成遺伝子 / 遺伝子スクリーニング |
Outline of Research at the Start |
先天性甲状腺機能低下症(Congenital Hypothyroidism)は約3,000出生に1名に認められる、最も頻度の多い先天性内分泌疾患である。しかしその病因としての単一遺伝子変異の発見率は約20%と低く、次世代シークエンサー(NGS)を用いても新たな疾患原因遺伝子が発見されることが少なくなってきている。 我々は日本人において頻度の多い甲状腺疾患関連遺伝子を選定し、遺伝子スクリーニング検査システムを構築し、疾患原因の約45%をあらかじめ同定することを可能とした。これにより解析コストを節約し、甲状腺形成に関わる遺伝子解析、全エクソーム解析と連続した解析システムを構築することを目的とする。
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Outline of Annual Research Achievements |
先天性甲状腺機能低下症(CH)は、胎児期や周産期に発生する原因により甲状腺ホルモンの不足または機能不全が生じる疾患である。日本においては、DUOX2、TG、TSHR、PAX8の遺伝子がCHの主要な原因であるとされている。本研究では、これらの遺伝子に関連する主要な変異(DUOX2 p.His678Arg、TG p.Cys1264Arg、TSHR p.Arg450His、PAX8 p.Arg31His)を日本人集団で分析するために、Sanger法を用いた遺伝子スクリーニングと次世代シークエンシング(NGS)の比較を行った。
新生児マススクリーニングによりCHと診断された25例を対象に、Sanger法およびNGSで判明した変異と臨床像の関連を検討した。Sanger法による遺伝子スクリーニングで7例(28%)、NGSで20例(80%)に変異が同定され、CHの原因となるアレルがSanger法で9アレル、NGSで20アレル同定された(網羅率45%)。TSHRの変異は永続性CHの発症と関連し、DUOX2の変異は一過性CHの発症と関連することが確認された。遺伝子スクリーニングによるCH遺伝子の網羅率は約10%にすぎないが、疾患原因を構成するアレルの約45%を同定できるという点で、Sanger法とNGSはほぼ同数の症例で臨床予測が可能であった。Sanger法の利点としては、結果が約1週間で得られる点が挙げられる。
本研究はCHに関連する主要なバリアントの解析における遺伝子解析スクリーニングの有用性を示した。網羅的遺伝子解析における問題点として、解析遺伝子数と同定率の相関関係の欠如や、ヘテロ接合体や多遺伝子性(oligogenicity)を含むいずれかのバリアント同定率が約半数程度であることが挙げられる。これらの知見は、CHの診断と治療の向上に寄与する可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遺伝子スクリーニングにより25例中7例(28%)、次世代シークエンシング(NGS)では25例中20例(80%)に変異が同定された。CHの原因となるアレルは遺伝子スクリーニングで9アレル、NGSで20アレルが同定され、網羅率は45%であった。DUOX2およびTG遺伝子の変異が多く見られた。変異が同定された9例中7例(78%)にDUOX2 p.H678RまたはTSHR遺伝子の変異が含まれていた。TSHRの変異を持つ例では全例(2/2例)が永続性CHであり、DUOX2の変異を持つ例では2例中3例が一過性CHであったことが確認された。
遺伝子スクリーニングによるCHに関連する遺伝子の網羅率は約10%に過ぎないが、逆に疾病原因を構成するアレルの約45%が同定できた。この結果は、NGS解析に先立って約半数の疾病原因アレルを同定することが可能であり、残りの検体に対してのみNGS解析を行うことができるため、NGSの解析負担を大幅に軽減できることを示している。このようなアプローチは、効率的な遺伝子解析手法の選定に寄与するものである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進において重要なのは、遺伝子解析スクリーニング法の改善である。特に、病気の発症頻度や臨床像に基づいて、解析対象となる遺伝子を選定することが求められる。この選定が適切に行われることで、変異同定率の向上が期待される。 さらに、網羅的遺伝子解析では、単一遺伝子バリアントだけでなく、ヘテロ接合体や多遺伝子病因(オリゴゲネシティ)を含むバリアントの同定率を高める新たな方法の開発が必要である。これにより、より多くの症例を正確に特定できるようになり、患者の診断や治療に直接的な貢献ができるようになる。 最後に、遺伝子解析スクリーニング法の適用範囲を拡大することも望まれる。これには、他の甲状腺機能低下症に関連する遺伝子バリアントの同定や、新たなバリアントと臨床像との関連を明らかにする研究が含まれる。これらの研究によって、より多くの患者に適切な治療が施され、予後の改善が期待される。
これらの改善や拡大を進めることで、CH患者の診断や治療がより効率的かつ正確に行えるようになり、結果として患者の生活の質が向上することが期待される。
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