低侵襲な中耳粘膜再生技術による中耳真珠腫根治へ向けての研究
Project/Area Number |
20K09725
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 56050:Otorhinolaryngology-related
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
伊藤 吏 山形大学, 医学部, 准教授 (50344809)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
窪田 俊憲 山形大学, 医学部, 客員研究員 (80536954)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2020: ¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
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Keywords | 中耳粘膜再生 / 慢性中耳炎 / 真珠腫性中耳炎 / 経外耳道的内視鏡下耳科手術 / 再生医療 / モルモット / 中耳真珠腫 / 線毛上皮 / 中耳粘膜 / 低侵襲手術 / 内視鏡下耳科手術 |
Outline of Research at the Start |
中耳真珠腫は中耳腔の陰圧化により嚢状に陥凹した重層扁平上皮に角化物が堆積し、感染と骨破壊を起こしながら、難聴、めまい、顔面神経麻痺などをきたす疾患である。中耳真珠腫の治療は手術による完全摘出であるが、手術による骨削開や中耳粘膜掻爬により本来の中耳粘膜によるガス交換能・圧調節能が失われれば、再び鼓膜上皮が陥凹・癒着して聴力改善が得られないばかりか、真珠腫の再形成を生じてしまう。 本研究では、我々が開発した中耳粘膜障害モデル動物に低侵襲な経外耳道的内視鏡下操作で粘膜上皮再生作用の期待される薬剤を投与し、中耳粘膜再生による術後の聴力改善と真珠腫再発抑制を兼ね備えた根治治療の開発をめざす。
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Outline of Annual Research Achievements |
慢性中耳炎や真珠腫性中耳炎に対する根治治療は手術のみであるが、術後の中耳換気不良にともなう鼓膜陥凹や中耳癒着は、術後聴力の低下や真珠腫性中耳炎の再形成性再発の一因となり、これらの予防は臨床上とても重要である。これまで術後の中耳換気能回復を目指して、段階手術による含気腔の形成などが試みられているが、十分な効果が得られていないのが現状である。このため、聴力改善と真珠腫再発抑制を兼ね備えた新しい治療法が求められている。本研究はその第一歩として、中耳粘膜障害動物モデルを利用して、低侵襲で臨床応用可能な中耳粘膜再生治療を開発することが目的である。 これまで中耳粘膜再生に関する基礎研究の報告は少なく、組織工学の技術を用いて自己粘膜細胞を培養した粘膜シートを移植した研究などが報告されているが特殊技術、費用、準備期間などの観点で実践的な治療法の報告はない。我々は独自に開発したモルモット中耳粘膜障害モデルに対して、ラビット副鼻腔粘膜で再生効果が報告されているビタミンA誘導体(レチノイド)を投与し、組織学的にも機能的にも線毛上皮細胞が再生したことを確認した。さらに、今年度は臨床応用のため、レチノイドの内耳毒性について以下の検討を行った。まず、モルモットの中耳腔にレチノイドを投与し、経時的に聴力評価を行った。結果、投与前と比較して投与2週後に一時的に聴力悪化を認めたが、術後8週には投与前の聴力まで回復した。次に、この一時的な聴力悪化の原因が伝音難聴か感音難聴かを区別するため、投与2週後時点での聴性脳幹反応の音圧と潜時の関係を測定して検討したところ、投与2週後に生じた聴力悪化は手術操作による伝音難聴と考えられた。最後に、レチノイド投与2週後の内耳について免疫組織学的検討を行った。結果、投与2週後の内耳は正常と同様の形態を有していた。以上から本研究ではレチノイドによる明らかな内耳毒性は認めなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は実臨床への応用のため、レチノイドの内耳毒性について検討した。具体的には、モルモットの中耳腔にレチノイドを投与し、投与前と投与2週後、4週後、8週後に聴性脳幹反応(Auditory brainstem response:ABR)を測定して聴力評価を行った。結果、投与前と比較して投与2週後に一時的に15dB程度の聴力悪化を認めたが、術後8週には投与前の聴力まで回復した。この一時的な聴力悪化の原因が伝音難聴か感音難聴かを区別するため、投与2週後時点でのABRの第Ⅱ波の潜時を測定し、Intensity-Latency曲線を作成したところ、投与2週後に生じた聴力悪化は手術操作による伝音難聴と考えられた。また、レチノイド投与2週後の蝸牛とらせん神経節について、免疫組織学的検討を行ったところ、投与2週後の内耳は正常と同様の形態を有していた。以上から本研究ではレチノイドによる明らかな内耳毒性は認めなかった。 今年度はレチノイドには内耳毒性を認めないことを確認することができたが、COVID-19の影響で、国際学会等での十分な研究発表などができず、この研究成果については十分に周知できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、中耳粘膜再生におけるレチノイドの作用機序の解明のため、中耳粘膜のレチノイドの受容体の発現について検討する予定である。また、臨床応用にむけて、実臨床で使用されている薬剤で、追加研究を予定している。
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Report
(3 results)
Research Products
(3 results)